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アザシチジンは骨髄異形成症候群の生存率を改善する

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アザシチジンは骨髄異形成症候群の生存率を改善する

Azacitidine Improves Survival in Myelodysplastic Syndromes  (Posted: 03/26/2009)

– 2009年3月号のLancet Oncology誌によると、DNAメチル基転移酵素阻害剤であるアザシチジン(Vidaza®)が、高リスクの骨髄異形成症候群患者の全生存率を改善したとのこと


要約

国際的な多施設無作為化試験で、DNAメチル基転移酵素阻害剤であるアザシチジン(Vidaza®)が、高い方のリスクの骨髄異形成症候群患者の全生存率を改善しました。2年間で、アザシチジン投与を受けた患者の死亡リスクは、従来型の治療(最良の支持療法、シタラビンの小用量投与、あるいは集中的な化学療法)を受けた患者の半分近くになりました。

出典 Lacent Oncology誌2009年3月号(ジャーナル要旨参照

背景

骨髄異形成症候群(MDS)とは、骨髄中の幹細胞が、健康な血球細胞へと正しく成熟しない疾患群のことです。そして骨髄内部で、あるいは血流に乗った直後に死んでしまう未成熟な血球細胞が蓄積することで、循環している正常な血球細胞数が減少します。MDS患者の約3分の1が、この状態から急性骨髄性白血病へと進行します。

高い方のリスクを有すると分類されたMDSの患者に対しては、集中的な従来型の化学療法や、シタラビンの小用量化学療法を含め、さまざまな治療法が用いられてきました。これらの治療法の目的は、異常な細胞を殺すことです。

患者の中には、同種造血幹細胞移植によって長期寛解や治療に至る人もいますが、こうした治療ができるのは、この種の治療過程に耐えうる健康状態の人たちだけです。しかし、多くの患者は集中的な治療には耐えられず、こうした患者には、健康な血球細胞の産生を刺激するために、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの成長因子などが用いられます。一般的には、輸血や他の支持療法の方が推奨されています。さらに最近は、免疫系に作用するレナリドマイド([Revlimid]®)による治療が有望になっています。

米国国立癌研究所(NCI)の資金援助を受けたグループであるCancer and Leukemia Group B(CALGB)によって行われたランダム化第3相臨床試験の結果に一部基づき、2004年に米国食品医薬局がMDSに対してアザシチジンを承認しました。この試験では、アブサチジン投与を受けた患者の方が、支持療法を受けた患者よりも良い臨床転帰と生活の質(QOL)を示しました。またアザシチジンによる治療は、MDSから急性骨髄性白血病への進行も遅らせました。アザシチジンやデシタビン([Dacogen]®)などのDNAメチル軌転移酵素阻害剤は、腫瘍抑制因子の不活化を阻害することで機能しているようです。

試験 高リスクMDSの、Vidazaによる生存率試験の国際グループ(the International Vidaza High-Risk MDS Survival Study Group)の一部として、15ヶ国79拠点の研究者たちは、2004〜2006年の間に、358人の高い方のリスクのMDS患者を登録しました。MDSは主に年配の大人に見られ、72%の患者が65歳以上でした。ランダム化の前に、研究者たちは、すべての患者に、臨床的評価にもとづき、3つのうち1つの従来型の治療(最良の支持療法、シタラビンの小用量投与、あるいは集中的な化学療法)を行うよう決めました。それからこれら3グループの患者は、月に1回、7日間のアザシチジン投与を最低6ヶ月受けるか、従来型の治療を受けるかでランダムに振り分けられました。

この試験の研究責任者はフランスはBobignyにあるパリ第13大学のPierre Fenaux医師でした。この試験の著者の多数が、試験スポンサーのCelgeneを含む製薬会社と取引関係があることを報告しています。

結果 アザシチジン投与を受けた患者群の全生存率の中央値は24.5ヶ月なのに対し、従来型治療の患者群では15ヶ月でした。2年後の生存率は、アザシチジン投与の患者群で50.8%と、従来型治療の患者群(26.2%)の約2倍でした。約3サイクルのアザシチジン投与後には延命効果が明らかになり、試験終了までその延命効果は持続しましたが、試験終了までにアザシチジン患者群は、中央値で9サイクルの投与を受けました。

CALGBの試験で、アザシチジン治療は、従来型治療と比べて、急性骨髄性白血病の発症を遅らせました。特に予後の悪い7番染色体に細胞遺伝学的異常のある患者も含めた、すべての予後サブグループの患者にアザシチジンは有効でした。

3つの治療法の事前選択に応じて患者群をそれぞれ分析すると、アザシチジンは、シタラビンの小用量投与の群と最良の支持療法の群での比較において生存率を上げたことがわかりました。集中的な化学療法と比較した際、全生存率は上がっていないようでした。ただし、集中的な化学療法に適した患者の数がとても少なかったので、この群での比較は統計的には有意ではありませんでした。

アザシチジン投与の患者群におけるより深刻な血液関連の副作用は、最良の支持療法を受けた患者群よりは多く見られましたが、化学療法を受けた患者群よりは少ないものでした。アザシチジンは、従来型治療に比べて、感染症のリスクは3分の1に減少されました。

コメント 「これは、骨髄異形成症候群のあらゆる治療法から、延命効果を初めて示した試験です」と、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのGuillermo Garcia-Manero医師は付随論説で述べています。しかし、高い方のリスクのMDS患者のほとんどは、「いまだその病気によって亡くなっている…そして、アザシチジンの奏功率も低い」— 完全寛解が見られたのは17%のみで、他の12%には部分反応が見られたのみです。

米国国立癌研究所、癌治療法評価プログラム(Cancer Therapy Evaluation Program)のRichard F. Little医師は、アザシチジンの「歓迎すべき効果」にもかかわらず、「生存率の改善はささやかなもの」で、併用される分子標的療法が、今後も研究者たちの目指すゴールであり続けると述べました。

Little医師によると、細菌感染がより少なく、血液製剤の輸血の必要性がより低いというアザシチジンの比較的穏やかな副作用は、もうひとつの歓迎すべきニュースだとのことです。この結果は、「疲労、息切れ、身体機能、心理的苦痛を改善し、積極的な効果を与える」というCALGBの以前の試験結果に加えて、この薬剤がMDS患者のQOLを向上させるという考えを強固なものとした、とLittleは述べていました。

この論文の著者が強調するには、この共同試験のデザインは、世界中の国や地域の治療法や臨床ガイドラインに立脚したもので、そのためここで示されたアザシチジンの利点は、MDS治療において世界的に通用するはずであるとのことでした。

制限事項 今回の結果では、アザシチジンが集中的な化学療法よりも優れていることは証明されず、「集中的な化学療法は、高い方のリスクのMDSに関して、状況によっては適した治療法として残るのかもしれない」と、著者は述べました。そうした状況のひとつとして、集中的な化学療法を最初の治療法として用いることでより早く効果的に血中の未成熟細胞の数を減らし、同種造血幹細胞移植に備える、というものが考えられます。

一方でLittle医師が言うには、7番染色体に細胞遺伝学的異常のある患者は、幹細胞移植に備えるのにはアザシチジンやdecitibineの方が良いかもしれないとのことです。「まだ証拠は確たるものではないが、患者の健康状態が悪化していなければ、これらの薬剤は彼らの状態をより良く保ち続けて、移植に適した状態を保持するのに役立つのではなか」と述べました。

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水向絢子 訳

林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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