マウスにおいて生きた乳癌細胞を可視化する新たな蛍光物質が開発 | 海外がん医療情報リファレンス

マウスにおいて生きた乳癌細胞を可視化する新たな蛍光物質が開発

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マウスにおいて生きた乳癌細胞を可視化する新たな蛍光物質が開発

New Targeted Fluorescent-Imaging Compound Allows Researchers to Detect Viable Cancer Cells in Mice

マウスの肺に転移した生存乳癌細胞を可視化する、新たなタイプの標識剤が開発された。この標識剤は、特定の乳癌細胞の表面にみられるHER2と呼ばれるタンパク質に結合し、生体細胞に取り込まれた場合に限り蛍光を発する。この標的化・活性化方法により、乳癌のマウスモデルにおける特定の生存癌細胞種の検出が可能となった。本研究は、国立衛生研究所(NIH)に属する国立がん研究所(NCI)および日本の研究者らによって、Nature Medicine誌2008年12月7日号電子版に掲載された。

これまでに開発されたヒトの細胞の中で活性化する蛍光標識剤には、一度蛍光を発すると別の部位へ拡散後も光ったままという制約があり、これが正常細胞や死滅損傷した腫瘍細胞と、生存腫瘍細胞との区別を困難にしている。小林久隆医師(医学博士、 NCI癌研究センター(CCR)分子イメージングプログラム)の率いる研究チームが、東京大学の浦野泰照准教授(医学博士)と共同で、生体細胞内でのみ発光する標識剤を開発した。この標識剤は細胞が死滅あるいは損傷し生体細胞でなくなると蛍光を発しなくなる。また、この標識剤は標的とする癌細胞を特定の種類に絞るよう操作することができる。

「われわれのコンセプトで設計した標識剤は、臨床現場での応用が可能と考えています。」と小林医師は述べている。「臨床医はこの標識剤により薬剤が標的に命中しているか、またそれにより腫瘍が縮小したかを目視で確認でき、癌治療への患者の反応を観察できるのです。この標識剤はまた、追加研究やヒトを対象とする大規模試験を行えば、内視鏡検査や腫瘍摘出の精度を高める外科的補助として使用するのに適していると考えられます。」

本チームは、HER2に結合する抗体でHER2陽性乳癌の治療に用いられるトラスツズマブ(ハーセプチン)と呼ばれる薬剤に、BODIPYとして知られる小さな蛍光複合体に改良を加えることで、活性化可能で癌を標的とした標識剤を創った。この蛍光標識剤は、リソソームなど酸性の状態においてのみ蛍光を発する。リソソームは細胞内で袋状の構造をしており、細胞にとって不要な大型分子を分解する酵素を含んでいる。活性化可能なBODIPY-抗体標識剤がHER2陽性乳癌細胞に達すると、トラスツズマブ部分は細胞表面上のHER2タンパク質に結合し、その後このHER2―活性化可能標識剤の複合体は細胞に取り込まれる。この複合体が細胞内で処理され酸性状態のリソソームに入ると、BODIPYは活性化し蛍光を発する。

「われわれの設計コンセプトは非常に汎用性の高いもので、多くの種類の癌検出に利用することが可能です。」と小林医師は述べている。「他の活性化可能蛍光標識剤とは違い、われわれの創った標識剤はそれぞれ単独で作用する標的薬剤と蛍光剤からなるものです。あらゆる抗体や分子は細胞表面上のタンパク質に結合して標的分子に取り込まれます。これを利用してこの蛍光剤を様々な種類の癌細胞に的中させることが可能なのです。」

小林医師チームはマウスモデルを使い、この活性化可能標識剤を用いて腫瘍の検出が可能かどうかの研究を行った。チームは活性化可能標識剤または常に蛍光を発する対照薬剤のいずれかを、HER2陽性乳癌腫瘍から肺転移をきたしたマウスの尾に注入した。注入の翌日、肺腫瘍に限り活性化可能標識剤から蛍光を確認した。一方で「常に蛍光を発する」対照群では肺腫瘍、正常肺細胞、心臓から蛍光を確認した。

この活性化可能標識剤は主として、あるいは特異的にHER2陽性腫瘍細胞に処理されたのかを確認するために、HER2陽性腫瘍細胞と、HER2遺伝子の代わりに赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子をもつ腫瘍細胞の両方をマウスに静注し肺転移を誘導した。蛍光標識剤の投与後、活性化可能標識剤はHER2陽性腫瘍に限り蛍光を発したが、「常に蛍光を発する」対照群では、HER2陽性腫瘍およびその周辺組織とRFP陽性腫瘍においても蛍光を発した。

活性化可能標識剤を用いたマウスのHER2陽性腫瘍472例のうち、活性化可能標識剤とRFP(偽陽性)の両方に蛍光がみられたのは3例のみで、これにより活性化可能標識剤はHER2陽性腫瘍に対し99パーセントの検出精度もしくは特異性を示した。「常に蛍光を発する」対照群では特異性は85パーセントに満たなかった。

さらに、研究チームは活性化可能標識剤が検出するのは生体細胞のみであることを確認した。細胞を死滅させるため腫瘍組織にアルコールを投与すると、30分後に活性化可能標識剤の蛍光度が腫瘍組織の中で有意に低下したのに対し、「常に蛍光を発する」対照群での変化は微小なものであった。

本研究チームは一連の他の実験で、マウスの卵巣癌細胞表面を標的とする分子にBODIPY複合体を結合させることによって、その設計コンセプトが幅広く応用できるものであることを明らかにしている。マウスの腹膜や腹壁の組織層に転移した生体卵巣癌の細胞群の検出がこの標識剤によって可能となった。

Urano Y., Asanuma D., Hama Y, Koyama Y, Barrett T, Kamiya M, Nagano T, Watanabe T, Hasegawa A, Choyke P.L., and Kobayashi H. 「pHにより活性化する蛍光プローブを用いた生存癌細胞の分子イメージング」Nature Medicine.誌電子版2008年12月7日号掲載。
NCI分子イメージングプログラムでの小林医師の研究に関する詳細は、http://ccr.cancer.gov/labs/lab.asp?labid=175にて閲覧可能。

 

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