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低所得層ヒスパニック系の癌患者において抑うつの管理は有効

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低所得層ヒスパニック系の癌患者において抑うつの管理は有効

Depression Management Effective in Low-Income Hispanic Cancer Patients (Posted: 11/20/2008)Journal of Clinical Oncology誌2008年9月20日号によると、低所得層のヒスパニックの癌患者における抑うつに対して協調的ケアによる介入は、通常ケアに比べ、抑うつ症状の緩和に効果的であった。[pagebreak]キーワードうつ病、共同チーム治療(コラボラティブケア)、支援治療、心理療法、抗うつ剤、低所得、ヒスパニック系 概要主に低所得者のヒスパニック系住民が多い地域の医療施設で実施された試験では、癌患者の抑うつを治療するための共同チーム治療および総合医療チームによる介入の方が通常の治療より効果的であった。共同チーム医療を12カ月受けた患者は社会的、心理的および機能的な満足度も高かった。 ソース Journal of Clinical Oncology誌(2008年9月20日号) (J Clin Oncol 2008 Se 20;27:4488-96) 背景癌患者の5人に2人は抑うつを患い、癌治療中に悪化したり、治療終了後も長期間持続することがある。腫瘍医は抑うつの治療や症状の発見し損なうこともある。低所得層の癌患者や、十分な医療保険に入っていないか全くはいっていない癌患者は、精神面でのケアを受けることが少ないため特に抑うつになりやすい。 2005年に南カリフォルニア大学の研究者がロサンゼルス郡・USCメディカルセンター(LAC/USC)で55人のヒスパニック系女性患者を対象として、低所得層のヒスパニック系患者を対象とする公営の癌治療施設で、抑うつのための共同チーム医療が効果を上げるかどうかを調べるためのパイロット試験を行った。(「共同チーム医療」にはファミリードクターによる治療の中にメンタルヘルスの専門家の介入が含まれる)研究者はこの結果によってさらに大規模な試験をデザインした。以下に詳細を述べる。 試験癌患者における抑うつ症状の緩和(ADAPt-C )という共同チーム医療による介入について試験を行った。ADAPt-Cチームは博士号を持つソーシャルワーカーが中心となっており、患者の希望または必要に応じて抗うつ剤を処方できる精神科医も含む。 さらに、癌抑うつ臨床専門家(CDCSs)としての訓練を受けたバイリンガルのソーシャルワーカーが、患者が有用な地域サービスを見つける手助けをした。ソーシャルワーカーは各患者のカウンセリングを行い、教育用資料を渡し、抗うつ剤治療または問題解決的治療に対する患者の希望を反映して、患者一人一人にあわせた治療計画を作成した。12カ月の介入期間の間、CDCSは患者に再発の徴候がないかチェックし、電話連絡を取り、密接な追跡調査を続けた。 試験はLAC/UCL医療センターで行われ、患者は低所得者で主にヒスパニック系であった。抑うつの症状を示した癌患者には問診が行われ2つのグループのいずれかに割り付けされた。242人はADAPt-C介入プログラムを受け、対照群の230人は強化した通常治療(EUC)を受けた。EUC群の患者はカウンセリングや支援サービスを受けるよりも、患者や家族向けに書かれた癌と抑うつに関する教育的パンフレットを受け取った。彼らはさらに、センターや地域で利用できる経済的補助、福祉サービス、交通機関、託児サービスについてのリストを受け取った。 全体で472人の患者のうち415人はヒスパニック系で399人は女性、239人が50歳未満、300人が未婚であった。132人(28%)はステージⅢ、Ⅳの癌患者または再発患者であった。全員が試験日数の半分以上で、2つの基本的な抑うつ症状のうち1つを経験していた。PHQ-9と呼ばれる患者の健康に関する問診から得られたベースラインのスコアによると、232人が深刻な抑うつを患っており、24人が気分変調(軽い抑うつ)、216人がその両方を患っていた。 試験では6カ月目と12カ月目に実施されたうつ症状と生活の質の評価結果が示されている。長期的結果は18カ月目と24カ月目に患者の追跡調査を行った後に発表される。 試験の主著者はロサンゼルス南カリフォルニア大学福祉事業学部(School of Social Work)のKathleen Ell,社会福祉学博士(Doctor of Social Work.)である。 結果 ADAPt-C群ではEUC群の患者と比較して抑うつ治療(抗うつ剤投与、問題解決セラピー、またはその両方)を受ける患者の数がはるかに多いようであった。ADAPt-C群では抑うつ治療を受けた患者が72.3%であったのに対しEUC群では24人(10.4%)であった。 6カ月目と12カ月目に問診を受けたADAPt-C群の患者129人のうち、半数が問題解決セラピーを受け、1%未満が抗うつ剤治療のみ、37%が両方を受けた。12%は治療拒否または治療計画に従わなかった。 ADAPt-C群の中で問題解決セラピーを受けた92.3%の患者が12カ月目で治療に満足または非常に満足していると報告しているのに対し、抗うつ剤の投与を希望して受けた患者では42.3%であった。 12カ月目ではADAPt-C群の患者の63%およびEUC群の患者の50%がうつ症状の臨床的に意義のある改善が見られた(PHQ-9スコアが50%以上減少した)。 12カ月目に生活の質に関して評価したところ、ADAPt-C群の患者には、EUCを受けた患者と比較して統計的に有意な社会的、家族的、感情的および機能的に良い結果が得られた。 制限事項本試験の結果は男性と女性を含む平均値であり、男女それぞれの結果が正確に反映していない可能性がある。男性は全参加者の15%であった。 「ヒスパニック系男性は自分が抑うつであると認めにくい文化の中で暮らしている」と米国国立癌研究所、癌生存者室のDiana D. Jeffery博士は述べた。これは、男性がこの試験のような抑うつの定期検診では発見されにくいことを意味している。対照的にヒスパニック系女性は「抑うつに関係する症状を男性よりも多く表明する傾向がある」とJeffery氏は述べ、「新たに癌と診断されたヒスパニック系女性が抑うつの検診を受ければ、ほぼ全員が『毎日泣きますか』という質問に対してイエスと答えるでしょう」と付け加えた。さらに、ヒスパニック系女性はヒスパニック系男性に比べて医療保険に入っていないことが多いため、地域社会の医療センターの癌治療サービスを頼ることが増え、その結果、本試験の参加者の多数を占めている。 本試験の脱落率は非常に高く、特に6カ月から12カ月の間に高かった。「男性は自分がどう感じているかを話すことが治療の一部になっていることを知ると、脱落しやすくなるようだ」とJeffery氏は述べ、脱落率の原因となる他の要因は、低所得のヒスパニック系住民は雇用がしっかりしていない場合が多く仕事を休んでクリニックへ通うことが難しい傾向がある点であると指摘した。さらに病状が悪化すると被験者が住んでいる地域を離れた可能性があるとEll氏は述べた。 EUCを受けた対照群の患者のうつ症状は、共同チーム治療に選ばれなかったことに失望した影響を受けている場合がある。にもかかわらず患者はうつ症状が改善した。「特に定期的な検診、癌専門医からの通知、医療センターに関する情報や利用可能な心理社会的支援サービスに関する情報の提供といったシステムの強化から来るものかもしれない。」とEll氏は述べた。 コメント「本件は、癌に直面している患者が属するヒスパニック系コミュニティーに広まるうえで重大な意味をもつ非常に重要な試験である。」とJeffery氏。ヒスパニック系は米国で最大の人種的マイノリティーだが「経済的にめぐまれていないヒスパニック系癌患者の生活の質を調べた試験はほとんどないため、この試験は地域社会を基盤とした医療体制の中でメンタルヘルスに関するニーズを探る最初の試験になるかもしれない」とJeffery氏は述べた。 ADAPt-Cおよび抑うつ治療に関するその他の共同チーム治療モデルが、癌のタイプを超え、さらに人種に関係なく経済的にめぐまれない人々に幅広く届けられる可能性があるということをこの試験の成功が表しているとJeffery氏は考えている。 ****** エリザベス 訳関屋 昇(薬学)監修 ******

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