2008/10/21号◆スポットライト「運動と乳癌予防の考察」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/10/21号◆スポットライト「運動と乳癌予防の考察」

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2008/10/21号◆スポットライト「運動と乳癌予防の考察」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年10月21日号(Volume 5 / Number 21)

日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

運動と乳癌予防の考察

現在判明しているリスク要因の一覧を見ると、重要なリスク要因のうち自ら改善可能なものはほとんどなく、乳癌に関心がある女性たちにとってフラストレーションとなることが多い。しかし乳癌予防に関する運動の役割がさらに明らかになるにつれ、事態は改善されるかもしれない。

人体に関する研究の進歩により、体内で産生されるホルモンの量は、運動をすることで変化することが明らかとなっている。女性が一生の間に暴露する卵巣ホルモン量に影響を与えるとわかっていても、初潮や閉経年齢を変えることができるわけではなく、出産や授乳を経験しないこともある。しかしながら、多くの研究者は、運動によってこれらのホルモンの暴露を減らすことができると考えている。

例えば、エストロゲンやプロゲステロンを含む卵巣ホルモンは、女性の生殖機能や体の健康を保つ上で必要であるが、同時にこれらのホルモンは乳腺細胞の増殖を刺激するため、それによって遺伝子変異を蓄積し、潜在的な腫瘍形成に結びつく可能性がある。

「私たちの理論は、女性が経験する排卵性月経周期の累積的な数が乳癌リスクを予測できるというものです」と、シティ・オブ・ホープ総合がんセンターの癌疫学の教授であるDr. Leslie Bernstein 氏は説明する。

彼女らは、乳癌とその他の癌の過剰発生の潜在的原因を前向きに調査する目的で、カリフォルニア州の現職・退職の教員と学校管理者133,479 人が参加するカリフォルニア教職員スタディ(CTS)試験に1995年より関わっている。

昨年、CTS の研究者は、高校時代から現在(但し55歳以上の場合は54 歳)までに激しい運動を平均週5時間以上行っている女性と、同期間に激しい運動を平均週30 分以下しか行っていない女性とを比較し、浸潤性乳癌のリスクは長期間の激しい運動と逆の相関関係があることを明らかにした。

予想外にも、激しい運動や中程度の運動を長期間行っても、エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌のリスク低下と関連していなかった。しかし、長期間の激しい運動群では、ER 陰性乳癌リスクが55%低下し、長期間の中程度の運動群では47%低下した。

タモキシフェンラロキシフェンといった薬剤がER 陽性乳癌の形成防止に役立つ一方で、ER 陰性乳癌にはそのような薬剤がないため、ER 陰性乳癌のリスクを減らす手助けは「非常に重要」であるとBernstein 氏は述べる。

最近、NCIの癌疫学・遺伝学部門は、1995年に始まったもう1つの前向きコホート研究である米国立衛生研究所‐退職者協会(AARP)「食事と健康スタディ(Diet and Health Study)」により類似の結果を得た。研究開始時点で50~71 歳であった女性の現在の運動状況について調査し、ホルモン受容体別の乳癌診断と関連づけて運動を評価した。この研究結果で、運動量が多いとER 陰性乳癌のリスクが低下することが示され、これはCTS の結果と一致した。

「乳癌リスクに対して認められる運動の明らかな予防効果が、ホルモン値に直接に影響を与えた結果であるかどうか」を見分けるために他の研究が必要であると、以前DCEG に所属しこの研究の主任研究員であったDr. Michael Leitzmann 氏は述べる。インスリンとインスリン様成長因子の循環量の低下、慢性炎症の減少や、免疫反応の調整といった他の要素も運動が乳癌リスクの制御に影響を及ぼしているかもしれない。

機能の問題に加えて、予防効果にはどの程度の運動が必要なのか、そして、乳癌リスクに最も効果があるのはどの年齢時に運動を行うかはまだ明らかとなっていない。しかしながら「看護師のヘルススタディ」Nurses’ Health Study(NHSII)の最新のデータによると、早期青年期や若年成人期に定期的な運動を始めることは閉経前乳癌の予防に重要であると思われる。

NHSII 試験では64,777 人の閉経前女性の12 歳からの生涯運動を調査し、平均で週3.25 時間のランニング、あるいは、週13 時間のウォーキングと等しい運動を青年期に行った女性群では、閉経前乳癌のリスクが23%低下したことを明らかにした。「長期間の持続運動が最も効果を示した」と、この研究の統括著者でありセントルイスにあるワシントン大学医学部教授のDr.Graham Colditz 氏は述べる。

しかしながらNHSII 試験では、12~22 歳の間に激しい運動を行うことがリスク低下に最も貢献していた。研究者は、乳腺発達の受攻期に何かがあるのかもしれないと推測する。「思春期の始まりから最初の妊娠までの間というのは発達途上の乳腺にとって最大のリスク蓄積期で、青春期を超えて成熟期には、体重の変動、運動の変化、食事の変化やアルコールの摂取など多くの理由で最もホルモンが不安定となる期間です」と、NCI の癌制御・集団科学部門、応用研究プログラム准教授のDr. Rachel Ballard-Barbash 氏は説明する。「しかし多くの研究は、もし生涯のある時期に身体的に活動的でなくても、人生の中で活動的な期間があれば効果があることを示しています」と彼女は続ける。「乳房の健康に特定の影響を及ぼすかもしれないものを重視することは、ひいては体の健康を重視することであり、女性にとって同じくらい重要なことです」。

 

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Nogawa  訳

大藪 友利子 (生物工学)監修

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