2008/10/21号◆特別レポート「肺癌とエルロチニブ-どのような患者に有効か」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/10/21号◆特別レポート「肺癌とエルロチニブ-どのような患者に有効か」

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2008/10/21号◆特別レポート「肺癌とエルロチニブ-どのような患者に有効か」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年10月21日号(Volume 5 / Number 21)

日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特別レポート

肺癌とエルロチニブ-どのような患者に有効か

抗癌剤の最近の発展の中でもっとも有望なものの一つは、ゲフィチニブ(イレッサ)およびエルロチニブ(タルセバ)が一部の肺癌患者に劇的な効果を認めたことである。このような効果を示したのは肺癌患者のうち10%にすぎないが、その他の多くの患者でも生存期間の延長や症状の改善がみられた。しかし残念ながら、EGFR チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)とよばれるこれらの薬剤が有効である患者を選ぶ最適な方法は未だ明らかではない。

NCIはその患者選択の指針を立てる上で役立つ可能性のあるMARVEL(肺癌におけるエルロチニブマーカーの実証試験)という臨床試験を開始した。この試験はエルロチニブ奏効の予測バイオマーカーとして、肺癌における上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の遺伝子コピー数の増幅が有効かどうかを検証することを目的とする。最近の複数の研究では、エルロチニブがこの「増幅」遺伝子をもつ患者に有効なことが示唆されている。この試験では、EGFR 遺伝子変異等の、他の効果予測マーカー候補も評価することになる。

「この試験は、複数マーカーの確証を前向きに得るための他に類を見ない機会となるであろう」と共同主席著者であるコロラド大学健康科学センターのDr. FredR.Hirsch 氏は述べた。彼らのグループはコロラド大学癌センターで、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法(FISH 法)を肺癌のEGFR 増幅を検出する方法として開発した。この技術はバイオマーカー自体とともにMARVEL の中で評価されることになる。

乳癌の場合、トラスツズマブ(ハーセプチン)の対象となる患者を選択するのに通常FISH を用いて分析を行う。この技術は肺癌の臨床にも用いることができるかもしれない。

このランダム化試験では、すでに治療を受けた約1,200 人の進行性非小細胞肺癌(NSCLS)患者に、エルロチニブ、または肺癌に対する標準的なセカンドライン化学療法剤であるペメトレキセドを投与する。研究者らは、FISH によって検出したEGFR 陽性患者ではエルロチニブの有効性が上回り、EGFR 陰性患者ではペメトレキセドの有効性が上回るという仮説を立てている。

「この試験には二つの主目的がある。一つはEGFR を標的とした治療がどのような患者にもっとも効果が高いかを明らかにすることであり、もう一つはEGFR の標的を測定するのに用いている複数の検査法を検証することである」とNCI癌療法部門のDr. Caludio Dansky Ullmann 氏は述べた。氏は、以前NCI に所属していたが、現在はオンタリオ癌研究所のDr. Janet Dancey 氏とともに、この試験の進行を手助けした。

多くの癌腫において、EGFR 遺伝子の変異または遺伝子コピー数の増加のいずれかによって、EGFR 遺伝子の活性化が生じている。EGFR 遺伝子変異はエルロチニブの著効と関連があり、時には数年にもわたって効果を示すことがあるが、この変異は西洋人種では稀である。一方、約50%のNSCLS ではEGFR 遺伝子コピー数の増加がみられる。したがって、もし遺伝子コピー数が効果予測のバイオマーカーとして有効であることが確証できれば、この検査を広く利用できる可能性があるとDr. Hirsch 氏は述べている。

「今回の臨床試験でマーカーを見つけることにより、最終的には、患者ひとりひとりに最も有効とみられる具体的な治療選択が可能になることをわれわれは期待している」とDancey 氏は述べた。

これらの分子マーカーだけでなく、女性であること、アジア人種であること、生涯に100 本未満しか喫煙していないことといった臨床的特徴がEGFR TKI への奏効と結びついている。さらに奏効した患者は肺腺癌に多い傾向がある。

この臨床試験ではさらにKRAS 遺伝子の変異がバイオマーカーとして利用できないかも評価している。大腸癌の場合、KRAS変異はEGFRタンパクを標的としたモノクローナル抗体であるセツキシマブ(アービタックス)への耐性と結びついているが、肺癌に関してはこの種の変異に関して結論を出すだけの十分な科学的証拠は存在しない。

「この試験を通して、異なるEGFR バイオマーカーが互いにどのような関係にあるかということについて多くの知見が得られるのではないかと期待している。」とHirsch 氏は述べ、「さらにこれらのバイオマーカーと臨床的な効果との関連性についても理解が深まることを期待している」と続けた。

この多施設試験は、バイオマーカーが肺癌の治療法を選択する上で有効であるどうかを前向きに検証しようとする初のNCI の試験である。NCI の臨床グループ、米国食品医薬品局(FDA)、連邦保健・福祉省メディケア・メディケイドセンターといった多くの研究協力者が試験計画と臨床デザインに初めから参画している。

「進行性肺癌の治療としてNCI 主導で計画された臨床試験であり、FDA、NCI 臨床グループ、バイオマーカー業界、そして医薬業界から幅広い助言を受けた初めての試験という点において、MARVEL 試験は大変重要である」とロズウェルパークセンター研究所の研究者であり、この試験の責任者であるDr. Alex A. Adjei 氏は 声明の中で述べている。

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関谷 昇 訳

後藤 悌(国立がんセンター中央病院 内科) 監修

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