2008/10/21号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/10/21号◆癌研究ハイライト

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2008/10/21号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年10月21日号(Volume 5 / Number 21)

日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・遺伝子サインによる肝癌再発予測の可能性が示唆される
・10 代女性の4 人に1 人がHPV ワクチンの接種を受けている
・中年期の喫煙は老年期の生活の質を低下させる
・神経芽細胞腫におけるALK の役割にさらなるエビデンス

遺伝子サインによる肝癌再発予測の可能性が示唆される

薬品で保存処理された組織サンプルを研究するための遺伝子技術を改良したものを駆使して、再発リスクのある肝癌患者を同定できる遺伝子サインが明らかにされた。この研究結果では、いくつかの遅発性再発症例(初発から2 年以上経過後の発症)は再発症例などではなく、肝炎ウイルスによる感染症もしくは肝硬変などの環境因子によって損傷した肝臓で発生する新たな原発腫瘍の可能性があることも示唆された。

New England Journal of Medicine(NEJM)誌の10月15日号オンライン版に掲載された今回の研究において、Dr. Todd Golub 氏(ダナファーバー癌研究所所属)とそのチームは先ず技術的な問題を克服した。大規模な細胞内遺伝子活性調査である全ゲノム発現プロファイリング試験によって、癌および診断ツールの新たな分類がもたらされるようになった。しかし、その適用は凍結サンプルに限定されている。臨床上の長期追跡調査情報を有する標本などの膨大な患者サンプルは凍結保存ではなく化学薬品のホルマリンで保存されているため、ゲノム解析に利用することができない。

この問題に取り組むために、最近、ホルマリン固定されたサンプルで数百の遺伝子をプロファイリングする方法がIllumina 社の研究者らによって開発された。今回の試験で、Golub 氏らは、その方法を改良し約6,000の遺伝子のプロファイリングを行った。研究の結果、24年前に採取したサンプルを含む2,000 人の患者のサンプルのうちの90%から有益な情報が得られた。

次に、肝腫瘍のプロファイリングを行ったが、生存に関連するサインを検出することはできなかった。そこで、研究チームは肝腫瘍そのものではなく腫瘍を囲んでいる組織に再発に関連する遺伝子サインがあるかもしれないと仮定した。感染症もしくは肝硬変を患ったことがある患者においては、この隣接組織に頻繁に異常が認められている。

研究チームは、106 人の患者から腫瘍に隣接する組織における遺伝子の活性に基づいて186 遺伝子のサインを同定した。さらに、世界のその他の地域の患者から得たサンプルを用いてその妥当性を検証した。今後の研究で確認されれば、リスクを有する患者のうち、強力な治療および予防措置で効果が得られる可能性がある患者の同定が可能となるかもしれない。

偏りのない方法で全ゲノムを調査できることが最も重要である、とブロード研究所で癌プログラムの指導も行っているGolub 氏は指摘した。「数百の遺伝子プロファイリングを行っただけでは、このサインを発見することは到底できなかったでしょう」と同氏は述べた。現在では、ホルマリン固定されたサンプルの全ゲノム解析は、市販のツールを用いて実施することができるようになっている。

10 代女性の4 人に1 人がHPV ワクチンの接種を受けている

2007年度National Immunization Surveyの10代を対象とした調査によると、10代女性の4人に1人がガーダシル(Gardasil)3 回接種によるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種を始めたということである。予防接種諮問委員会(ACIP)は、2007 年3 月に11 歳もしくは12 歳の全女性に対して4 価HPV ワクチン3 回接種による定期予防接種を推奨した。今回の新たな調査結果は、政府による初めての公式なコンプライアンスに関する報告であった。

一連のワクチン接種は、9 歳から開始することが可能である。ACIP は、ガーダシルが治療薬ではなく予防薬であってもまた接種対象がすでにHPV に感染している可能性があっても、13~26 歳の女性に対してワクチンの「キャッチアップ(未接種者のための)」接種を受けることも推奨している。4 価ワクチンは、子宮頸癌の70%および生殖器疣贅(ゆうぜい※イボ)の90%をも占めるHPV の6、11、16、および18 型の予防に有効である。

サンプル群から得た25.1%というワクチン接種率は、米国の10 代女性1,000 万人のうちの250 万人がワクチン接種を受けたことを示唆するものである。しかしながら、調査は13~17 歳の10 代男性もしくは女性が居住する5,474 世帯に対する電話による聞き取りを基に実施され、結果はその10 代男女のうちの2,947 人のみの診療記録によって確認された。さらに、ワクチンの接種スケジュールは6 か月間で3 回接種が提唱されていることから、調査で1 回のワクチン接種を受けたことが明らかになった対象者であっても3 回にわたる一連の接種を完遂していない可能性がある。最後に、調査方法および医療提供者の経歴に関するいつくかの構造的な問題から、全対象集団もしくはラテン系10 代などの特定グループのいずれかに対してこれらの結果を一般化することは難しくなる可能性がある。

今回の結果は、青年に推奨されるワクチン接種に関する報告の一部として、死亡率・罹患率週間報告(Morbidity and Mortality Weekly Report)の10月10日号に掲載された。青年用にACIP が推奨するその他のいくつかのワクチンを対象としたコンプライアンスに関する報告も含まれていた。

中年期の喫煙は老年期の生活の質を低下させる

喫煙が寿命を縮めることは広く認められているが、Archives of Internal Medicine誌の10月13日号に掲載された研究で、中年期の喫煙によって老年期の生活の質をも低下させることが示された。

フィンランドの研究者らは、ヘルシンキ・ビジネスメン・スタディ(Helsinki Businessmen Study)に参加した1,658 人の男性を対象に、長期間の喫煙と健康に関連した生活の質(HRQoL)の関係を調査した。1974 年のベースラインでの平均年齢は47.8 歳で、全員が健康であった。広く使用されているHRQoL の測定尺度であるRAND(36項目の健康調査)を用いて、2000 年の時点で生存していた1,131 人(87.9%)の健康状態を再評価した。喫煙経験のない参加者は、愛煙家よりも平均して10 年長生きしており、RAND 尺度で最高の(最も良い)スコアであることが認められた。

「非喫煙者と愛煙家の間の差が最も大きく、その差は社会機能尺度の4 ポイントから身体機能尺度の14 ポイントまでさまざまであった」と記されている。身体構成要素の集計スコアからは、毎日喫煙するたばこの本数が増加するにつれて、HRQoL が段階的に低下することが明らかになった。

愛煙家と比較して、非喫煙者は「晩年においても、一般集団における10 歳もの年齢差に相当する極めて良好な健康状態に恵まれていた」と研究者らは指摘した。「予防上の観点から言えば、喫煙とHRQoL の関係に関する今回の試験結果は、喫煙が社会に負担を及ぼしているという新たな見解を生むものである。より良い生活の質についての議論は高齢喫煙者にとって特に重要であるとみられるが、今回の結果から示されているように、最高のHRQoL を目指すためにはそもそも{喫煙}を始めるべきではない。」

神経芽細胞腫におけるALKの役割にさらなるエビデンス

2008 年8 月、家族性神経芽細胞腫を有する大多数の家族においてALK(未分化リンパ腫キナーゼ)遺伝子に生殖細胞系列変異の存在が同定された。また、リスクが高く自然発生(遺伝性ではない)の腫瘍サンプルの12%に体細胞のALK 変異も認められた。今回Nature 誌の10 月16 日号に掲載された4 つの研究において、神経芽細胞腫におけるALK の役割が確認された。

1つ目の研究では、遺伝性神経芽細胞腫患者をもつ8家族のALK に3 つの異なる生殖細胞系列変異が発見され、自然発生腫瘍サンプルの8.4%および神経芽腫細胞株の35.7%に体細胞のALK 変異が認められた2つ目の研究では、6 家族のうちの2 家族に生殖細胞系列のALK 変異が認められ、さらに自然発生腫瘍のALKに遺伝子数の変動および遺伝子変化が、主にその遺伝子の2 つの領域で発生したことが明らかにされた。

3つ目の研究においても、原発腫瘍の6.1%および神経芽腫細胞株の33%にALK変異が認められた。4つ目の研究では、神経芽細胞腫サンプルの8%に5つの異なるALK 変異が同定され、3 つが体細胞系列で2 つが生殖細胞系列の変異であった。

重要なことに、これらの変異はALK タンパク質の活性を高めているとみられる;変異ALK タンパク質が過剰に発現し下流の細胞シグナル伝達経路で他のタンパク質を継続的に活性化することが本研究により明らかにされたが、これは細胞の異常な増殖および分裂につながる可能性がある。RNA 干渉もしくは標的薬のいずれかを用いて変異ALK 遺伝子を阻害することによって、すべての研究で神経芽腫細胞の増殖が抑制されたり細胞死がもたらされたりした。

「神経芽細胞腫は、1 歳以前に診断される最も頻度の高い小児癌で、子供の全癌死の約15%を占めている」とクリーブランドクリニックのDr. Charis Eng 氏は付随の論説で述べている。遺伝性神経芽細胞腫の家族の治療もしくは遺伝子検査に対して、ALK をどのように標的とすることができるかを明確にするために今後の研究が求められるが、同氏は「主要な非症候群性の神経芽細胞腫遺伝子の発見を長らく待ち望んでいたことで、実に喜ばしい展開である」と説明している。

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豊 訳

島村 義樹 (薬学) 監修

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