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2008/11/04号◆癌研究ハイライト

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2008/11/04号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年11月4日号(Volume 5 / Number 22)

日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・肺癌関連遺伝子を新たに確認
・ベバシズマブ、造影剤としての試み
・ストレスや鬱が卵巣腫瘍の変化に影響

肺癌関連遺伝子を新たに確認

肺腫瘍の遺伝子変化の大規模な調査により、この疾病の最も一般的な型である肺腺癌で頻繁に変化が認められる26の遺伝子が確認された。10月23日発行のNature誌に報告されたこの発見によって、肺癌への関連が認められた遺伝子の数は増え、この致死的な疾患の遺伝学に関する知識の基盤が拡大することとなった。

米国立ヒトゲノム研究所が資金を提供する学術研究者団体の腫瘍塩基配列決定プロジェクト(Tumor Sequencing Project)は、188個の肺腫瘍から600以上の遺伝子を分析し、非遺伝性の変異およびDNAの増加や喪失を検証した。試験の総合的な分析結果は、癌が、複数の遺伝子に生じたさまざまな種類の変化によって、核をなす生物学的経路が変化した疾病であるとする見解を裏付けるものである。

たとえば、上記の腫瘍の2/3以上に、MAPK経路に影響を及ぼす変異が1つ以上生じていた。研究者らは、このような変化が認められる肺癌患者には、この経路に影響を及ぼす薬剤が有益である可能性があることを示唆し、大腸癌のモデルマウスでは、MEK阻害剤と呼ばれる化合物が有望な結果をもたらしていることに言及した。

この試験結果は他の大規模ゲノム研究の成果を補完するものであり、このなかには、Nature誌の同じ号に掲載された癌ゲノムアトラス(TCGA)プロジェクトによる膠芽細胞腫という脳腫瘍の分析結果(結果は9月にオンラインで発表)などがある。

肺および脳の両試験では、いくつかの同一の発癌遺伝子に新たな変異が確認され、この重複からは、癌の多様な遺伝子変化にもかかわらず、数種類の標的療法がさまざまな型の腫瘍に有効である可能性が示唆されると、両試験を主導したダナファーバー癌研究所のDr. Matthew Myerson氏が記者らとの電話会議で語った。そのような薬剤には現時点で、イマチニブ(グリベック)およびセツキシマブ(アービタックス)が挙げられる。

ベバシズマブ、造影剤としての試み

国際会議で10月22日に発表された試験結果によれば、低用量の血管新生阻害剤ベバシズマブ(アバスチン)と放射性トレーサーとの組み合わせが、腫瘍画像形成方法として有効であるという。本試験では、テキサス大学健康科学センターサンアントニオ校およびMPI Research, Inc.社のDr. Zheng Jim Wang氏らが、ベバシズマブに放射性トレーサーの銅-64(64Cu)を加え、乳癌、肺癌および膵臓癌のモデルマウスに用いた。

スイス・ジュネーブで開催された「分子標的および癌治療学EORTC-NCI-AACRシンポジウム」でWang氏は、試験により得られた腫瘍画像は、前日に同じマウスを撮影したイメージングプローブ18FDGを用いたPETスキャン画像(腫瘍画像の「ゴールドスタンダード」と考えられているとのこと)より優れていたと報告した。さらに、この混合したベバシズマブを造影剤として用いることにより、18FDGで可能であったものより小さくかつ早い段階の腫瘍を検出することができたと述べられている。

この化合物の単回投与で用いられるベバシズマブの用量は、治療に用いられる通常投与量の2.5~11.5分の1と少ないものである。「用量とコントラストとの相関試験は実施していませんが、[ベバシズマブの]用量を減らして、なお十分な腫瘍検出ができる余地があると考えています」とWang 氏は説明した。

ベバシズマブは米国では、進行した結腸直腸癌、乳癌および肺癌に承認されている治療薬で、腫瘍の増殖に必要な血管新生につながる重要なシグナルタンパク質である血管内皮増殖因子(VEGF)を標的にする薬剤である。

ストレスや鬱が卵巣腫瘍の変化に影響

鬱やストレスの徴候を経験した卵巣癌患者では、腫瘍の微小環境に影響を及ぼすマクロファージ内で、癌の転移に関連する酵素の濃度が上昇していることがわかった。この酵素MMP9は細胞外基質分解酵素のひとつで、癌細胞の浸潤および転移を誘発する。試験は56人の女性を対象に実施され、観察結果は11月1日発行のClinical Cancer Research誌に掲載された。

アイオワ大学のDr. Susan K. Lutgendorf氏らが、鬱の徴候、慢性的なストレスおよび社会的支援の低さが、腫瘍に関連したマクロファージのMMP9濃度の上昇と強い関わりがあることを発見した。逆に、社会的支援の度合いが高い患者ではMMP9の濃度および腫瘍血管の新生を促進する増殖因子VEGFの濃度が低いことがわかった。

上記のシグナルが上昇する機序をさらに詳しく検討するため、Lutgendorf氏らはin vitroで、鬱やストレスの状態にあるときに放出されるホルモンのノルエピネフリンおよびコルチゾルを、ストレス下のヒトに認められるものとほぼ同じ濃度にしてマクロファージに暴露した。この暴露により、細胞のMMP9産生が亢進することが観察された。

「ここに挙げた観察結果は、生物行動が腫瘍の微小環境に及ぼす影響について新たな理解をもたらすものであり、かつ卵巣癌患者の転帰および患者に対する標的薬物療法や行動学的介入に影響を与えるものである」と研究者らは記している。

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片岡 訳

林 正樹 (血液・腫瘍科) 監修

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