2008/11/18号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/11/18号◆癌研究ハイライト

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2008/11/18号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年11月18日号(Volume 5 / Number 23)

日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・ベバシズマブによる血栓リスクの増大
・米国成人の喫煙者は減少しているが、禁煙を試みる喫煙者も減少している
・PAX2は乳癌においてタモキシフェンの効果を仲介する
・HPVワクチン導入に先立ち子宮頸癌罹患状況を評価

ベバシズマブによる血栓リスクの増大

腫瘍の血管新生阻害剤としてFDAが最初に承認した薬剤ベバシズマブ(アバスチン)は癌患者の静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを著しく増大すると米国医師会誌(JAMA)11月19日号に掲載された。

2003年以降に公表された15件のランダム化試験における8,000人近い様々な進行固形腫瘍患者の統合結果から、ベバシズマブ投与患者は、投与していない患者と比べて、VTEを発症する可能性が33%高いことが明らかになった。ベバシズマブ投与患者のVTE発症率は、すべてのグレードについては11.9%、悪性度の高いグレードについては6.3%であった。ベバシズマブ投与患者が高グレードのVTEを発症するリスクは、投与していない患者よりも38%高かった。

週に25 mg/kgほどの少ない用量でもリスクがあった。これは、「いわゆる低用量ベバシズマブはすでに血栓症を引き起こす飽和値に達しているのかもしれないと示唆するものである」と著者らは考えている。中皮腫および非小細胞肺癌などの気道消化器の悪性腫瘍を有する患者において、より高いリスクが認められることから、著者らはこれらの疾患患者に対してVTEの予防を同時に行うことを勧めている。

「(FDAが現在要求している添付文書に)黒枠警告を追加するべきかもしれない」と、ストーニーブルック大学のDr. Shobha Rani Nalluri氏と研究チームを筆頭とする研究著者らは指摘した。サリドマイドおよびレナリドマイドなどのその他の血管新生阻害剤についてもVTEのリスクを増大することが明らかにされており、著者らはそれらの薬剤とベバシズマブの併用によってその増大したリスクがさらに増す可能性があると警告した。

米国成人の喫煙者は減少しているが、禁煙を試みる喫煙者も減少している

CDC(米国疾病予防管理センター)が発表した最新報告では、3年ぶりに、米国成人の喫煙率が2006年の20.8%から2007年の19.8%へと大幅に減少したことが明らかにされている。成人喫煙者の約4分の1が時々喫煙すると報告した一方で、4分の3以上は毎日喫煙すると報告した。この記事は11月14日号の 有病率・死亡率週間報告に掲載された。

国民健康聞き取り調査(NHIS) を通して集められたデータは、面接を終えた人の中から無作為抽出された23,000人を越す18歳以上の対象者からの自己報告であった。

全体的な進展状況にもかかわらず、喫煙率で著しい減少を示したのは、黒人(23.0%から19.8%へ)および65歳以上(10.2%から8.3%へ)の2つの成人グループのみであった。加えて、過去12か月以内に禁煙を試みた「毎日喫煙者」の2007年における割合は1993年よりも低く、18~24歳の対象者の方がより年齢の高い成人よりも禁煙を試みる傾向が強かった。

「包括的な国のたばこ規制プログラムに対する資金不足」が成人の禁煙促進をより一層進めていく上で障害となっていると著者らは示唆している。また、包括的なたばこ規制プログラムの一環として、「臨床医および医療提供システムは喫煙の状況を常に確認して記録し、医療環境で出会うすべての喫煙者を治療し、患者が電話による禁煙相談を利用するように促す必要がある」という点も指摘している。電話による禁煙相談は、フリーダイヤルの1-800-QUIT-NOWで現在国内全域での利用が可能となっている。

PAX2は乳癌においてタモキシフェンの効果を仲介する

PAX2というタンパクはタモキシフェンが乳癌治療で効果を発揮するのに重要な役割を果たしている。腫瘍細胞中にPAX2が存在すると腫瘍増殖を刺激するERBB2(別名HER2)タンパクの生成を阻害し、PAX2が欠損しているとタモキシフェンの効果が減少することをNature誌11月12日号オンライン版で英国の研究者らが発表した。

研究者らは、乳癌細胞系を用いた実験でerbB2遺伝子中の1部位を含むエストロゲン受容体(ER)の数個の新たなDNA結合部位を同定した。また、PAX2はタモキシフェンに曝露されるとERと複合体を形成しERBB2と結合してerbB2遺伝子発現を阻害する事を明らかにした。エストロゲンまたはタモキシフェンを用いた治療では正常細胞中のERBB2量は減少したが、PAX2の発現を阻害すると正常細胞中のERBB2量は増加し細胞増殖を促進した。

腫瘍形成を促進することが認められているAIB-1と呼ばれるもう1つのタンパクは、ER-PAX2複合体としてerbB2の同一の遺伝子部位に結合することが判明した。AIB-1とPAX2はこの結合部位を巡って競合していると考えられる。PAX2のタンパク濃度が低下するとAIB-1は優先的にこの部位に結合しタモキシフェンの効果は逆転する。PAX2の濃度が低下しタモキシフェンに耐性がある乳癌細胞系において、研究者らは細胞にPAX2を導入することでタモキシフェンに対する感受性を回復させることに成功した。

英国癌研究所(Cancer Research UK)のDr. Antoni Hurtado氏が主導した研究チームは、原発性乳癌(全員タモキシフェン治療を受けた患者)の組織標本109例を用いて彼らの研究結果を確認した。PAX2 陰性患者に比べて、PAX2陽性患者では無再発期間が有意に改善した。

論文発表をかねた記者会見で、研究者らは最終的にこの研究成果がタモキシフェンの効果がなくアロマターゼ阻害剤などの代替療法が必要な女性の特定に役立つ事を期待していると述べた。

HPVワクチン導入に先立ち子宮頸癌の罹患状況を評価

ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連して推定2万5千件の癌が1998~2003年の間、毎年38州とワシントンD.C.で発生していることが最新の研究で示唆されている。本研究は HPVワクチンであるガーダシルの導入前に米国におけるHPVに関連した癌の負担を評価するためCDC(米国疾病管理センター)が検証した新たな症例報告22報中の1報である。本ワクチンは、子宮頸癌の7割に関与するHPVの2種と性器疣贅(性器いぼ)の9割の原因であるHPVの2種に予防効果がある。

これらの研究は11月15日号Cancer誌増刊号に掲載されている。

HPVに関連した癌としては子宮頸癌が最も多い癌で米国では年間およそ1万1千例を数えるが、HPVは100種以上あり外陰癌・膣癌・陰茎癌・肛門癌・口腔癌・中咽頭癌にも関連している。(FDAは最近膣癌と外陰癌の予防にもガーダシルの適応を拡大した)

本研究をまとめたCDCのDr. Mona Saraiya氏によると、HPVワクチンの導入前にHPV関連癌を評価することで、子宮頸癌やその他のHPV関連癌および前癌状態の発生率低下におけるワクチンの効果および子宮頸癌 スクリーニングプログラムを評価する基準データを研究者らに提供できる。

多数の研究者によってABHACUS(ヒトパピローマウイルスに関連する癌の罹患状況を評価する)プロジェクトとしてこれらの22論文が執筆された。本研究では人種的相違、行動のリスク要因、癌による死亡率などHPVによる癌に関連した様々な問題が扱われている。

その結果として最新の報告では例えば、黒人、ヒスパニック系、南部の女性では子宮頸癌の割合が高いことが確認されている。ある研究では子宮頸癌の死亡率データはスクリーニングと予防プログラムの重要性を喚起するものであると結論している。何故なら研究期間中毎年4千人以上の女性がこの概ね予防可能な疾患のため亡くなっているからである。

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豊、M.F 訳

九鬼 貴美 (腎臓内科)、島村義樹(薬学)監修

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