2008/12/02号◆癌研究ハイライト ◆米国の癌発症率および死亡率低下 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/12/02号◆癌研究ハイライト ◆米国の癌発症率および死亡率低下

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2008/12/02号◆癌研究ハイライト ◆米国の癌発症率および死亡率低下

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2008年12月02日号(Volume 5 / Number 24)

日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・腫瘍微小環境とリンパ腫生存期間との関係
・閉経後、乳癌発症率への影響が大きいのはマンモグラフィより体重
・BRCA変異が陰性でも乳癌の家族歴はリスクを上昇させる

腫瘍微小環境とリンパ腫生存期間との関係

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の腫瘍内と腫瘍の周囲から、治療後の生存を左右すると考えられる遺伝子活性が3パターン確認された。この3つのパターンは遺伝子サインといい、DLBCLの標準療法を受けた3つの独立した患者集団の生存との間に関連が認められている。

試験の結果から、DLBCLは他の癌と同じく、単一の疾患ではなく生物学的に区別される複数の亜型により構成されることが示唆された。また、試験では、一部の型では腫瘍の微小環境(腫瘍に隣接する非悪性宿主細胞)が重要であることが明らかにされた。

リンパ腫/白血病分子プロファイリングプロジェクトに参加したNCI癌研究センター(CCR)のDr. Louis M. Staudt氏らは、試験結果をNew England Journal of Medicine誌11月27日号に発表した。

「患者の生存に影響を及ぼすのは悪性細胞だけの特性ではなく、リンパ節の腫瘍微小環境の特質でもあることがわかったのは興味深い」と、試験の第一執筆者であるCCRのDr. George Lenz氏は述べた。

研究チームは、2群の患者から採取した治療前の生検組織414標本を解析し、その結果と臨床転帰との関係を検討した。この検討から、これまで知られていなかった遺伝子サイン1つと、以前の試験で同定された2つが確認された。このうちの1つである胚中心B細胞と呼ばれるサインは、悪性リンパ腫細胞の遺伝子活性によるものであり、DLBCLの2つの型として知られる胚中心B細胞様DLBCLと活性化B細胞様DLBCLを区分している。

3つのサインをいずれも第3の患者集団により検証したところ、それぞれのサインによって、併用化学療法CHOPまたはCHOP+リツキシマブ(リツキサン)による治療後の生存も予測されることがわかった。

研究者らは、この試験結果は臨床試験を行う場合に意義あるものではないかと考えている。患者によっては治療に関係なく予後が良好であるため、薬剤が実際より優れたもののように思わせる可能性がある。「臨床試験に患者を登録するときは、治療するDLBLCの種類を知る必要がある。そうすれば、結果を正確に評価し、試験間の比較を行うことができる」とStaudt氏は言う。

たとえば、腫瘍微小環境に間質1というサインを有する患者は、治療が奏効しやすい傾向があった。しかし、微小環境に間質2というサインがみられる患者は予後不良であった。

間質2というサインには、腫瘍の血管新生にかかわる遺伝子も含まれている。このことから、このサインを有する患者ではベバシズマブ(アバスチン)などの抗血管新生薬が有益であると思われるが、他の患者はこの種の薬剤の恩恵をほとんど受けられないのではないかと予想される。

「間質2のサインがあるリンパ腫患者の治療に、抗血管新生薬を追加するべきかどうかをみな知りたがっている」と、クリーブランドクリニック、ゲノム医学研究所のDr. Charis Eng氏は付随の論説に記載している。

Eng氏は試験を称賛している。最近、腫瘍微小環境と臨床転帰との関係を他の癌で示した諸試験があり、今回の結果がその諸試験の結果と一致していることを指摘している。

「これらの知見から、DLBCLについて全く新しい考え方がもたらされた」とStaudt氏は言う。これからは悪性細胞から目を転じ、腫瘍微小環境について理解を深める方向に移行してくるだろう、と付け加えている。

閉経後、乳癌発症率への影響が大きいのはマンモグラフィより体重

過体重または肥満の閉経後女性は乳癌のリスクが高いが、大規模な前向きコホート試験から、このような女性で乳癌発症率が高くなることを説明する主な要因はマンモグラフィの頻度や検査精度ではないことが示された。これは、大型の浸潤性乳癌および進行癌でも同じであり、リスクは体重の増加とともに上昇するが、乳癌の診断前のマンモグラフィ検診の頻度や精度は、発症率の高さを説明できない。この試験は、Journal of the National Cancer Institute誌の12月3日号に掲載される。

サンフランシスコ退役軍人局医療センター(San Francisco Veterans Affairs Medical Center)のDr. Karla Kerlikowske氏らは、乳癌サーベイランス・コンソーシアム・データベースに登録された閉経後女性287,115人についてデータを収集した。試験対象とした女性の58%は、米国人口の傾向を反映して過体重または肥満であった。女性らは、1996~2005年にマンモグラフィ検診を受けた時点では閉経後ホルモン療法を受けていなかった。このうち4,446人がマンモグラフィ検診後1年以内に乳癌の診断を受けた。

肥満指数が正常な女性(BMI 18.5~24.9)と比較して、マンモグラフィ後1年目のリスクは、過体重の女性(BMI 25~29.9)では約12%高く、BMI 30~34.9の女性では20%高く、BMIがさらに高い女性では30%高かった。高グレードの進行したエストロゲン受容体陽性の大型浸潤癌についても、独自ではあるが同様のパターンが認められた。女性がそれまでに受診したマンモグラフィ検診の頻度を要因として織り込んでも、この結果に変化はなかった。

マンモグラフィの使用頻度が低いことが、発症率の高さを完全に説明するものではないが、著者らはマンモグラフィの価値については疾患を早期のうちに治癒可能な段階で発見して、「乳癌死亡率を低下させることが証明された唯一の二次的な予防手段である」と言われていることを引用している。また、この試験で認められたBMI高値と進行癌との関連は中程度であったが、決定的なものでもあった。「われわれが得た結果から、過体重または肥満の閉経後女性に対しては、体重を減少させ、定期的にマンモグラフィ検診を受けるよう勧めなければならないことが示唆されている。この2つは、進行癌の診断を受ける女性の数を減少させる要因である」と、著者らは記している。

BRCA変異が陰性でも乳癌の家族歴はリスクを上昇させる

乳癌関連遺伝子検査で変異陽性の女性は乳癌予防措置を取ることが多い。しかし、乳癌の家族歴はあるがBRCA1およびBRCA2遺伝子変異がない女性では、どのような措置を取るべきかほとんど知られていない。今回、新しい試験で、このような女性のリスクは非常に高い可能性があるため、乳房MRI検査およびタモキシフェンまたはラロキシフェンを用いた化学予防など予防の選択肢について担当医と話し合う必要があると示唆された、と試験の著者らは報告している。

乳癌の重要な家族歴がある女性は、高リスクの変異がなくても、一般集団より乳癌発症リスクが約4倍高いことが試験で明らかになった。重要な家族歴とは、50歳未満で乳癌に罹患した近親者が2人以上、または年齢を問わず乳癌の近親者が3人いることと定義されている。

先月、トロント大学のDr. Steven Narod氏はワシントンD.C.の近くで行われた癌予防研究フロンティア(Frontiers in Cancer Prevention Research)会議で結果を発表した。同氏は、検査では陰性であるが顕著な乳癌の家族歴がある何千人もの女性たちと、予防について話し合うよう医師に促した。「私たちは1995年からこの検査をしていますが、リスクが非常に高い女性が多くいます。しかし、彼女らは予防の対象にはなっていません」と記者会見で述べた。

「先になるまで待つ必要はありません。今、実行することが可能です」とNarod氏は続けた。

Narod氏のチームはBRCA1およびBRCA2変異陰性の女性1,492人(365家族)を5年以上追跡調査した。対象女性の乳癌数と一般集団での予測数の比較に基づき、研究者らは顕著な家族歴は30~40%の生涯リスクと関連していると算出した。一方、BRCA変異保因者の乳癌生涯リスクは85%に達する。

米国の癌発症率および死亡率低下

米国の癌発症率および死亡率低下
米国人男女で初めて全体の癌発症率および癌死亡率が低下したと、アメリカ癌協会(American Cancer Society)、CDC、NCIおよび北米がん中央登録所協会が現在の癌の傾向に関する報告を発表した。この傾向は1975年から2005年のデータを元にしており、Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版に11月25日掲載された。全体の発症率および死亡率が低下したのは、主に、男性の3大癌(前立腺癌、肺癌、大腸癌)および女性の3大癌のうち2つ(乳癌、大腸癌)が減少したためである。今年の報告には、各州の肺癌の発症率および死亡率に関する情報と、喫煙およびタバコ規制の傾向についても記載されている。女性では、全体の肺癌死亡率は2003年以降変化がみられないが、唯一カリフォルニア州では男女とも、肺癌の発症率、死亡率がともに統計的に有意に低下した。一方、18の州(ほとんどが中西部および南部)では、肺癌の発症率または死亡率の一方または両方が上昇した。10州では発症率データが得られなかった。

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Nobara、吉村祐実 訳

林 正樹 (血液・腫瘍科) 監修

*枠内記事 Nobara 訳   林 正樹 (血液・腫瘍科) 監修

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