2008/12/16号◆癌研究者プロファイル「Dr. デビッド・シドランスキー」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/12/16号◆癌研究者プロファイル「Dr. デビッド・シドランスキー」

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2008/12/16号◆癌研究者プロファイル「Dr. デビッド・シドランスキー」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年12月16日号(Volume 5 / Number 25)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

今号が2008年最後の発行となります。来年度第1号2009年1月13日(日本語版は1週間後)からスタートします。

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癌研究プロファイル

「Dr. デビッド・シドランスキー」

Dr. デビッド・シドランスキー(David Sidransky)ジョンズホプキンス・キンメルがんセンター 頭頸部癌研究の責任者国立癌研究所(NCI)早期発見研究ネットワーク(EDRN)代表

腫瘍学の長年におよぶ過酷な現実とは、癌の治療が最も容易である最も初期のステージにおいて、癌の発見が最も困難であるという点にある。癌の大半の種類は、早期で症状がほとんどなく、診断時にはすでに全身に転移していることも多い。

Dr. デビッド・シドランスキー(David Sidransky)氏は、癌の症状が現れる前に早期検出するための新たな改善策を模索することに着目し専門としてきた。同氏は家族に医者になることを勧められ、ベイラー医科大学で遺伝医学者Dr. C. Thomas Caskey氏と共に研究するうちに基礎科学に興味をかき立てられるようになった。その後、ジョンズホプキンス大学の研究者Dr. Bert Vogelstein氏のもとで指導を受け始めた。「癌の遺伝学的研究とトランスレーショナルリサーチで私が何をしたいのかを理解し支援してくれたのがVogelstein氏でした」と言う。

デビッド・シドランスキー氏はジョンズホプキンス大学に留まり、自身の研究室を設立した。1990年代前半、Bert Vogelstein氏と共同で、最初の研究2報(膀胱癌および結腸直腸癌)を発表した。腫瘍細胞から脱落したDNAを、尿や便などの体液から測定する可能性を明らかにしたものだ。「体液でクローンの遺伝子変化を検出できるとわかったとき、この分野の誰にとってもゲーム・チェンジャー(劇的に変えるもの)となったと思います」と述べる。

癌バイオマーカーの研究の大半が、当時も今も癌細胞から生成されるタンパク質の測定に集中している。しかし、タンパク質が癌細胞によってのみ生成されることはめずらしく、正常組織から同じタンパク質が少量でも生成されると、タンパク質に基づく早期癌検出は複雑になる。一方、バイオマーカーをDNAに切り替えれば、体内における癌の有無を極めて特異的に示すことができる。

シドランスキー氏の研究室では、早期癌検出の新種バイオマーカーとして、DNAメチル化を利用する可能性について模索している。DNAメチル化とは、癌発現の原因となり得るある種のエピジェネティックな変化のことである。最近の論文によると、同氏らが分析した53個の遺伝子のうち28個において、癌特異的なDNAメチル化を同定した。これら28個の遺伝子のうち8個が、13種類の癌を含む腫瘍300サンプルにおいて癌特異的なDNAメチル化を示した。

「このメチル化の変化のうちいくつかは、腫瘍内のみに存在すると信じています。メチル化の変化は、形質転換過程が特異的であり、故に少なくとも理論的には、早期における癌検出をより特異的に行うことができます」と同氏は言う。

これらの新バイオマーカーは、臨床応用が即時可能になるという時期に発見されている。つい2、3年前までは、ある種類の癌を早期発見したとしても有効な治療法がなかったため有益ではなかった。例えば、口腔前癌病変(前癌症)は、すぐに口腔の広範囲に進展することが多い。この症例に外科手術は適応できない。また、従来の化学療法剤では毒性が強すぎ、早期治療の利点をリスクが上回ってしまう。

一方、モノクローナル抗体や小分子阻害剤などの新しい生物学的製剤の多くは、疾病の進行を防ぐための利用を実現可能とすべく、従来の化学療法に比べ優れた安全性を有する。現在シドランスキー氏の研究チームでは、重篤な口腔前癌症患者を対象とした臨床試験でモノクローナル抗体であるセツキシマブ(アービタックス)を試験中である。

「たとえ進行した前癌症であったとしても、私たちは従来の化学療法薬を投与しようとは考えなかったでしょう。一方、抗体なら毒性は少ないですし、患者の生存への利益も高いので、反応しやすい病変の特定を試み、その時点で患者に薬剤の投与をしてみようと決めました」と述べた。

同研究室では、将来的に治療の応用と診断的適用の双方を兼ね備えた研究領域も考えている。その例として、近年では癌の進行を促す役目をするミトコンドリアDNAの変化を同定することに着目してきた

シドランスキー氏は、同研究室の若い研究員らを指導することに喜びを感じている。新しく斬新な観点から研究に疑問を投げかけてくれるのと、彼らの熱心な仕事の成果で同氏の信じることが実現しうるからである。

「癌研究は今信じられないほど躍動的な時期にあるのだと、私は若い研究者らに伝えています。今後5年で、主な種類の癌におけるすべてのヒトゲノムとエピゲノムは解読されると思っています」と語ってくれた。「いったん重要な経路さえ理解すれば、25年前にはほんのわずかな可能性しかないと思われたその方法で癌を診断し治療することができるようになるでしょう。」

—Sharon Reynolds

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遠藤 香利 訳

小宮 武文(NCI研究員・呼吸器内科)監修

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