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鉄調節タンパク質は乳癌の予後の強力な予測因子である/ウェイクフォレスト大学

  • 2010年8月25日


    ウェイクフォレスト大学
    2010年8月4日

    ウェイクフォレスト大学バプティスト医療センター(WFUBMC)の研究者らの新しい研究によると、一部の女性乳癌患者で侵襲性または毒性の高い治療を回避できる可能性があるという。

    研究者らは、低濃度のフェロポルチン(細胞から鉄を除去することが知られる唯一のタンパク質)が高悪性度で、再発性の癌と関連性があることを見出した。この知見は、女性乳癌患者のフェロポルチン濃度の検査が、癌の再発をより正確に予測するうえで今後医師の役に立つようになる可能性を示している。また、フェロポルチン濃度の高い一部の女性で化学療法のような侵襲性または毒性の高い治療を回避するために有用かもしれない。

    この研究は米国国立衛生研究所(NIH)の国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(National Institutes of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases:NIDDK)からの資金提供により実施され、Journal Science Translational Medicine誌の電子版に本日公開された。

    「乳癌既往歴のある女性において、将来の再発可能性の予測にフェロポルチンの発現が役立つかもしれません」と同医療センターの総合癌センターの責任者で、この論文の統括著者かつ本研究の共同責任研究者であるFrank M. Torti医師、公衆衛生学修士は述べた。研究結果はまた、フェロポルチン濃度が将来乳癌患者の治療法の決定に役立つ可能性を示した。

    「フェロポルチン濃度が高く、予後が良好な高リスク乳癌女性のグループがあります」とF. Torti氏は述べ、「われわれは将来これらの患者の治療法を調整できるようになり、患者は化学療法とそれに伴う副作用を回避できるでしょう。どの女性患者が過酷な治療を必要としないかを予測できることは大変有用です」

    知見は同センターでのF. Torti氏らによる一連の研究の成果である。

    鉄は乳癌内で変化し、その変化が癌の特性上重要であるという仮定に基づいて、研究者らはまず、採取したヒト乳癌細胞を検査した。正常な乳房の細胞に比べ癌細胞ではフェロポルチンの減少が顕著であることを認めた。

    「癌細胞内では多くの遺伝子とタンパク質に変化が見られます。ですから次に、癌細胞内のフェロポルチンの減少が直接癌の増殖に関与しているのか、単純に癌の結果なのかどうかを調査しました」とF. Torti氏は説明した。そのため、開始時にフェロポルチン濃度が極めて低値であった高悪性度の乳癌細胞株において、フェロポルチンを人為的に正常値まで近づけた。研究者らは、マウスを用いた実験でこれらの癌細胞で発生させた腫瘍の増殖を観察した。フェロポルチン濃度を正常に戻した腫瘍では、フェロポルチンを除去した細胞から発生させた腫瘍より、癌細胞の増殖が遅くなることを発見した。

    「その理由は単純です」とWFUBMCの生化学教授で同論文の共同責任研究者のSuzy V.Torti博士は述べ、次のように説明した。「フェロポルチンのない癌では、細胞から鉄を除去する能力が低下し、その結果、鉄が癌細胞内に蓄積します。癌細胞は鉄を必要とし、それにより腫瘍増殖が加速して、より悪性度が高まるとみられます。細胞内の鉄を除去するフェロポルチンを癌細胞に戻したことにより癌増殖促進物質が除去されたのです。われわれの知見はフェロポルチンが癌の特性に大きく関与していることを示唆しています」

    S. Torti氏は、「問題となっている鉄は癌の促進因子として作用しますが、研究は細胞内の鉄に焦点を当てており、食物に含まれる鉄や鉄補助剤を対象としていません。適切に制御されていれば、鉄は正常細胞も含めたすべての細胞の発生に不可欠で、患者は食物から摂取する鉄の量を変えるべきではありません」と指摘した。

    次に、研究者らはヒト乳癌組織内のフェロポルチン濃度を調べた。予想通り、フェロポルチン濃度は最も高悪性度の癌病変部では最も低値であり、培養細胞や採取した乳癌細胞だけでなく、女性癌患者の組織内でも同様の関連性があることを確認した。

    生命情報学の専門家Lance D. Miller博士を含むTorti氏らの研究チームは、次に4つの乳癌の大規模な研究データベースを調査し、ヒト乳癌のフェロポルチン濃度が長期的予後に関係しているかどうかを調べた。データには世界中の乳癌患者800人以上から得た、診断時の遺伝子発現情報と複数年の臨床的追跡情報が含まれた。

    「一様に、フェロポルチンが女性の乳癌再発傾向の強力な予測因子であることを突き止めました」と、F. Torti氏は述べた。さらに、「驚くべき予測因子です。このマーカーによって、腫瘍の大きさ、悪性度、リンパ節の状態、他の状況など、その他の因子から独立して予後の良好な女性と不良な女性を見分けることができます」「研究者らの次の目標は、この研究結果を様々な民族や人口統計学的背景を有する女性を含むより大きな集団に拡大することです」と付け加え、「われわれもがんセンターも研究結果が乳癌の基本的な生物学的理解を深めただけでなく、今後の患者の治療に直接役立つであろう発見をしたことに大変興奮しています」と述べた。

    本研究の他の共著者は以下の通りである。
    Zandra K. Pinnix, Ph.D., Wei Wang, Ph.D., Ralph D’Agostino, Jr., Ph.D., Tim Kute, Ph.D., Mark C. Willingham, M.D., Heather Hatcher, Ph.D., Lia Tesfay, M.S., Guangchao Sui, Ph.D., and Xiumin Di, M.S., all of WFUBMC.

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    芝原広子 訳
    金田澄子(薬学)監修
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    原文


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