2010/04/20号AACR特集◆特集記事「長期間の追跡調査によりラロキシフェンによる乳癌リスクの減少が確認」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/04/20号AACR特集◆特集記事「長期間の追跡調査によりラロキシフェンによる乳癌リスクの減少が確認」

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2010/04/20号AACR特集◆特集記事「長期間の追跡調査によりラロキシフェンによる乳癌リスクの減少が確認」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年4月20日号(Volume 7 / Number 8)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇
長期間の追跡調査によりラロキシフェンによる乳癌リスクの減少が確認

ラロキシフェン(エビスタ)およびタモキシフェンの両薬は乳癌リスクが高い女性において乳癌の発症を大幅に低下させ、さらにラロキシフェンの副作用はタモキシフェンより少なく軽いものであるとの大規模乳癌予防試験の長期追跡結果が、昨日、ワシントンD.C.で開催中の米国癌学会(AACR)年次総会で発表された。

NCIが支援をしたSTAR(Study of Tamoxifen and Raloxifen)試験のこの結果は、ほとんどの部分が2006年に発表された同試験の初期解析と一致するものであった。このときの結果により、最終的にFDAは乳癌リスクが高い閉経後の女性におけるリスク低減のためにラロキシフェンを承認した。同試験に参加した19,000人以上の女性をさらにほぼ3年間追跡したデータによると、ラロキシフェンは、浸潤性乳癌および非浸潤性乳癌に対する予防効果の面ではタモキシフェンより多少落ちるが、タモキシフェンより明らかに安全で子宮内膜癌などの稀な副作用リスクも大幅に減少した。

最新のSTAR試験の結果および選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)として知られる薬剤であるタモキシフェンとラロキシフェンの乳癌予防の全データは、「女性たちにとってよいニュース」であると、同試験を率いたNCIの共同研究グループであるNational Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(全米乳癌・大腸癌術後プロジェクト)のDr. D. Lawrence Wickerham氏は述べた。彼は、「乳癌リスクが高い閉経後女性には、今ではそのリスクを減らす2つの選択肢があります」と述べた。

「これらのデータは、プライマリ・ケア(一般開業医による初期診療)に携わる人々にはとりわけよいニュースだと思います」と、ダナ・ファーバー癌研究所の『癌リスクと予防プログラム』の理事長であるDr. Judy Garber氏は記者会見で述べた。特に骨粗しょう症の予防と治療(これもFDAによって承認されている)にラロキシフェンを頻繁に投与し痛みを和らげていることを考慮すると、この結果は、「(乳癌リスク低減のために)プライマリ・ケア医がもっと頻繁にラロキシフェンについて話し合うことを促す」はずであるとGarber氏は述べた。

Wickerham氏は、化学予防とも呼ばれる癌予防や癌リスク低減のために薬を服用する考えは、説得するのが難しいことだと認めた。彼は、「化学予防はまだ初期段階です」と述べ、「STAR試験のこれらのデータは、心臓病予防などの分野で行われているのと同じレベルまで化学予防を引き上げるために重要なステップです」と続けた。心臓病予防分野では、高血圧や脂質異常といった心臓病の前段階の治療のために薬物療法が広く用いられている。

5年間タモキシフェンを服用した乳癌リスクの高い女性は、プラセボを服用した同様のリスク女性より50%近く乳癌リスクが減少したことを示したBreast Cancer Prevention Trial(BCPT)の結果をうけて、タモキシフェンは1998年より乳癌リスク低減のための使用が認められている。しかしタモキシフェンは癌予防薬としての人気がない。タモキシフェンの服用が少ないのは、子宮内膜癌や危険な血栓のリスク増加といった潜在的な副作用に対する心配が原因となっている。

しかし、タモキシフェンやラロキシフェンの潜在的リスクは誇張されてきていると、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの乳腺腫瘍内科学部門の学部長であるDr. Gabriel Hortobagyi氏は記者会見で述べた。例えば、BCPTではタモキシフェンを服用した女性の子宮内膜癌発症リスクの増加は有意ではあったが、そのリスクは1%にも満たないものであった。

タモキシフェンと同様に、ラロキシフェンも臨床試験において乳癌リスクの減少を示唆している。その結果、STAR試験は、(広く用いられているNCIの乳癌リスク評価ツールに基づき)乳癌リスクが上昇した閉経後女性に対して大接戦なこの2剤をテストするために行われた。STAR試験に参加した女性は、平均して乳癌の生涯リスクが15%高かった。参加者は、5年間毎日どちらかの薬剤を服用するように無作為に割り付けられた。

追跡中央値47カ月の最初のSTAR試験解析の発表は、両剤は浸潤性乳癌のリスク低下において同等の効果であった。しかし最新の解析では、ラロキシフェンの効果は時間の経過とともに低下することが示唆されている。追跡中央値81カ月では、ラロキシフェンの浸潤性乳癌に対するリスクの低下は、タモキシフェンの効果のおよそ76%であった。非浸潤性乳管癌(DCIS)や上皮内小葉癌として知られる状態を含む非浸潤性乳癌に関しては、初期解析では、タモキシフェンはラロキシフェンよりわずかに効果的であった。この結果はより長期の追跡にも当てはまったが、その差は縮まり、ラロキシフェンはタモキシフェンの効果のおよそ78%であった。

副作用の面ではラロキシフェンは変わらず優れており、タモキシフェンを服用している女性と比較して、子宮内膜癌のリスクは45%少なく、深刻な血栓のリスクは25%低かった。

この知見は、「これらの薬剤の長期間のベネフィットを支えるエビデンス」を増大させると、ペンシルバニア大学アブラムソンがんセンター(フィラデルフィア市)の癌コントロールプログラムの共同理事長であるDr. Katrina Armstrong氏は述べた。今必要なものは、「(ラロキシフェンやタモキシフェンを)用いる障壁を理解するための積極的な取り組みと、これらの薬剤が適応であり選択肢となる女性を医療者が識別するのを助ける臨床的意思決定支援ツールの実施です」と、Armstrong氏は続けた。(捕捉記事参照)

要するに、医療従事者、すなわちプライマリ・ケア医がこれらの決定を導くために、「リスクの層別化を行い,コレステロールのようなバイオマーカー無しに予防薬を処方することを安心しておこなう」ことに到達することであるとArmstrong氏は続けた。

「タモキシフェンが乳癌リスク低減のためにFDAの承認を得て12年後経った今でさえ」、ラロキシフェンやタモキシフェンを服用することについて、患者と「いまだそのような会話をするのを(多くの臨床医は)敬遠しています」と、クリーブランド・クリニック乳房センターのハイリスク・クリニックの共同理事長であるDr. Katherine Lee氏は述べた。「私は毎日高リスクである女性を診察しています。つまり彼女たちは私から化学予防の説明を受け、そしてタモキシフェンやラロキシフェンがリスクを下げるための現在の選択肢であることを聞かされます」とLee氏は述べた。

こうした会話が敬遠される理由の一つは、臨床医と患者の両者の側で副作用の心配が再燃することであるとLee氏は同意した。しかし、血圧やコレステロールの薬物療法と癌予防の薬物療法にはもう1つ決定的な違いがあると彼女は強調した。つまり、臨床医と患者の両者にとって経過観察が困難なエンドポイントである。「医師は数字を追いかけることを好みます」とSTAR試験の責任医師の1人であるLee氏は述べた。「ラロキシフェンやタモキシフェンを服用しても変化する数字がありません。患者のリスクが改善しているかどうかを報告することができません。このことがさらに事態を難しくしているのです」。

— Carmen Phillips

臨床医の意思決定支援ツールペンシルバニア大学アブラムソンがんセンターでは,臨床医が患者と乳癌の化学予防の選択肢の話し合いを補助するために、Armstrong氏らが、プライマリ・ケア診療(※一般開業医による初期診療)を広めるための意思決定支援ツールを開発している。これらのツールによって、臨床医が家族の病歴や生殖リスクといった健康上のリスク評価から情報を入手し、中央の電子医療記録システムに組み込んである意思決定支援ツールにつなぐことができるようになる。この試みは臨床段階で試験的に行われており、来年にはより広範囲に展開する予定である。希望は、「どの人がラロキシフェンあるいはタモキシフェンから最大の効果が得られる女性かを判断する核心が得られることです。つまりその人たちは絶対的利益が(罹患リスクの)閾値をはるかに超えており、薬物療法を提供されなければなりません」とArmstrong氏は述べた。

もしこのような取り組みにより乳癌の死亡率減少を示すことが出来れば、「これは、医療者が患者の本当の個別化をさらに進めていく上で大きな推進力となると思います」。

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Nogawa 訳
原 文堅 (乳腺腫瘍医/四国がんセンター)監修

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