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画期的な方法により浸潤性乳癌リスクを予測/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

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画期的な方法により浸潤性乳癌リスクを予測/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

カリフォルニア大学サンフランシスコ校
2010年4月30日

非浸潤性乳癌のうち最も多い非浸潤性乳管癌(DCIS)について、後年浸潤性腫瘍を発現するリスクがあるかを予測する方法を専門家らが初めて見出した。[pagebreak]これによりDCIS患者は治療の選択がより広くなるだろう、と同専門家らは述べている。

「患者はより多くの情報を持つようになり、自己の浸潤性癌発現リスクをもっと知ることができるのです」と主著者であるKarla Kerlikowske博士は述べた。「これにより、さらに個人に特化した治療への取り組みがすすむようになるでしょう。DCIS患者のうち44%もの患者はその後の治療を要しない場合があり、代わりに経過観察に頼ることになります」

本研究はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)とサンフランシスコ退役軍人局医療センター(SFVAMC)の研究者らの主導によるもので、Journal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載されている。

本研究の著者らは、DCISと診断され乳房部分切除術を受けた40歳以上の患者1,162人の病歴について追跡調査を行った。著者らの所見によれば、DCIS診断後8年以内の浸潤性癌発現リスクを予測する要因は2つある。それは、どの方法によって発見されたかということと、数種のバイオマーカーが発現しているかどうかである。所見では、胸のしこりでDCISと診断された場合のほうがマンモグラフィーでDCISと診断された場合よりも、その後の浸潤性癌発現の高リスクの予測に有用であることが示された。

また本研究では初回治療時のDCIS組織から測定されたバイオマーカーのさまざま組合せは、浸潤性癌やDCISの多様なレベルのリスクに関連していることが明らかになった。このようなバイオマーカーには、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、Ki67抗原、p53、p16、上皮成長因子受容体-2、シクロオキシゲナーゼ-2などがある。p16、シクロオキシゲナーゼ-2、Ki67の数値が高いと、最初のDCIS診断後に浸潤性癌を発現する傾向がより強かった。

この研究により、乳房部分切除術のみを受けたDCIS患者はその後、浸潤性癌やDCISを発現するのか、それとも腫瘍の発現リスクは極めて低いのかを、医師らは予測できるようになるであろう、とKerlikowske氏(UCSF Helen Diller Family 総合がんセンターの医学、疫学、生物統計学教授で、SFVAMCのWomen Veteran’s Comprehensive Health Centerの共同所長)は述べている。

Kerlikowske氏によれば、専門家らは20年以上前からDCISの問題解決に取り組んでいるが、現在までのところ患者をリスクグループごとに分類することはできていない。

「患者を3つのグループに分類できるということは、かつてなかったことです」と同氏は言う。「以前は、腫瘍発現の一定のリスクがあると患者に伝えていましたが、それが浸潤性癌リスクか、DCISリスクなのか区別できず、腫瘍発現リスクは全て1つのリスクグループにまとめられていたのです」

本データにより、8年先までは予測できる明確なマーカーが分かっている、と本試験の試験責任医師の一人であるThea D. Tlsty氏は述べている。同氏は病理学教授であり、UCSF Helen Diller Family 総合がんセンターでの細胞周期およびシグナル伝達プログラムの主導者である。

「どの前癌が潜伏状態にあり、どれが浸潤性癌になるのか予測可能になるこの初期段階は、期待できる心強いものです」とTlsty氏は言う。「リスクが最も低い患者グループと浸潤性癌を発現する高リスクグループを、初めて識別したのです。これは大きな前進です」

DCISは死亡に至ることはほとんどない乳癌である。乳房部分切除術のみを受けた患者100人中約11人は、最初のDCIS診断後8年以内に浸潤性癌を発現し、診断後10年以内に乳癌で死亡する患者は全体の1~2%のみである。しかしDCIS診断を受けた患者は従来、自己のリスクについての認識は不正確なものであり、その結果かなり積極的な治療法を選択していた、とTlsty氏は言う。

現在、患者の約35%は乳房部分切除を、約25%は乳房切除術を、3~5%は積極的な観察療法のみを、そして残りの患者は乳房部分切除と、放射線またはホルモン治療のいずれか、またはその両方の併用を選択している。

「患者は浸潤性癌発現の懸念の度合いに応じて治療を選択します」とKerlikowske氏は述べる。「DCISは非浸潤性で死に至ることはありません。患者が真に懸念するのは浸潤性癌の発現や癌の転移です」

本研究によれば、最も低いリスクの患者グループが浸潤性癌を発現する可能性は5年でわずか2%、8年で4%である。

「今や浸潤性癌を発現する最高リスクグループを識別することが可能なのです」とTlty氏は言う。「触診で分かるDCISやp16、シクロオキシゲナーゼ-2、Ki67のタンパク質発現レベルといった要因が、後年浸潤性癌を発現したDICS患者の約50%にみられます。残りの患者のリスクを分類する分子マーカーについては、共同著者であるHal Berman博士とMona Gauthier氏(ともにカナダ、トロント州のCampbell Family乳癌調査研究所教職員)の協力を得て、識別しているところです」

他の共同著者らは以下のとおりである。
Dr. Fred Waldman; Dr. Henry Sanchez; Karen Chew and Dr. Britt-Marie Ljung, all of the UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center; Cynthia Jimenez, medical student at UCSF, and Annette Molinaro, Yale University.

本研究は、NCIのUCSF Breast Cancer SPORE Project(Specialized Program of Research Interest)およびCalifornia Breast Cancer Research Programから資金援助を受けた。

UCSFは先進的生物医学研究、生命科学と医療専門職の大学院教育、優れた医療看護を通じて世界の健康を推進する一流大学である。

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柴田慶子 訳
原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)監修
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原文


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