コレステロール降下剤に幹細胞移植の致死的な合併症も防ぐ可能性/フレッドハッチンソンがん研究センター | 海外がん医療情報リファレンス

コレステロール降下剤に幹細胞移植の致死的な合併症も防ぐ可能性/フレッドハッチンソンがん研究センター

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コレステロール降下剤に幹細胞移植の致死的な合併症も防ぐ可能性/フレッドハッチンソンがん研究センター


フレッドハッチンソンがん研究センター
2009年12月4日

米国で最も汎用されている処方薬のひとつとして知られるスタチンは、コレステロール低下薬である。フレッドハッチンソンがん研究センターの今回の新しい研究によると、スタチンが、癌の救命治療である幹細胞移植を実施する際、患者が発症する最も重大な合併症のひとつである移植片対宿主病(GVHD)を防ぐ可能性があることを示唆した。本研究はBlood誌の12月4日版に報告された。[pagebreak]2001年から2007年の間に抗原適合性のある兄弟姉妹から幹細胞提供を受け造血幹細胞移植を行った患者567人に対するレトロスペクティブ研究において、幹細胞の提供時までスタチンを服用していたドナーから移植を受けた患者は重症急性GVHDを発症しなかった。本研究では約15%のドナーが移植時にスタチンを服用していた。

本研究の統括著者でありハッチンソンがん研究センター臨床研究部門の研究員であるMarco Mielcarek医師によると、通常10~15%の移植患者が重症急性GVHDを発症することが予想された。

本研究では、患者のみスタチンを服用していた場合には重症急性GVHDの回避はみられなかった。患者およびドナーともスタチンを服用していた場合、他の群に比較して重症急性GVHDをより強く抑制する傾向か認められたが、症例が少なく統計的有意差は無かった。。

また、スタチン服用ドナーから提供を受けシクロスポリンを中心とした移植後免疫抑制療法を実施した患者にのみ重症GVHDの抑制効果が認められた。スタチン服用ドナーから提供を受けても同種薬剤であるタクロリムスによる免疫抑制を行った患者には同様のGVHD抑制はみられなかった。また、スタチンによる重症GVHD抑制は、消化管で最も強く起こっていることが分かった。

GVHDはドナーが血縁者、あるいは非血縁者であっても、血液幹細胞移植を受けた患者にはよくみられる有害作用である。移植された細胞が宿主の組織を異物だとみなし、組織を攻撃しておこる。その結果、皮疹、下痢、肝炎などさまざまな問題が生じる。急性GVHDは移植後始めの3カ月以内にしばしばみられ重症の場合には死亡率は50%と高い。死亡率が高くなるのは、急性GVHDの治療のためにさらに免疫抑制剤を投与することが必要となり、それが原因で二次感染などの合併症カスケードを引き起こすからである。

Mielcarek医師と、ハッチンソンがんセンター臨床研究科博士研究員であり筆頭著者であるMarcello Rotta医師、その共同研究者らは、過去の研究においてスタチンが抗炎症作用を示し関節リウマチなどの他の炎症性疾患のコントロールを改善したことから、今回の解析を行った。最近の幹細胞移植マウスのモデルを用いた研究によるとドナーとレシピエントマウスに移植前にスタチンを投与しておいたところ致死的急性GVHDの抑制がみられた。

スタチンのGVHD予防効果のはっきりしたメカニズムはまだ分かっていない。Mielcarek医師は次のように述べた。
「文献の中で、どのようにしてスタチンが免疫機能に影響を与えるのかについて、可能性のある多数のメカニズムが考察されています。ひとつは細胞接着、つまりGVHDの原因となるドナーのT細胞がどのように特定の標的組織に侵入しうるかは細胞の接着性が関係しているということ。もうひとつはどのようにスタチンがT細胞の細胞内シグナル伝達に介入しているかということです。スタチンはおそらくアロ抗原反応性T細胞の活性を弱めGVHDの原因となる炎症カスケード反応の開始を防いでいると思われます」

本研究は米国国立衛生研究所(NIH)とダナ財団から資金提供を受けた。

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武内優子 訳
吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院)監修
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原文


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