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小児癌経験者は寿命が短くなる可能性があることが明らかに/ダナファーバー癌研究所

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小児癌経験者は寿命が短くなる可能性があることが明らかに/ダナファーバー癌研究所

最新の治療や慎重なモニタリングを行うことで寿命延長の可能性がある
ダナファーバー癌研究所
2010年4月5日

今日、かつてないほど多くの小児癌経験者が生存できるようになっているが、ダナファーバー癌研究所とハーバード公衆衛生大学院の研究によれば、1970年代や80年代に癌を克服した若年患者の寿命は、一般集団よりも平均して10年短くなる可能性がある、とのことである。[pagebreak]癌の種類にもよるが、小児癌経験者の推定損失余命は、4年から17年以上まで幅があることが、4月6日付けのAnnals of Internal Medicine誌で報告されている。早期死亡の理由として、最初に診断された癌の再発、薬剤や放射線治療による新たな癌の発症、癌治療による晩期合併症などが挙げられる。

本研究では、コンピュータモデルを用いて、腎臓癌、骨肉腫、白血病、脳腫瘍などの闘病から生還した小児癌経験者の生涯死亡率を初めて概算した。年間約10,000人の小児・青年が癌と診断されているが、5年生存率は全体でおよそ80%まで上昇している。

ハーバード公衆衛生大学(HSPH)医学判断学のリサーチフェローであり本報告の筆頭著者であるJennifer Yeh医学博士は、平均損失余命が10年であると推定したこの分析結果に驚いたと述べている。「最初に診断を受けた癌を幸運にも克服した患者らにとって、こういった無視できないリスクがさらにつきまとうことは、彼らを落胆させるものなのです」と、博士は述べている。

しかし、ダナファーバー癌研究所とボストン小児病院の小児腫瘍医の臨床部長で本報告の統括著者であるLisa Diller医師は、治療における最近の変遷より毒性を減らした「標的」療法の増加などにより、長期的転帰が将来さらに良好なものとなる可能性があると述べている。

「この分析研究では、1970年代や80年代当時に小児患者らがどのような治療を受けたかを基にしています。より最近の患者集団からのデータが出た時に、小児腫瘍医が行ってきた治療変遷の結果として平均余命が向上していることを期待しています」と、ダナファーバー癌研究所のPerini Family Survivorship Centerを統括するDiller医師は述べている。

たとえば、小児腫瘍医は癌をコントロールするため効果的な治療を確実に行う一方で、治療法を微妙に調節し正常組織や臓器が傷つくのを最小にしてきている。放射線はより厳密に癌部位に集中して照射されるようになり、腫瘍医は特定の臓器に損傷を与えかねない化学療法剤の使用を避けている。また抗癌剤による臓器への毒性を防ぐ目的で予防薬を併用している小児患者もいる。

Yeh博士によれば、若年患者にとって癌を克服後成人向け治療のため切り替える時に、家庭医との連携がうまくいっていないことが多いという。「多くの場合、家庭医は小児癌経験者の過去の治療歴や、患者らが直面する重篤な合併症のリスクがより高いことについてなじみがありません」と、博士は述べている。

Diller医師は、ほとんどの医師は小児癌の既往歴のある患者を診察したことがないため、再発や新たな癌を示唆する症状について警戒していない可能性があると付け加えている。例として、胸やけのような頻度の高い訴えは、癌の既往歴がなければそれほど心配するほどのものとは通常ならないが、小児癌経験者にとっては、胃癌を示唆する症状の1つとして詳しく調べる必要があることを挙げている。

「小児癌経験者を診る家庭医に、それまでの治療歴や長期晩期合併症の全てを理解することを期待するのは合理的ではありません。小児腫瘍医として、私たちは、成人期のプライマリケアに移行する患者については、治療に関する個別化した情報を準備し、彼らのための癌治療後のケアプランを作成しなければなりません」Diller医師はこう述べている。

小児癌やその治療による疾病や死亡のさらなるリスクについてこれまで研究されているが、その知見が平均余命の推定に結びついてはいなかった、と研究者らは述べている。

この新しい研究は、小児癌経験者研究(Childhood Cancer Survivor Study:CCSS)において収集され、1970年から1986年までに癌と診断された21歳以下で少なくとも5年生存した患者個人のデータを利用した。これまで20~30年間しか患者らを追跡調査していないため、Yeh博士によると、生存期間のアウトカムはまだわかっていない。

HSPHとハーバード大学の研究者らは、小児癌経験者においてCCSSで推定された超過死亡リスク値を推定平均余命に変換する数学シミュレーションモデルを使用し、一般集団と比較した。推定値のひとつは次のようであった。

全種類の癌の場合を平均すると、平均余命は10.4年(17.1%)短くなり、その中でも腎臓癌での4.0年(6.0%)から、脳腫瘍と骨肉腫で17.8年(28.0%)という幅があった。

4人に1人の小児癌経験者が最初に診断された癌の再発、または治療結果による新たな癌の発症で死亡することになり、20人のうち1人が癌関連以外の理由(癌治療の結果として起こる心臓や呼吸器系への障害など)で死亡となる。

早期死亡のリスクは、診断・治療から最初の20~30年の間に最も高く、以降は横ばい状態である。「これら結果から、小児癌の治療後、最初の35年のうちに発症する晩期合併症に関連した疾患を認識して治療を行えば、恐らく寿命を延長できることが示唆されます」と、本報告の著者らは述べている。

CCSSにおいて近年治療を受けた患者では、過去に治療を受けた患者よりも状態が良く、癌療法の変遷がより長い寿命に繋がるという希望を与えている。

2007年、CCSSは1987年から1999年の間に治療を受けた小児癌経験者群を新たに募り始めた。その結果が得られれば、癌治療を提供するうえで改善された方法が、小児癌経験者の平均余命に与える長期の累積的影響をどの程度減少させうるのか、著者らは推定する予定である。

「本研究から、総合的な『癌治療後ケア(サバイバーシップ・ケア)』の可能性が浮き彫りとなりました。家庭医の適切なスクリーニングや認識を深めることも含め、このケアで小児癌罹患歴から起こる致死リスクが減少することを望んでいます」と、Yeh博士は述べている。

他の供著者は以下の通りである。
Larissa Nekhludov of Harvard Medical School, Sue J. Goldie of HSPH Center for Health Decision Science, and Ann C. Mertens of Emory University
本研究は米国国立癌研究所による資金援助を受けた。

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山下裕子 訳
北村 裕太(農学/医学生)監修
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原文


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