2009/01/13号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/01/13号◆癌研究ハイライト

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2009/01/13号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年1月13日号(Volume 6 / Number 1)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・有効性が実証された大腸癌リスク評価ツール、オンラインで利用可能に
・大腸内視鏡検査によって左側大腸癌の死亡率は減少するが、右側大腸癌の死亡率は減少しない
・PLCOの最新情報は前立腺癌検診陽性的中率が経時的に低下すると示唆
・局所進行性前立腺癌に対する放射線療法とホルモン療法は生存率を改善
・なぜ白金製剤は耳組織に有毒なのか

有効性が実証された大腸癌リスク評価ツール、オンラインで利用可能に

米国立癌研究所(NCI)の研究者らは先頃、大腸癌(CRC;結腸直腸癌)の絶対リスク評価モデルの最初のひとつを開発した。これは既知のCRC遺伝素因を持たない50~85歳の人々を対象としており、2つの大規模症例対照研究データを利用して開発されたもので、NIH-AARP Diet Health Study(米国立衛生研究所-全米退職者協会による「食生活と健康に関する研究」)の調査対象集団において、その有効性が実証された。本ツールは、生活様式、大腸検査歴、および大腸癌家族歴に関する質問の回答を用いて、個人の5年、10年、および生涯に渡ってのCRCの発症リスクを算出する。このモデルの開発および有効性を実証する論文が2008年12月29日発行のJournal of Clinical Oncology誌に発表された。さらに、医師が利用できるよう、同モデルを基に構築したオンラインリスク評価ツールが次のURLで公開されている。http://www.cancer.gov/ColorectalCancerRisk/

「この大腸癌リスク評価モデルは、医師や患者が、大腸癌のスクリーニングやその他の予防戦略を決定する際、有用な情報を入手するための新たなツールとなります。また政策立案者が、現在および将来における大腸癌の予防法の有用性を評価するのに役立つでしょう」と本研究の筆頭著者Dr. Andrew Freedman氏は、論文発表に伴うプレスリリースで述べた。

NCIの癌制御・集団科学部門のFreedman氏および癌免疫・遺伝学部門(DCEG)のDr. Ruth Pfeiffer氏が率いる研究チームは、2つの集団ベースの症例対照研究(1つは結腸癌、もう1つは直腸癌に関する研究)のデータ、およびSEERデータベースを基に算出した癌罹患率を用いてモデルを開発した。いずれの症例対照研究とも参加者の大多数が50歳以上の非ヒスパニック系白人男性および女性であったため、開発されたモデルはこの集団に限定された。

大腸検査歴、体格指数(BMI)、大腸癌の家族歴など既知の危険因子を基に結腸から直腸までの3つの異なる部位において癌と診断される相対リスクを決定した。さらに彼らは、患者の大腸癌リスク評価のための簡単な質問票を作成し、モデルに使用された情報を容易に入手できるようにした。

このモデルの性能を評価するために、DCEGのDr. Yikyung Park氏らはモデルを使用して、NIH-AARP研究の対象集団(男性155,345人、女性108,057人)における大腸癌症例数を推定した。その後、これらの推定結果を同コホートの1995年~2003年の間に大腸癌と診断された症例数と比較した結果、彼らの開発したモデルは、精度が極めて高いことが判明した。大腸癌の推定症例数と観察症例数の比率は、男性では0.99、女性では1.05であった。

現在研究者たちは、他の人種や民族にも対応できるよう、SEERのデータを活用し、このオンラインリスク評価ツールの更新作業を行っている。

大腸内視鏡検査によって左側大腸癌の死亡率は減少するが、右側大腸癌の死亡率は減少しない

2008年12月15日発行のAnnals of Internal Medicine誌に発表された、トロント大学の研究者らによって実施された大規模症例対照研究の結果によると、一度でも大腸内視鏡検査を受けたことのある患者は、全く受けたことのない患者と比較すると、左側大腸(直腸に最も近い結腸の部位)に発生する大腸癌(CRC;結腸直腸癌)による死亡が有意に少なかった。しかし、右側大腸癌の死亡率に関しては、大腸内視鏡検査により低下することはなかったということが明らかになった。

研究者らは、オンタリオ州のデータベースを利用し、CRCで死亡した患者10,292人と、対照群の非CRC者51,460人を比較した。年齢、性別、収入、および居住地区別に、各患者を対照者5人と比較した。患者が死亡した時点では、対照者は全員生存していた。

データベースの記録からは、大腸内視鏡検査がスクリーニングを目的としたものなのか、診断を目的としたものなのか識別することができないため、CRCの診断を受けた日からさかのぼって6カ月間以内のすべての大腸内視鏡検査を除外した。

症例患者の7%および対照群のほぼ10%が大腸内視鏡を受けていた。「全大腸(途中で中止された検査を含めても)内視鏡検査を受けた症例患者は、対照群と比べ少なかった。」と本研究の著者らは語った。完全であれ不完全であれ大腸内視鏡検査により、左側大腸癌による死亡は減少したが、右側大腸癌は変わらなかった。

右側大腸癌に対し予防効果を認められない理由は不明であるが、右側大腸における不十分な大腸検査の前処置あるいは大腸内視鏡検査技術の問題、または右側大腸に発生する癌の病態や自然史などの差異が考えられると、著者らは説明している。

これらの研究結果では「左側大腸癌の死亡リスクの減少は約60~70%であるものの右側大腸癌に対する効果はほとんど認められないという事実が明らかとなったようだ」とChapel Hillにあるノースカロライナ大学のDr. David Ransohoff氏は付随論説で述べた。

PLCOの最新情報は前立腺癌検診陽性的中率が経時的に低下すると示唆

NCIのPLCO試験から得られた前立腺癌検診データに関する最新情報によると、介入群に組み入れられた38,000人以上の男性における検診陽性の数は、試験期間4年間を通じて一定を保っていた。しかし、検診の陽性的中率(真の陽性と偽陽性の和に対する真の陽性の割合)は、経時的に低下している。全文はBritish Journal of Urology International誌12月号に掲載されている。

初回検診での陽性的中率(17.9%)から、それ以降年1回の検診での陽性的中率(10.4~12.3%)に低下した原因としては、初回検診で多くの癌が発見され、前立腺特異抗原(PSA)高値で生検陰性であった男性らが、その後の検診で確認するべく残されたためであるとしている。初回検査時に確認された癌は、その後の検診で確認された癌より進行している割合が高く(5.8%対2.9%)、グリーソンスコアは7~10である割合が高かった(34%対25.5%)。

PLCOは、前立腺癌検診が生命を救うかどうかを示すことが期待されている現在進行中の2つの主要試験の1つである。もう1つの試験は欧州前立腺癌検診ランダム化試験(ERSPC;European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer)であり、これは参加者の検診頻度が少なく、2年および4年間隔で行われている。付随論評として、ERSPCのDr. Fritz H. Schröder氏は悪性度の高い前立腺癌の問題にふれ、両試験のデータより「検診の間隔を問わず、ある程度の癌が検診で見逃されていることが示唆されている」と述べた。

局所進行性前立腺癌に対する放射線療法とホルモン療法は生存率を改善

12月15日付けのLancet誌電子版で発表されたランダム化臨床試験では、局所進行性前立腺癌に対するホルモン療法(HT)単独と、HTおよび放射線療法(RT)について試験を行い、この患者群におけるRTおよびHTの併用はHT単独より有効であるという一連のエビデンスにさらなる論拠を加えた。

スウェーデンのウメア大学のDr. Abders Widmark氏が主導する2つの欧州研究グループは、局所進行性前立腺癌(局所組織へ浸潤しているが、リンパ節や遠隔部位へは転移していない癌)を有する男性875人をホルモン療法単独群、またはホルモン療法と標準三次元原体放射線療法群のいずれかに割り付けた。ホルモン療法は、ロイプロレリン(米国ではロイプロリド)の3カ月投与および病勢進行または死亡までのフルタミド投与からなる。フルタミド服用中に忍容しがたい副作用が発現した場合は、本剤をビカルタミドに切り換えた。

中央値7.6年の追跡調査後、前立腺癌で死亡した男性はホルモン療法群では18%であったのに対し、ホルモン療法および放射線療法群では8.5%であった。前立腺癌の10年死亡率はホルモン療法群で23.9%、ホルモン療法および放射線療法群で11.9%であった。

フォローアップの通院で、ホルモン療法および放射線療法群で「排尿および性機能に関連する中等度~重度の後期影響が若干ではあるが有意に増加した」と著者らは述べている。しかし、治療4年後に行われた調査ではホルモン療法および放射線療法群で社会的機能が低下したことを除けば、全般的健康度およびQOLにおいて有意な差は報告されなかった。

なぜ白金製剤は耳組織に有毒なのか

聴器毒性(音を検知する内耳細胞の損傷)は、白金をベースとする化学療法薬の副作用として知られている。この損傷は、オキサリプラチンよりシスプラチンでかなり多く認められるが、この差の理由は不明である。スウェーデンの研究者らは、モルモットの内耳における両剤の活性を比較することにより、考えられる説明について試験を行った。その解析内容は、Journal of the National Cancer Institute誌12月30日号に掲載されている。

シスプラチンおよびオキサリプラチンはDNAに結合して遺伝物質と結びつき、適切に複製できなくなるため細胞分裂が妨げられることによって作用すると考えられている。しかし、内耳細胞はすでに分化しており、このような機序に対する感受性は低いため、研究者らは、両剤は活性酸素種またはフリーラジカルを発生させることで核以外にも影響を及ぼすとの仮説を立てた。

研究者らは大腸癌細胞を培養し、各薬剤がどの程度細胞死(アポトーシス)を誘発するか測定したところ、これらの細胞に細胞死を引き起こすためにシスプラチンはオキサリプラチンよりも有意にフリーラジカル依存性であることを見出した。モルモットでは、オキサリプラチンよりシスプラチン曝露後のほうが多くのフリーラジカル誘発性アポトーシスの徴候がうずまき管(蝸牛)で認められた。

両剤はうずまき管から脳への音信号の伝達にも著明な影響を示し、オキサリプラチンと比較してシスプラチンは振動を検知する有毛細胞により多くの損傷をもたらし、最終的には難聴を引き起こしたが、同量のオキサリプラチンへの曝露では難聴はおきなかった。オキサリプラチンよりシスプラチンのほうが内耳に吸収されやすく、長時間組織に残留した。

研究者らは、彼らの出した結論の主要な観点はヒトにおいても有効であると確信しているが、「ヒトのうずまき管にも(モルモットと)必ずしも同じ薬物動態があるかどうかは明らかでない」と注意を促している。

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Yuko Watanabe、oyoyo 訳

鵜川 邦夫 (消化器科)、榎本 裕(泌尿器科) 監修

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