2009/01/27号◆クローズアップ「クラゲ遺伝子の先に見えてきた癌のイメージングの研究」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/01/27号◆クローズアップ「クラゲ遺伝子の先に見えてきた癌のイメージングの研究」

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2009/01/27号◆クローズアップ「クラゲ遺伝子の先に見えてきた癌のイメージングの研究」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年1月27日号(Volume 6 / Number 2)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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クローズアップ

クラゲ遺伝子の先に見えてきた癌のイメージングの研究

クラゲは海流に乗って漂う生物である。しかし、これら生物は、癌細胞を含む多くの種類の細胞におけるタンパク質の挙動および相互作用に関して、研究者らに革新的な追跡法をもたらしてくれる。

この緑色蛍光タンパク質(GFP)は昨年度のノーベル賞によって認識されるようになった。3人の科学者がオワンクラゲ(Aequorea Victoria)中の緑色蛍光タンパク質を発見し、それを強力な研究用のツールの一つに変えたことでノーベル賞を受賞した。マウスおよびその他の動物において、GFPの発光によって、癌の拡がりなどといった長い間視覚的にとらえることができなかった生物学的な様相が照らし出された、とノーベル賞委員会は述べた。

GFPの素晴らしい点は、このタンパク質がクラゲの体外でも発光するということである。通常の実験では、GFPを別のタンパク質と遺伝子工学的に結合させる。そうして、結合させたタンパク質が活性化された際にGFPも活性化し、適切な光の下でタンパク質の活性化を示す光を発する。

GFPが1962年に初めて発見されて以来、さらに多くの種類および色が自然界で発見されたり、研究室において開発されている。最近の研究によって観察可能な対象が拡がり、この技術が臨床において強力なイメージング・ツールとなるであろうことが示された。

癌の拡がりを観察する

従来まで研究者らがGFPを使用してマウスの癌細胞の拡がりを観察できるのは数日間であった。しかし、この新たな手法によって観察期間は数週間まで延長されるようになる。この手法は、珊瑚由来のGFP類似タンパク質を産生するように操作された腫瘍細胞に、特殊な光を当てるものである。この光を当てると、腫瘍細胞は緑から赤に色が変わるため、細胞の動きを追跡することが可能となる。

デモンストレーションとして、アルバート・アインシュタイン医科大学のGruss Lipperバイオフォトニクスセンター (GLBC)の研究者らは、同一の乳腺腫瘍から採取された2つの群の細胞を数週間に渡り追跡した。研究者らが観察時に容易に細胞を見つけることができるように、この研究ではマウスの乳腺に「イメージング・ウィンドウ(可視化ウィンドウ)」が挿入された。

「今やわれわれは腫瘍細胞の色を緑から赤に変えることによって光学的にマークすることが可能であり、それらの細胞が体内でたどる運命を描けるようになった」と同僚であるDr. Jeff Segall氏とともに本研究を主導したGLBCのDr. John Condeelis氏は述べた。彼らの研究結果はNature Methods誌2008年12月号に掲載された。

本研究によって、血管付近の腫瘍細胞はその他の腫瘍細胞と比較した場合、より肺へ拡がり易いことが示された。これは癌の拡がりにおいて局所的環境が重要であることを示唆するものである。「同じ腫瘍でも、部位によって転移の形式が異なっていた。」と筆頭著者であり、現在オランダのヒュブレヒト研究所にいるDr. Jacco van Rheenen氏は述べた。

イメージングプローブ

GFPツールボックスが大きくなる一方で、この技術には、タンパク質が産生される前にゲノム中にコードされる必要があるという制限がある。しかし、癌患者に使用する場合には、蛍光化合物はおそらく注射または経口投与される必要がある。NCIおよび日本の研究者らによる新しい研究は、投与された化合物がどのように作用するかを示唆している。

この研究チームは、腫瘍特異的な抗体に付着し、抗体が生きた癌細胞の中へ取り込まれた場合にのみ発光する蛍光化合物を開発した。マウスで、乳癌治療薬であるトラスツズマブ(ハーセプチン)を使用してこの合成物をテストしたとき、”プローブ”はほとんど常にその標的を狙い撃ちした。

「われわれが観察するのは健康な癌細胞だけである。」とNCI癌研究センター(CCR)、分子画像評価プログラムの小林久隆氏は述べた。小林氏は、東京大学の化学者である浦野泰照氏とともにpH(水素イオン指数)感受性抗体を開発した。彼らの研究Nature Medicine誌に今月掲載される。

ほとんどのイメージングプローブは、細胞がダメージを受けたか、あるいは死滅した後でさえシグナルを発生し、正常細胞にも結合してしまう。これは、増殖する可能性のある癌細胞だけを識別したい医師に対して誤った情報となるおそれがある。小林氏らが開発した新しいプローブは、ライソゾームと呼ばれる細胞の一部(細胞内小器官)へプローブを運搬できる細胞の中でだけ活性化されるように設計されたもので、ライソゾームは正常細胞の中で酸性環境を維持するため、このようなpH感受性プローブの大部分は生きている癌細胞の中でのみ活性化される。

臨床へ

さらに開発が進めば、この技術を利用して癌を診断し、治療効果をほとんどリアルタイムで観察できるようになると小林氏は述べた。その他の可能性のある適用例としては、癌患者の腫瘍組織を切除する際に外科医を誘導することなどが挙げられるであろう、と同氏は述べた。

臨床応用に向けてのステップとして、NCIは卵巣癌の治療と発見を向上させるための方法として、”酸性環境下で活性化される”プローブなど、異なるイメージング・ツールをテストする共同臨床試験を実施している。

「癌という疾患では、手術で癌をできる限り切除するほうがよりよい結果をもたらすことはわかっています」と共同著者であり、NCI癌研究センターの分子画像評価プログラムを指揮しているDr. Peter Choyke氏は述べた。またさらに、「これらの“酸性環境下で活性化される”プローブによって癌の徴候をできるだけ早い段階で検知し、治療結果を向上できる可能性がある。」と同氏は続けた。

—Edward R. Winstead

画像原文参照
【上段画像下キャプション訳】緑色蛍光タンパク質は1962年にオワンクラゲ(Aequorea victoria)から分離された 。

【中段画像下キャプション訳】乳腺の可視化ウィンドウを通して観察される、生きたマウスの乳腺腫瘍。 腫瘍細胞は緑色で、光学的に標識された腫瘍細胞は赤色である。細胞外マトリックスは青色である。 (画像提供:Dr. Jacco van Rheenen氏)

【下段画像下キャプション訳】最低限のバックグラウンド蛍光で可発プローブ(右)は転移卵巣腫瘍を判別する。コントロールの「常時オン」プローブ(左)では、バックグラウンド蛍光が大きいため、癌細胞焦点の明確な輪郭が欠けている(画像提供:小林久隆博士)

 

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佐々木 了子 訳

島村 義樹(薬学)監修

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