2009/01/27号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/01/27号◆癌研究ハイライト

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2009/01/27号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年1月27日号(Volume 6 / Number 2)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・卵巣切除及び卵管切除によりBRCA1/2キャリア患者の発癌リスクが低下
・多発性骨髄腫に自己幹細胞の二重移植は必要ではない
・トリプルネガティブ乳癌において人種は生存率に関連する要因ではない
・新たな技術により、一般的な癌に遺伝子融合が存在することが明らかに

卵巣切除及び卵管切除によりBRCA1/2キャリア患者の発癌リスクが低下

卵巣及び卵管を切除する手術は卵管卵巣摘出術とよばれ、女性患者にBRCA1またはBRCA2遺伝変異がある場合、その乳癌または婦人科癌のリスクを低下させる上で最も効果的な手段の1つである。しかし、その本当のリスク低下効果についてこれまで明確にはされてこなかった。10の独立した臨床試験のメタ解析を改めて行うことにより、この外科手術が卵管卵巣癌のリスクを80%低下させ、乳癌のリスクを50%低下させることが明らかになった。この解析の結果の全ては電子版Journal of the National Cancer Institute誌の1月13日号で発表された。

ペンシルバニア大学のDr. Timothy R. Rebbeck氏が率いた研究チームは、全体的な乳癌リスク、BRCA遺伝子変異による乳癌リスク、卵巣または卵管癌リスクをそれぞれ調査した。この研究によると、BRCA1遺伝子変異のある女性およびBRCA2遺伝子変異のある女性らは同等に、術後の乳癌リスクにおけるベネフィットを得た。しかし著者らの指摘によれば、手術がBRCA2遺伝変異のある患者に、よりベネフィットを生むことを示した過去のプロスペクテイブスタデイの結果とは食い違っている。

「レトロスペクテイブまたはケースコントロールスタデイでは、このような差はみられず、したがって、全体の推定値には差はなかった」と彼らは述べ、この問題はさらに研究する必要があると述べている。術後の婦人科癌リスクに対するBRCAタイプによる差異をメタ解析するためのデータはなかった。

関連する論説で、NCIの癌疫学・遺伝子学部門のDr. Mark H. Greene氏と Dr.Phuong L. Mai氏は、遺伝子型は表面的に類似しているにもかかわらず生物学的には重大な違いがあるBRCA1およびBRCA2遺伝子変異保持者間に存在する可能性のある差異を明らかにしようとする著者らの試みが、この論文の知見を強化していると述べ、著者らを賞賛している。「本試験で示されているリスク評価は、リスクを低下させる卵管卵巣摘出手術から得られる可能性のあるメリットを評価した現在最も正確なものである。遺伝学の提供者はこの評価を、日常の診療に用いるべきである」とGreene氏は述べた。

多発性骨髄腫に自己幹細胞の二重移植は必要ではない

電子版Journal of the National Cancer Institute誌の1月13日号で発表された単一移植と二重移植を直接比較した臨床試験のメタ解析によれば、患者自身の(自家性)血液細胞を用いた2回目の(二重の)造血性幹細胞移植(HSCT)を追加しても、無再発生存率または全生存率は改善しないとみられる。H・リー・モーフィットがんセンター研究所のDr. Ambuj Kumar氏が率いた研究チームは、「二重移植を現在の形態で普通に用いることは正当ではない」と結論づけた。

この結論は、彼らの考察中のもう一つの知見を反映している。つまり、二重移植を受けた患者で奏効率が21パーセント改善したが、治療関連死亡率(TRM)この群では71%増加した。このデータは、2003年以来発表または投稿された6つのランダム化対照臨床試験から得られており、計1,803人の患者が登録されたものである。

多発性骨髄腫は稀にしか治癒できない形質細胞の悪性腫瘍ではあるが、特に自家性HSCT治療に入る前に別の併用化学療法を受ける患者の場合は高率で治療が可能である。1990年代初期に二重移植が可能になったことから、その後この6つの試験は臨床的治療におけるその価値と安全性を明らかにするために実施された。

2003年のもっとも初期に発表された臨床試験から、二重移植が全生存率および無再発生存率を改善することが示された一方、メタアナリシスの著者らは、このような結果から、「二重移植は全ての患者に同じように有益なわけではなく」、その後の臨床試験では、リスクに影響すると考えられる生物学的および遺伝的因子にしたがって患者を層別化したわけではないと記している。したがって、二重移植を受ける一部の患者集団において「全生存率に関する利点が存在するか」は不明であり、「TRMを減らす戦略が改良されることで生存面で有利になるかどうかは不明である」と著者らは述べている。

トリプルネガティブ乳癌において人種は生存率に関連する要因ではない

白人女性に比べ、若年のアフリカ系アメリカ人女性では、3つの受容体陰性(TN;トリプルネガティブ)乳癌の発生率が高く、腫瘍がホルモン療法やトラスツズマブ(ハーセプチン)による治療に反応しない。白人女性と比べてアフリカ系アメリカ人女性に乳癌の死亡率が高い理由の1つとして、社会的要因および経済的要因とともに、この癌の発生率が高いことが主要な生物学的要因として提唱された。

現在、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らが実施した新たな研究がJournal of Clinical Oncology誌1月10日号に発表された。TNであったアフリカ系アメリカ人女性と白人女性を同一施設で同一治療を施した場合に同等の生存率結果であることが示唆された。

研究者らは、M.D.アンダーソン癌センターで1996年から2005年にかけて術前化学療法をうけた471人のTNであった乳癌患者から収集したデータを考察した。全女性患者は、化学療法後に手術を受け、術前化学療法が奏効しなかった場合は放射線治療をうけた。乳房切除術を受けた女性、乳房温存術を受けた女性、リンパ節を切除された女性の割合は、人種間に有意な差はみられなかった。

アフリカ系アメリカ人女性の治療後の3年無再発割合は68%であり、白人女性および他人種の女性では62%であった。3年全生存率は両群とも71%であった。両群で、術前化学療法が病理的に完全奏効となった女性(乳房および腋窩リンパ節の浸潤性疾患がみられなかった)では生存率が良好であった。

「TN性疾患の女性のための特別な癌治療施設内で同等の治療と術後観察が施された場合、黒人患者と、白人および他人種の患者との間の生存率は同等である。このような観察は、より大規模のプロスペクティブ臨床試験の中で確認していく必要がある」と著者らは結論づけている。

新たな技術により、一般的な癌に遺伝子融合が存在することが明らかに

癌細胞中で異常に融合した、疾患を進める可能性がある遺伝子を探索する方法を研究者らが開発した。この遺伝子配列は血液癌で多くみられ、最近の研究では他のタイプの腫瘍、特に前立腺癌および肺癌で重要な可能性があることが示唆されている。しかし現在までに、このような遺伝子をつきとめる効率的な方法がなかった。

ミシガン大学医学部のDr. Arul Chinnaiyan氏が率いた研究チームおよびNCI早期発見研究ネットワーク(EDRN)の研究者らは、解決策として「統合型トランスクリプトームシーケンシング」という方法を開発した。この方法には、2つのタイプの「次世代」シーケンシング技術を用い、癌細胞からメッセンジャーRNAを解析する。この方法は(別の技術によって産生した)多数の比較的短いシーケンスを組み立てるための骨格となる比較的長いRNAシーケンスを産み出す。この統合は、各方法では、それぞれ多くの偽陽性の結果が出されていることから、今回の報告は重要な意味があると、1月11日の電子版Nature誌で発表した。

この技術の証明として、研究チームは、慢性骨髄性白血病におけるBCR-ABL1等の既知の融合遺伝子を「再発見」したほか、以前は知られていなかった発見もあった。一度融合遺伝子が発見されれば、次は、その融合が他の患者でも発生しているか、癌の進行を進める働きをしているかなどを検討していくことになると彼らは強調する。

「あらゆる分野で、この遺伝子融合を探索しており、われわれの研究は、次世代シーケンス技術を用いて、癌細胞のRNAに焦点を当てれば、融合遺伝子を発見できることを示している」とChinnaiyan氏は述べ、融合遺伝子は、腫瘍サンプルの遺伝子シーケンスで見逃されやすく、過小評価される遺伝子変異である。

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関屋 昇 訳

小宮 武文(呼吸器内科/NCI研究員) 監修

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