2009/01/27号◆特集記事「遺伝子マーカーに基づいた大腸癌治療により医療費は節約できるとの試算」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/01/27号◆特集記事「遺伝子マーカーに基づいた大腸癌治療により医療費は節約できるとの試算」

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2009/01/27号◆特集記事「遺伝子マーカーに基づいた大腸癌治療により医療費は節約できるとの試算」

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2009年1月27日号(Volume 6 / Number 2)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特集記事

遺伝子マーカーに基づいた大腸癌治療により医療費は節約できるとの試算

突然変異を起こしていない正常なKRAS遺伝子を持つ転移性大腸癌患者の治療にのみ抗EGFR(上皮成長因子受容体)薬のセツキシマブ(アービタックス)を用いることにより、年間6億ドル以上の医療費が節約できるであろうとの研究結果が、サンフランシスコで開催された消化器癌シンポジウムで1月14日に発表された。

一部の医療サービス研究者らは、節約領域を限定できる可能性のある様々な要因を十分に説明できるものではないかもしれないと主張し、単一の研究による知見は慎重に解釈されるべきであると警告した。

サニーブルック保健科学センター(トロント)の医療効果・医薬経済研究センター事務局長であり、カナダ国立癌研究所カナダ臨床試験グループの経済分析作業部会の共同議長であるDr. Nicole Mittmann氏はこれを「マクロ経済声明」と呼び、この研究は転移性大腸癌患者に対するセツキシマブや他のEGFR阻害剤の使用に対して、さらに的を絞ることにより医療費の節約の可能性を示した幸先の良い「世界的な試算」であると述べた。

この研究は、2008年の転移性大腸癌の予想罹患率、KRAS遺伝子発現を調べる市販検査の平均費用、CRYSTAL試験のデータを参考にした患者1人に対するセツキシマブの平均投与量およびKRAS遺伝子変異を有するとみられる患者数などの経済モデルを基にしている。正常なKRAS遺伝子を持つ患者のみに投与するという節約プロジェクトから全参加患者の検査費用を引いた後、最終的な節約額は概算で6億4百万ドルに達した。

再発した場合や変異型KRAS遺伝子を持つ患者の治療毒性の管理に関連する費用の節約を含んでいないため、これは控えめに見積もった額かもしれないと、この研究の主執筆者でありRobert H. Lurie 総合がんセンターのDr. Veena Shankaran氏は記者会見で強調した。

セツキシマブは正常型KRAS遺伝子を持つ患者のみに臨床的効果があることを示した複数の大規模試験の後ろ向き解析結果をうけて、転移性大腸癌患者においてKRAS遺伝子発現状態を検査することは徐々に標準となってきていると、ノースショア大学保健システムのDr. Jennifer Obel氏は会見で語った。

この研究結果が発表された同日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、すべての転移性大腸癌患者に対してセツキシマブや同様な薬であるパニツムマブ〔panitumumab〕(ベクチビックス〔Vectibix〕)による抗EGFR治療の適応があるかどうかを調べるためにKRAS遺伝子変異検査を行うべきと通知する「暫定的な臨床意見」を初めて発表した。

昨年11月、全米総合癌情報ネットワークは同様の通知を大腸癌治療のガイドラインに付け加えている。(これを読むには無料登録が必要である。)

新しい癌治療の費用を考えると、「挑戦できるとしても、費用を払いきれるでしょうか?臨床効果が期待できる遺伝子特性を持った患者のみに治療を行えばこれらの標的治療薬の値段も適正と感じられるかもしれません」とMittmann氏は語った。

セツキシマブの製造元であるイムクローン社(最近イーライリリー社に買収された)とパニツムマブのアムジェン社から提出されたKRAS遺伝子発現状況と臨床効果の関連性データを表示する薬のラベル変更の要望に対しFDA は未だ決定を下していないが、現在、ほとんどの保険会社はごく普通にKRAS遺伝子検査費用を支払っているとObel氏は指摘した。

FDAの抗腫瘍薬諮問委員会(Oncologic Drugs Advisory Committee)は、先月、両社より薬のラベル変更申請の要望を聞いたが、同委員会はラベルを推薦する依頼は受けていなかった。

消化器癌シンポジウム―その他の話題
EGF遺伝子に特定の変異がある胃食道逆流性疾患(GERD)患者は、変異がないGERD患者より食道癌の発症リスクが高いと、トロント大学とハーバード大学の研究者らがサンフランシスコで開催された2009年消化器癌シンポジウムで発表した。GERDに罹患していなければこの変異は影響を及ぼさなかった。GERDは食道癌の危険因子として知られているが、ケースコントロール試験を行っている研究者らによると、悪性腫瘍の発症リスクが高いGERD患者を予測できるかもしれない特定の遺伝子変異が確認されたのはこれが初めてである。頻繁にGERD症状に悩まされていたり、あるいは、15年以上GERDを発症したりしているEGF変異を持つ患者は癌の発症リスクが一番高かった。

同シンポジウムで発表されたドイツの研究者らによる第2相試験結果では、稀な癌で治療方法がほとんどない中腸(あるいは小腸の下部)に発生する悪性の神経内分泌腫瘍患者にとって、重要で新しい治療オプションが示された。多施設研究で、オクトレオチドLAR(サンドスタチンLAR)投与群の患者の腫瘍が増悪するまでの中央値は14.3カ月であり、対するプラセボ群の患者では6カ月であった。投与開始6カ月後、投与群の患者の64%は病状が安定しており、対するプラセボ群では37.2%であった。全生存率データはまだ利用可能な段階ではない。記者会見で、イリノイ州にあるノースショア大学保健システムのObel氏はこの研究結果を「診療を変える」と評した。

Carmen Phillips

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Nogawa 訳

鵜川 邦夫(消化器科)監修

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