2010/05/04号◆クローズアップ「同種幹細胞移植後の再発」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/05/04号◆クローズアップ「同種幹細胞移植後の再発」

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2010/05/04号◆クローズアップ「同種幹細胞移植後の再発」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年5月4日号(Volume 7 / Number 9)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ クローズアップ ◇◆◇
同種幹細胞移植後の再発

−読者リクエスト記事−


造血幹細胞移植(HSCT)の分野は、1968年に重症複合型免疫不全症候群の患者に行われて最初に治療法が成功してから長い間進歩を遂げてきた。[pagebreak]白血病やリンパ腫といった血液癌患者の治療において、造血幹細胞移植は当初、高用量の化学療法と放射線治療を行うことを念頭に用いられていた。しかし現在では、移植片対白血病/リンパ腫(GVL)効果として知られる現象を利用するためにも腫瘍医は造血幹細胞移植を行う。GVL効果とは、適合ドナーからの(同種)移植片により産生された新しい免疫細胞が、患者の癌細胞を身体に対する脅威とみなして破壊し、疾患の再発率を低下させることである。

[拡大]
また同種移植の前には、患者の骨髄を完全に破壊しない強度減弱前処置が以前より一般的に使用されるようになってきている。これにより治療法自体が安全になり、死につながる治療のリスクが減る。強力な前処置を受けることが出来ない高齢患者に対しても、GVL効果の利点が利用されるようになった。

しかし残念なことに、このGVL効果にもかかわらず造血幹細胞移植後の死亡原因の1位は疾患の再発で、最終的には患者の3分の1以上が疾患の再発により死亡する。また強度減弱前処置による治療の場合、後に再発するリスクは、高用量の前処置を行った場合と比較して最大で2倍となり、治療中の死亡リスクの低減による生存期間に対する有効性を引き下げている。

造血幹細胞移植後に癌が再発した場合に患者が受けることができる唯一の標準治療はドナーリンパ球輸注(DLI)として知られる治療法で、さらなるGVL効果が起こることを期待して、ドナーから得た追加の免疫細胞を再注入する。しかしこの選択肢が有効なのは、患者の少数であり、その大半は慢性骨髄性白血病患者である。
このような理由で、造血幹細胞移植後の再発の問題に組織だったアプローチで対処するため、移植および腫瘍学会から各分野の指導者を集めて複数の新しい方針が検討されている。

造血幹細胞移植後の再発における指針を作る

米国国立癌研究所(NCI)は、2009年11月に行われた「第1回同種造血幹細胞移植後の再発における生物学および予防と治療についての国際研究会」(First International Workshop on the Biology, Prevention, and Treatment of Relapse after Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation)を主催した。

「私たちは移植に携わる人々を一つにまとめ、しかも斬新なアイディアを導入したいのです」と、テキサス大学M.D. アンダーソンがんセンターのDr. Sergio Giralt氏とともに研究会の共同座長を務めたNCIの癌研究センター(CCR)のDr. Michael Bishop氏は説明した。

研究会では重要な6つの焦点領域を取り上げ、そこでの議論から得た成果は2010年を通して発表される予定である(側面記事参照)。「私たちは移植に携わる全ての人のための手引書を作りたいのです。現在、科学的根拠に基づいて明らかになっていることと、これから目指すべき方向性を示したいのです」とGiralt氏は述べた。

NCIでは移植後の再発の問題に対し、さらに組織的、体系的に取り組んでおり、この研究会はその努力の一端であるとCCRの小児癌支部の臨床局長であるDr. Alan Wayne氏は述べた。

「研究者らは長年にわたりこの問題に的を絞った臨床試験を行ってきました。しかし、試験の大部分は比較的特異な研究課題に対して個々の研究者により行われてきたのです」と同氏は説明した。「NCIの各部門やNIH(米国国立衛生研究所)の他の機関との垣根を越える組織化されたプログラムが本当にこれまでなかったのだとはっきりとしました」。

Bishop氏、Wayne氏、またCCRのDr. Nancy Hardy氏の主導の下、部門を超えた組織つくりを目指す新しいプログラムには腫瘍委員会を設け、医師は研究グループに症例を提示し、臨床試験での治療法も含め治療の推奨を論議することができる。また同種造血幹細胞移植後の再発患者のための特別診察室も設置されている。

このチームはまた自然経過、生物学、同種造血幹細胞移植後の再発患者の治療法を患者の年齢や施設にとらわれず研究するために、専門的な手順書を作成中である。「患者をより体系的、組織的に臨床試験へ登録し、研究を進め、治療をするために、この手順書は骨組みの役割を果すでしょう」とWayne氏は述べた。

このプログラムでは6つの新しい臨床試験が進行中であり、そのうちの1つでは再発後のDLIの有効性を増強するワクチンの能力を検証している。近い将来、さらなる試験が予定されている。

「同種移植後に癌が再発し進行した患者で、施設内審査委員会が認めた臨床試験で治療を受けているのは現在5%にも足りません」とBishop氏は言う。「移植後の死亡の主な原因として残っているものに対して体系的に取り組むために大いに研究を進めるべき領域なのです」。

— Sharon Reynolds

米国国立癌研究所(NCI)に後援された血液癌の再発に焦点をあてた国際研究会メリーランド州ベテスダで開催された研究会には、移植専門医のみならず、腫瘍免疫学、腫瘍生物学、また血液癌の治療に対する非免疫療法的アプローチの分野で働く研究者ら、250人以上が参加した。焦点となった領域は以下のとおり:・同種造血幹細胞移植後の癌再発の根本にある生物学: 移植片対白血病効果に関係する要因
・同種造血幹細胞移植後の癌再発の根本にある生物学: 移植片対白血病効果に関係しない要因
・再発の疫学と自然経過
・再発予防に用いられるアプローチと治療法
・同種造血幹細胞移植後の再発を監視するための方法とアプローチ
・同種造血幹細胞移植後の疾患再発の治療

6つの研究グループはそれぞれが、2010年のBiology of Blood and Marrow Transplantation誌上にレビュー論文を発表する。論文では、現在の医学知識、進行中の研究、また追加的な取り組みや共同研究の努力が最も必要とされる領域の概要を説明する。6報の論文のうち、移植片対白血病の生物学と、再発の疫学および自然経過との2報がそれぞれ2月4月の電子版に掲載された。

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岡田 章代 訳
林 正樹 (血液・腫瘍内科医/敬愛会中頭病院)監修

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