ワクチンで白血病細胞を「一掃」できる可能性が示される/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

ワクチンで白血病細胞を「一掃」できる可能性が示される/ジョンズホプキンス大学

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ワクチンで白血病細胞を「一掃」できる可能性が示される/ジョンズホプキンス大学

ジョンズホプキンス大学の研究者、グリベック治療で残存した白血病細胞をワクチンが「一掃」する可能性を示す
予備試験の結果であるため、その他の理由の関与も否定できないと研究チームは警告
ジョンズホプキンス大学
2010年1月5日

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らによると、イマチニブメシル酸塩(グリベック)治療を受けている慢性骨髄性白血病(CML)患者を対象とした予備試験で、白血病細胞で製造したワクチンにより残存腫瘍細胞が減少あるいは死滅する可能性が示されたという。[pagebreak]グリベックは、がん標的療法として最初に開発された薬剤の一つであり、CML患者に対して広く成果をあげている。この薬剤は、体内の白血病細胞の大部分を破壊するが、ほとんどの場合、高感度の分子学的検査で測定可能な腫瘍細胞が残存する。研究者らによると、特にグリベック治療を中止した場合、このような残存細胞が再発の原因になるという。

Clinical Cancer Research誌に発表された試験的研究で、ジョンズホプキンス大学の研究者らは、CML細胞に放射線を照射してがん化能力をなくし、免疫系を活性化する刺激因子GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)を発現するよう遺伝子操作を行って作製したワクチンを用いた。こうして処理を施した細胞にはCML細胞に特異的な、抗原という分子が含まれており、この分子が、循環血液中のCML細胞を免疫系が認識し死滅させる助けとなる。

この試験ワクチンを、グリベック治療を1年以上受けているにも関わらず、測定可能な腫瘍細胞が認められたCML患者19人に投与した。10か所への皮膚注射を3週間間隔で合計4回行った。中央値72カ月の追跡調査期間後に、患者13人の残存腫瘍細胞数が減少し、うち12人は最低値に達した。7人については、CML細胞が完全に検出不能となった。

本研究では対象となった患者数が限られており、他の治療法との比較も行っていないため、今回みられた反応がワクチンの結果であるとは断言できない、と研究者らは警告している。

「われわれの目的は、体内の腫瘍細胞を残らず排除することであり、がんワクチンの使用は残存する疾患を一掃するのに有効な方法となるかもしれません」と、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターで腫瘍学、内科学および泌尿器科学教授を務める、Hyam Levitsky医師は述べている。Levitsky氏は今回の結果を裏づけ、展開させるには、さらなる研究が必要であるとしている。

研究者らは、試験に参加した患者の血液サンプルを調べ、免疫系が認識している抗原を特定することにしている。この情報をもとに、免疫反応をより正確に観察するための追加調査に向けてワクチンを調整する予定である。

試験ワクチンの投与を受けた患者らにみられた副作用は比較的少なく、接種部位の疼痛および腫脹、時折起こる筋肉痛および微熱などであった。

研究者らによると、CML患者の大部分がグリベック治療を一生続ける必要があるという。患者の90%以上が寛解を得るが、約10~15%は長期間投与でグリベック不耐容となる。「多くの場合、患者さんには血球数低下、体液貯留、著しい悪心およびその他胃腸障害などがみられます」とジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターで腫瘍学准教授を務める、B. Douglas Smith医師は述べる。ダサチニブ治療およびニロチニブ治療などの二次療法も多くの副作用を伴う。

Smith氏によると、 グリベックの一般的な副作用として他に倦怠感がある。「患者さん自身は、元気な時に比べて8~9割くらいの体調だと感じている、とよくおっしゃるのですが、時とともに、このことが彼らの生活の質に大きく影響してくるかもしれないのです」と彼は述べる。

また、グリベックは妊娠中の服用はできないが、CML患者の3分の1が20代および30代であるため、子供を持つことを望んで服用を中止したがる患者が多い。

「最終的に、このワクチンによる治療法が有効であることが証明されれば、一生続くグリベック治療から患者さんを解放できるということで飛躍的な進歩となるでしょう」とLevitsky氏は述べる。

本研究は、国立衛生研究所(National Institute of Health)による資金提供を受けた。

本研究への協力者は以下の通り。
Yvette Kasamon, Jeanne Kowalski, Christopher Gocke, Kathleen Murphy, Hua-Ling Tsai, Lu Qin, Christina Chia, Barbara Biedrzycki, and Richard Jones from Johns Hopkins; Carole Miller from St.Agnes Hospital; Elizabeth Garrett-Mayer from the Medical University of South Carolina; and Thomas Harding and Guang Haun Tu from Cell Genesys, Inc.

BioSante Pharmaceuticals Inc.社とジョンズホプキンス大学間のライセンス契約に基づき、Levitsky氏は目標達成報奨金の一部およびGVAX販売により大学が得る特許使用料の一部を受け取る権利を有する。以前、Levitsky氏はCell Genesys社の有給コンサルタントを務めており、同社はその後BioSante Pharmaceuticals Inc.社により買収されている。この協定に関する条件は、ジョンズホプキンス大学の利害対立の方針に従って、大学により管理されている。

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河原 恭子 訳
吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院)監修
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原文


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