2009/02/10号◆スポットライト「心臓について―心臓腫瘍が極めて稀な理由」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/02/10号◆スポットライト「心臓について―心臓腫瘍が極めて稀な理由」

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2009/02/10号◆スポットライト「心臓について―心臓腫瘍が極めて稀な理由」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年2月10日号(Volume 6 / Number 3)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf

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スポットライト

心臓について―心臓腫瘍が極めて稀な理由

GoogleもしくはPubMedで「心臓腫瘍」を検索しても、個々の症例報告程度のものしか表示されないであろう。検索結果には臨床試験の結果、メタ解析、もしくは治療ガイドラインなどは出てこない。

心臓(ハート)は、愛情や思いやり、そしてチョコレートの日の究極のシンボルであり、癌に対しては免疫を有するような特性をもつ臓器である。人体における心臓の重要性を考えると、恵まれたことである。

しかしながら、疑問も生じてくる:なぜこの大きくて極めて重要な解剖学的構造物には、85歳以下の人々の死亡原因第1位である癌ができにくいのか?その答えは、筋肉からなるこの臓器の大部分である高度に分化した心筋細胞の中に見つけることができるとみられる。

非常に少ないが致命的

心臓そのものから発生する原発性心臓腫瘍は極めて稀である。一連の剖検報告において、心臓での腫瘍の発生率はせいぜい1パーセントの約4分の1である。診断された心臓腫瘍の過半数は良性で、成人では、粘液腫と呼ばれる幾分ドロドロしたゼラチン状のタイプが最も一般的であり、乳児および小児では結節性硬化症に伴うことの多い横紋筋腫が多くみられる。

トロント総合病院心臓外科医のDr. Robert J. Cusimano氏によると、悪性の心臓腫瘍はほとんどの場合、腎臓もしくは肺などの隣接臓器における原発腫瘍からの転移である。

「心臓への転移がある場合、予後は非常に悪くなります」と、Cusimano氏は述べた。同氏は、心臓腫瘍の患者がよく彼のところに紹介されてくることから、自ら屈託なく「心臓腫瘍医」と名乗っている。そのような状況でも、部門全体で目にすることができるのは、年間わずか12例の良性腫瘍であり、同氏が担当する心臓癌症例は年に約5~10例、そのうちの1例もしくは2例が原発性悪性腫瘍である。

血管肉腫は、最も一般的な原発性悪性心臓腫瘍である。Cusimano氏が共著者となり先月電子版で先駆けて公表された最近の症例報告によると、ある程度の成功を収めた治療法は、化学療法、放射線療法の両方もしくはどちらかによって原発腫瘍を縮小させ、微小転移巣も根絶し、その後に原発腫瘍の切除手術を実施するものである。

答えとなる細胞

他の損傷した臓器と異なり、心臓には傷ついた組織を修復する能力はほとんどないとみられる。主要な心臓病研究者らによると、その理由は筋肉そのものを構成している細胞である心筋細胞が、最終分化細胞であるからだということである。

言い換えれば、これらの細胞は、人生の非常に早い時期に永久に細胞周期から離脱し分裂を停止するポイントに到達する。その後、細胞分裂ではなく細胞の大きさを拡大することによってさらに成長する。これは、例えば、他の臓器を覆う上皮細胞といった、ある特定の刺激に反応して活発に分裂し必要な場合には増殖するものとは異なっている。

この”心筋細胞の非常に厳格な細胞周期制御”は両刃の剣のように作用する、とカリフォルニア大学サンフランシスコ校グラッドストーン心臓血管研究所の所長 Dr. Deepak Srivastav氏は説明した。それは、「増殖するために細胞周期を再開し、損傷組織を修復しない」だけではなく、「腫瘍形成に対してそれほどまでに耐性がある」理由になるかもしれない、と同氏は述べた。

増殖活性が非常に弱い場合、「細胞周期動態の異常は他の多くの身体部位における腫瘍の特徴ですが、これが心臓で問題になることはありません」とペンシルベニア大学医学部病理・臨床検査医学科のDr. John E. Tomaszewski氏は付け加えた。

心臓腫瘍が極めて稀であることから、それがどのようにして、なぜ、生じるのかに関する研究や、最適な治療法に関する研究を進める組織的な取り組みはほとんど行われていない。現在のところ、よりよい結果を得られる最善の方法は、心臓腫瘍患者の治療経験があるセンターへ患者を集中することである、とCusimano氏は考えている。

日常的に、患者をこのような病院へ紹介することによって「外科医や腫瘍医はこれらの症例についてより多くの経験を積むことができる」ようになる。「それが、この種の癌に取り組むことができる唯一の方法なのです」とCusimano氏は述べた。

—Carmen Phillips

画像原文参照
【画像下キャプション訳】外科的切除直前の左心室の転移性メラノーマ腫瘍。(写真提供:Cusimano氏)

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豊 訳

後藤 悌(国立がんセンター中央病院 内科)監修

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