CT検査時における被曝線量のばらつきによる安全上の問題/カリフォルニア大学サンフランシスコ校 | 海外がん医療情報リファレンス

CT検査時における被曝線量のばらつきによる安全上の問題/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

CT検査時における被曝線量のばらつきによる安全上の問題/カリフォルニア大学サンフランシスコ校


カリフォルニア大学サンフランシスコ校
2009年12月14日

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(USCF)の画像診断専門家らが主導する新たな研究によれば、通常のCT検査の被曝線量には、一般に考えられているよりも大きな幅があるため、発癌リスクの増加が懸念されている。[pagebreak]「日々の診療においては、同じ医療機関内であっても複数機関にまたがっていても、同タイプのCT検査の被曝線量に有意なばらつきがあることがわかりました」とUCSF医療センターの放射線科医であるRebecca Smith-Bindman医師は述べた。「われわれの研究結果が医療安全にかかわる問題であるため、もっと標準化をすすめる必要があることを強く示唆しています」。

コンピュータ断層撮影法(いわゆるCT)は、身体の断層像を撮影するために特殊なX線装置を用いる診断技術であり、臓器・骨・その他の組織を詳細に画像化できる。CTは通常のX線検査よりも高い放射線被曝を伴うが、新しいCT装置で撮影した際の被曝線量はおおむね規制対象となっていない、とSmith-Bindman医師は述べた。

「われわれの研究は、実際のCT検査で受けた患者の被曝線量の初期データを記録しています。これはファントム(CT装置の線量を定量化するために通常用いる精巧なプラスチック模型)を使用した場合の被曝線量とは異なります。 実際に患者の被曝線量を記録することは、被曝線量と付随リスクを減らすための第一歩であると考えています」と同医師は強調した。

1980年以来、年間CT検査数は約300万件から7000万件に増加した。その間にCT技術は劇的に変化し、画像の質が向上して、CTによって解決できる臨床的疑問は増え、結果として患者のケアが改善された、とSmith-Bindman医師は言う。

CTの進歩の一つは、CT検査1件に要する時間が劇的に短縮されたことであった。 しかし、これは諸刃の刃でした、と同医師は言う。 CT画像があまりにも短時間で取得できるため、心周期の動脈相,静脈相およびそれよりも少し遅れた位相でそれぞれ1回ずつCT撮影を行う多位相検査を行いたいという思いが強くなった。これによってCT検査から得られる情報は増えるが、被曝線量も3倍に増す。

研究チームは、米国の臨床現場でもっともよく行われる11タイプのCT検査に伴う被曝線量と、各タイプに関連する潜在的な発癌リスクを予測することに重点的に取り組んだ。

この研究は、さまざまなタイプのCT検査による被曝線量に関する初の大規模調査である。 研究者らは、サンフランシスコ湾エリアの4施設で5カ月間に1119人の患者が受けたCT検査について調べた。 頭頸部・胸部・腹部-骨盤という解剖学的3領域のCT検査を評価した。

研究結果はArchives of Internal Medicine誌2009年12月14日号に掲載される。

本研究により、被曝線量は一般的に報告されているよりも多く、CT検査のタイプ毎における最大と最小の被曝線量の間には平均で13倍の差があることがわかった。つまり、特殊なCT検査を行う場合、患者が受ける被曝線量には大きなばらつきがある、とSmith-Bindman医師は説明した。

予想どおり、研究者らが予測した発癌にいたるCT検査の件数は、性別・年齢・CT検査のタイプによって大きく異なっていた。女性の方が男性よりも少ない回数のCT検査で高い発癌リスクをもたらすと予測した。

たとえば、40歳で冠動脈造影CT検査を受けた女性の270人に1人が検査により癌が発生するのに対し、男性では600人に1人と予測された。 同じく40歳で頭部ルーチンCT検査を受けた場合、予測される発癌リスクは女性で8100人に1人、男性で1万1080人に1人である。 20歳前後の患者では、発癌リスクはいずれも約2倍高かった。 「CT検査に伴う発癌リスクは、CT検査を受ける患者1,000人に1人であると推測するのが慣例です。 われわれの研究では、特定のCT検査を受けた特定集団の患者に限っていえば、発癌リスクは80人に1人という高い割合でした」とSmith-Bindman医師は述べた。

研究チームは、各CT検査に伴う放射線被曝を定量化するために「実効線量」を用いた。これはもっとも頻繁に使用される測定尺度の一つである。次に、被曝線量の違いを発癌リスクに置き換えるために、研究チームは、電離放射線被曝による健康リスクを評価した全米科学アカデミー(National Academiy of Science)米国学術研究会議(National Research Council)の報告書のデータを使用した。 同報告書は2006年に『電離放射線の生物学的影響VII第2フェーズ』という題で発刊された。

研究結果によれば、部位と個々のCT装置のパラメータにより、患者が被曝する実効線量は中央値を大きく上回る場合がある。「とりわけ重要なのは、CTを使用するにあたっての敷居が低くなり、健康な人がCT検査を受ける機会がますます増えているためである。健常者においてはCTによる潜在的発癌リスクが診断的価値を上回るおそれがある」と研究チームはArchives誌の論文で指摘した。

Smith-Bindman医師によれば、他の画像検査法と比べると、1回のCT検査で被曝する実効線量の中央値はマンモグラフィーの74回分、胸部X線検査の442回分に相当する。

CT検査の安全性を高め、被曝線量を減らすために以下の3項目を実践する必要があることを研究者らは見出した。

● 不必要な検査や、臨床的判断への影響が少ない検査を減らす。
● すべてのCT装置について低線量ないしは相対的低線量プロトコルを標準化し使用する。
● CT検査の安全な実施法を定めた連邦法と米国食品医薬品局(FDA)の監督の下、患者および施設における被曝線量を標準化する。

CTの安全性に関するさらなる研究が必須であるとSmith-Bindman医師は強調した。「とりわけこれらの結果を踏まえれば、今すぐ個々の患者レベルで被曝線量データの収集を開始しなければなりません。臨床現場で実際に起こっていることに関するデータ収集を開始し、次いで適切な標準規格を確立することが必要です」。

Archives of Internal Medicine誌への掲載に加え, ワシントンD.C.で開かれる2010年春の米国放射線防護審議会年次会合においてSmith-Bindman医師が研究結果を発表する予定である。

共著者は次のとおりである。
Dr. Jafi Lipson and Robert Gould, ScD, UCSF Department of Radiology and Biomedical Imaging; Kwang Pyo Kim, Ph.D., Kyung Hee University in Korea; Mahadevappa Mahesh, M.S., Ph.D., Johns Hopkins School of Medicine; Amy Berrington de Gonzalez, DPhil, National Cancer Institute; and Diana L. Miglioretti, Ph.D., Group Health Research Institute, Seattle.

本研究は米国国立衛生研究所(NIH)内の国立画像生物医学・生物工学研究所と国立癌研究所、およびカリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の資金援助を受けた。

UCSF医療センターはカリフォルニア大学サンフランシスコ校に属する。同校は先進的生物医学研究、生命科学と医療専門職の大学院教育、優れた医療看護を通じて世界の健康を推進する一流大学である。

******
盛井有美子 訳
中村光宏(医学放射線)監修
******

FDAニュース「[url=https://www.cancerit.jp/xoops/modules/fda_files/index.php?page=article&storyid=107]CT灌流画像診断での過剰な放射線照射の懸念に関するFDAの臨時勧告[/url]」


原文


printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3がんに対する標的光免疫療法の進展
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10ASCO、がん臨床試験に対する適格基準の緩和を推奨

お勧め出版物

一覧

arrow_upward