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\医療放射線暴露に関するリスクと利点/米医療放射線学会

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\医療放射線暴露に関するリスクと利点/米医療放射線学会

米医療放射線学会
2009年10月26日

Kelly Classic 認定医学物理士

放射線暴露によるリスクの問題は盛んに議論される話題である。典型的な医療放射線暴露による主たるリスクは発癌の可能性があることである。これまでの定まった考え方は、暴露とリスクの間には線形域値はなく、言いかえれば、リスクがない放射線暴露量というのはなく、暴露量が増えればそれだけリスクは大きくなるというものである。ここで重要なことは、放射線暴露だけが発癌リスクを生み出すのではなく、またそのリスクは直接測定できないし、他の原因(環境的、化学的、生物的など)によるリスクとは区別できないことである。米国がん協会(American Cancer Society)によれば、米国における致死的な癌の生涯罹患率の平均は約25%である。診断目的の医療放射線暴露はこのリスクをおおよそ0~1%とわずかに上昇させる可能性がある。[pagebreak]人間に恩恵がある多くの物質は、関連するリスクを有する。例えば、アスピリンは多くの適応疾患で極めて有効であるが、多量の服用では有害性が高くなる場合がある。放射線でも同様で、放射線によるリスクは、放射線量、線量率、放射線の種類、曝露部位、そして暴露された人の年齢や健康状態に大きく影響される。先に述べたように、少量の放射線でも発癌のリスクを上昇させる可能性がある。この上昇は、癌の自然発生率や飛行機による移動や車の運転のような日常のリスクに比べれば小さいものと一般的にみなされる。さらに、喫煙、飲酒、食事、日焼けなどの日常生活因子、アスベストや除草剤などの環境・職業因子、ウイルスや菌などの感染因子と比較すると、医療放射線暴露に関連するリスクは取るに足らない。

放射線のリスクはよく誤解されるが、それは放射線リスクの話題がその性質上かなり技術的で、専門用語(特有の単位、用語など)や専門教育に基づく基礎知識が必要だからである。一般の人々の多くは、技術的、科学的というよりむしろほとんど主観的な捉え方をするが、それは問題や映画の”ハルク”や”スパイダーマン”において、放射線暴露によって”超自然的”な性質を獲得するというフィクション描写をセンセーショナルに取り扱う傾向があるメディアのせいである。これらの例の多くで、放射線量やリスクの情報は不正確に伝えられ誤解の連鎖を生んでいる。これらの誤解によって放射線は怖いものという認識が生じ、すべての放射線暴露は一様に有害で危険を伴うと思われてしまっている。

いかなる状況においても、放射線のリスクは明確に特定され説明されなければならない。リスクは、実際のものでも計算上のものでも、説明されるだけでなく、利用者があらゆるリスクを考慮して利益を受けるかどうかに関する情報を得た上での決断を下せるように理解してもらうことが特に重要である。

放射線の影響はおおまかに、確率的影響(放射線量に応じて生物的影響の確率が増加する)もしくは確定的影響(確率は放射線量に左右されず、域値以下の場合は影響はない)に分類される。確率的影響には域値がないため、たとえ放射線量が少なくても確率的影響は起こる可能性がある。放射線暴露した人にとって重要な確率的影響は発癌である。確定的影響(細胞死など)の域値は、医療行為でみられる放射線量の、典型的には最低でも10~100倍である。したがって医療行為における暴露では確定的影響の副作用が起こる確率は全くないに等しい。一回のX線曝露でも、複数回の曝露であったとしてもその域値よりずっと低い。したがって残る懸念は発癌についてである。

実際に放射線照射される身体の組織や暴露量(そして照射による影響のリスク)は検査の種類と、撮像時のパラメータに左右される(X線ではkVp、mAs、距離などがあり、核医学検査では放射性核種、投与された放射能などがある)。固形腫瘍の顕在化までの期間は平均して約20年なので、1年くらい前のX線撮影による今日のリスクは無視できる。あいにく、その日の放射線暴露による将来の発癌の正確なリスクを決める科学的データは十分にない。米国学術研究会議(National Research Council)とその放射線暴露による健康影響に関する報告によれば、リスクが増加するにはかなりの量(>50 rad)が必要である(NRC 1990)。これは放射線照射を含む医療行為で暴露される量を大きく超える量である。

全てのX線診療を同一視するのは、リンゴとオレンジを比較するようなものであることを理解しておくことも重要である。歯科X線撮影時において頭部に受ける放射線量は手首に対するX線と同じではなく、腹部や胸部に対するX線とも同じではない。放射線量のリスクは通常、身体全体に対して有害であった実際の量を計算したものに基づいている。つまり、もし同量の放射線が放射線感受性の高い領域(生殖器など)と感受性が低い領域(手など)に照射されれば、有害度は放射線感受性の高い領域に対しての方が大きいと考えられる。この有害度の決定は領域や臓器への放射線量とその組織や領域の”組織荷重係数”を掛算して算出される。臓器の放射線感受性が高いほど、組織荷重係数は大きくなる。目的は、身体全体に照射した場合の放射線総量と等しくなるように、有害度の合計を出すことである。

ここで生じる問題は、すべての癌は放射線だけが原因ではないことである。医療行為で受ける放射線とともに、他の多くの化学物質、生物因子が微量に存在する。アメリカ人のおよそ4分の1が生涯になんらかの癌を発症するが、特定の因子がその癌を引き起こしたかどうかを確定することは多くの場合不可能である。

放射線による癌のリスク(または他の影響)に関して今日存在するデータのほとんどは、非常に高い放射線量(原子爆弾生存者、ラジウムダイヤルペインターなど)に基づいている。高放射線量は確かに癌のリスクを増加させることは、ある程度確かなことだと言えるが、その情報源は大量の放射線を受けた集団での研究である。有名な例は、Radiation Effects Research Foundationのウェブサイトの”Cancer risks among the atomic-bomb survivors”のリンクで見られるように、広島と長崎の原爆被害者である。長年にわたって行われ分析された、この研究や他の多くの研究によって、暴露された様々な集団に対する癌や他の影響の推定が様々な放射線量レベルで行うことができる。多くの科学者は、もしこの情報を低放射線量(つまり診断的X線や背景放射線量)にまで下げてみても、まだ影響が少しある可能性を確信している。診断目的の医療行為によるリスクは低く、処置の必要性を考えると正当化できると考えられている。

放射線リスクを論じる時、影響は事実上確率的である。高放射線量からの予測に基づくと、発癌率の上昇は放射線量1rem当たり0.05%であると言われる。しかし、あるひとりの人が放射線による癌を生じるかどうかは予測できない。また、癌による死亡率は20%に自然変動がプラスマイナスされるので、癌が新たに増えたことを示すことさえ不可能かもしれない。つまり、10,000人の集団に4remの暴露をすると、リスクは20%から20.2%に変化するので、致死性の癌発生数は2000人から2020人に変化する。この増加度はわずか1%であり、おそらく癌発生率の自然変動内の値である。実際、10rem未満で癌が増加することは証明されていない(HPS 2004)。遺伝子異常に関しては、マウスにおける研究から、人間において変異率を2倍にするために必要な暴露量はおよそ100remであると、BEIR Ⅴ報告で述べられている。遺伝子変異は、電離放射線に暴露された人間集団においては観察されたことはない。

原爆生存者が暴露した放射線量と違い、放射線照射を含む医学検査において人々が受ける放射線量は低い(<10rem)。しかも、0.1Sv(10rem)未満の放射線量において発癌率の上昇は証明されていない(HPS2004)。

放射線照射を含む医療行為は、明らかにしなければならない疑問がある時にのみ行われるべきである‐何かが壊れていないか、拍動性の頭痛の原因は何か、癌が存在するかなどである。これは正当化と呼ばれる。つまり、X線を行うためには妥当な医学的理由があるべきである。医療放射線暴露の問題は安全性の問題ではなく、リスクと比較した利益の問題である。患者の医学的状態を考慮して必要であり、適切に行われる一般的な医療放射線処置に関しては、安全性は問題ではない。この質問は、「この患者の医学的状態に対して、これらのX線は適切な医療ケアのために必要か?」と言い換えるべきである。その決定は、医学的状態と適切な管理のために必要なケアを熟知した人によってなされるべきである。

X線は罹患部位のみに、放射線量に対する効果が最も高くなる装置の設定で行われるべきである。これにより最低量の放射線で最高の画像が撮影できる‐これは最適化と呼ばれる。不必要なX線を望まない理由はいくつかある。それは不必要な(正当化されない)放射線暴露、患者と施設のコストの増加、いくつかの処置がもつ放射線暴露以外の固有のリスク(心臓内に入るカテーテルのように)である。

放射線照射を含む医学検査を受けるかどうかの決断は患者と担当医が共同で行わなければなれない。いかなる診断目的の検査も、検査を受けなかった場合のリスクによって正当化されるべきである。例えば、いくらかの利益がなければならない。これは医師によってなされる決断の基本であるべきである。患者はいつでも検査を拒否することができるし、セカンドオピニオンを受けることもできる。あなたは、特に放射線暴露に関して抱いた不安を自由に担当医に伝えるべきである。また、その処置が必要であることを確認し、探索されている診断情報を減らすことなく、放射線量を最小限に抑えて行われるかどうかも確認すべきである。また代わりとなる診断方法があるかどうか聞いてみてもよいだろう。でも、いかなる代替方法であってもその限界と固有のリスクを忘れずに聞くべきである。

興味を持った読者は、この話題に関する詳細情報を以下の情報源で参照できる。
• ICRP 60: ICRP Publication 60, 1990 Recommendations of the International Commission on Radiological Protection. Annals ICRP. 21/1-3:1-201, 1991. Pergamon Press.
• ICRP 62: ICRP Publication 62, Radiological Protection in Biomedical Research. Annals ICRP. 22/3, 1991. Pergamon Press.
• The University of Michigan’s Radiation and Health Physics Page—this link is the “cover” page for a book titled What You Need to Know about Radiation to Protect Yourself, to Protect Your Family, to Make Reasonable Social and Political Choices. On this cover page, you’ll find titles and links to each section.
• An excellent review of radiation health effects can be found in the Executive Summary of “Health Effects of Exposures to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR V”(1990).
参考文献
• Health Physics Society. Position statement on radiation risk. McLean, VA: HPS; 2004. Available at http://www.hps.org/documents/risk_ps010-1.pdf.
• Kereiakes JG, Rosenstein M. Handbook of radiation doses in nuclear medicine and diagnostic x-ray. Boca Raton, FL: CRC Press; 212-213; 1980.
• National Research Council. Report of the Committee on the Biological Effects of Ionizing Radiations: Health effects of exposure to low levels of ionizing radiation. BEIR V. Washington, DC: National Academy Press; 175; 1990.

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野長瀬祥兼(工学/医学)訳
平 栄(放射線腫瘍科)監修
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原文


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