1930年代の薬剤が腫瘍増殖を遅らせる/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

1930年代の薬剤が腫瘍増殖を遅らせる/ジョンズホプキンス大学

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1930年代の薬剤が腫瘍増殖を遅らせる/ジョンズホプキンス大学

ジョンズホプキンス大学
2009年11月9日

薬剤にはベネフィットを与える副作用がある場合がある。緑内障を治療するとまつげが濃くなる。また血圧の薬剤は珍しい遺伝性疾患に有用である。ジョンズホプキンス大学医学部の研究者らによる最新の驚くべき発見は、淋病治療薬が癌との闘いに役立つ可能性がある、というものだ。[pagebreak]「他の作用のあることがわかっている薬剤に、別の働きが隠れていることに驚くことがよくあるのです」とジョンズホプキンス大学医学部の薬理学・分子科学の教授でProceedings of the National Academy of Sciences誌10月1日号に掲載されている本研究の著者であるJun Liu博士は言う。

今回の場合、その驚きは大きなものである。その薬剤はアクリフラビン(Acriflavine)という、1930年代に淋病治療に用いられたもので、新生血管成長を妨げるという以前は知られていなかった効果のあることが明らかになった。予備試験では、癌を発症するよう組み換えられたマウスにアクリフラビン(Acriflavine)を毎日投与すると腫瘍の増殖はみられなかった。

「癌細胞が急速に分裂するときに、相当量の酸素を消費します」とC.Michael Armstrong記念小児科教授でジョンズホプキンス細胞工学研究所の血管生物学プログラムのディレクターであるGregg Semenza医学博士は言う。「腫瘍が増殖を続けるには、新生血管を作り癌細胞に酸素を供給しなければならないのです」

アクリフラビン(Acriflavine)は、1992年にSemenza氏らが発見したタンパク質である低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor(HIF)-1)の機能を阻害することで新生血管成長を阻止する。HIF-1はその周辺環境が低酸素であると感知すると、新たな血管生成が必要と遺伝子に知らせる。HIF-1は正常な組織の成長と傷の治癒に必須であるが、また癌が生存に要する酸素を得るために、HIF-1は癌により誘導される。最も重要なことは、HIF-1が作用するためには2つのサブユニットがパズルのピースのように組み合わさらなければならない。

ほとんどの薬剤ではその分子が、それが作用する相手のタンパク質よりはるかに小さいため、タンパク質の結合を防ぐことができない。ある薬剤は、あるタンパク質表面の適切な箇所、つまり重要な領域もしくは窪みに命中して別のタンパク質との結合を阻止しなければならない。結合を阻止する薬剤は一般的ではないが、タンパク質の機能の阻止に非常に有効な手段であるため、Semenza氏はHIF-1を阻害する可能性のある薬剤を探すことにした。そのために、同氏はジョンズホプキンス薬剤ライブラリーに目を向けた。それはFDAや国際的に認可された化合物がLiu氏により集積されたコレクションである。

タンパク質結合を視覚化するため、HIF-1のサブユニットが一緒になると細胞を蛍のように発光させるよう、専門家らは細胞株を組み換えた。次に、光を消す薬剤を発見しようと、ドラッグライブラリーの3000を超える薬剤をひとつひとつテストした。アクリフラビン(Acriflavine)は光を消し、その後の研究によりHIF-1に直接結合することが確認された。

「機構的にみて、この薬剤はこの種のなかで初めてのものです」とLie氏は言う。「これはこのタンパク質ファミリーに対しては決して今までみられなかったやり方で作用するのです」

癌との闘いに役立つ多くの薬剤のひとつとして、カクテル化学療法にアクリフラビン(Acriflavine)をいつか組み入れることができるよう、Liu氏は望んでいる。

ジョンズホプキンス大学は、以前からある薬剤について新たにもっと利用するよう探求している。同ライブラリーの薬剤は現在までに、マラリア、結核、エイズ、エボラウイルスに対する使用についてスクリーニングされている。Liu氏は、ライブラリーを利用する研究者が今後もっと多くなると期待している。同ライブラリーは、さらに薬剤をコレクションに追加しながら発展し続けている。

「公開されているものでは、ジョンズホプキンスが最大の薬剤ライブラリーを有しています」と同氏は言う。「より多くの薬剤があれば可能性も広がり、何か役立つことを再発見するチャンスも高まるのです」

本研究はジョンズホプキンス細胞工学研究所およびAdvanced Research in the Medical Science基金から資金援助を受けている。

本稿の著者は、以下の通りである。
Kang Ae Lee, now of Princeton University, and Huafeng Zhang, David Z. Qian, Sergio Rey, Liu and Semenza, all of Johns Hopkins.

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柴田慶子訳
林 正樹(血液・腫瘍内科)監修
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原文


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