免疫細胞の「背信」が多発性骨髄腫の増殖を助長する/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

免疫細胞の「背信」が多発性骨髄腫の増殖を助長する/ダナファーバー癌研究所

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免疫細胞の「背信」が多発性骨髄腫の増殖を助長する/ダナファーバー癌研究所

正常な機能を回復することで新たな治療法への可能性
ダナファーバー癌研究所
2009年10月5日

多発性骨髄腫では、癌細胞の影響を受け周囲の細胞が本来とは真逆に機能するため(身体を病気から保護するのではなく、骨髄腫細胞を損傷から守る)、治療薬の多くは作用が阻害されると、ダナファーバー癌研究所の研究者らがCancer Cell誌10月号で報告した。[pagebreak]彼らは、形質細胞様樹状細胞(pDC)として知られる免疫細胞が、骨髄腫の存在下では本質的に新たな性質を担うこと、つまり悪性の骨髄腫細胞の増殖と生存を促進し、薬剤の作用を回避するのを助長し、免疫システムの全体的な力を著しく低下させることを突き止めた。

この発見は、骨髄腫の生態のあまり解明されていない側面を説明するのに役立つだけでなく、この病気に対する新たな治療アプローチを示すものである。研究者らはpDC表面の特定の位置に結合する化合物が、この細胞に元来備わっている病気と闘う性質を回復させ、骨髄腫細胞増殖の要因を排除することを突きとめた。

Ajita Singh博士と共同で本研究を行った、ダナファーバーのDharminder Chauhan法務博士/博士は「われわれの研究により、多発性骨髄腫患者の骨髄中にpDCが極めて多く認められることがわかりました」と述べている。

「pDCは免疫システムの『エフェクター』細胞、つまり体内の病気に対する攻撃として最初に免疫応答を起こすものとして知られています。しかし、骨髄腫患者の骨髄中に、なぜこのように大量に存在するのでしょうか」

近年多くの治療法が進歩しているのにも関わらず、多発性骨髄腫は依然として治癒不可能な骨髄細胞の癌であるが、免疫細胞に着目することは、その研究に新たな方向性を例示するものである。米国人でこの癌の診断が下されるのは年間1万5000人で、癌関連死の中で占める割合はわずか2%であるが、死亡率に関しては、急速に増加している癌の第4位、アフリカ系米国人の死亡原因の上位10位以内に入っている。

この疾患が最新の薬剤に対してさえ耐性を示すため、研究者らは骨髄腫の基本的な生態、特に骨髄腫細胞と周囲の細胞との相互作用について、より詳しい研究を続けてきた。

本研究でChauhan博士および共同研究者らは、研究室で増殖させた骨髄腫細胞サンプルと骨髄腫を発症した動物を用いて行った実験で、その相互作用に焦点をあてた。彼らは、pDCと骨髄腫細胞が結合すると、相互にタンパク質を放出し双方の細胞に影響を及ぼすことを突きとめた。

これらのタンパク質は骨髄腫細胞では急激な増殖を引き起こす。pDCに起こる変化は、例えば警察官が暴力団に買収されたときのようなもので、免疫システムの監視細胞としての役割を放棄し骨髄腫細胞を保護するようになるのである。

ハーバード大学医学部で主任准教授も務めるChauhan博士は「免疫細胞に別の機能への変換が認められたのは、今回が初めてです」と述べた。試験責任医師らは、この変換がどのように起こるのかはまだ明らかにできていないが、タンパク質がpDC内で活性化する別の遺伝子発現を引き起こしているのではないかと考えている。

今後に期待が持てるのは、逸脱したpDCを本来の機能に戻すことができると考えられることである。研究者らはCpG ODN(シトシン-リン酸-グアニン オリゴデオキシヌクレオチド)として知られる化合物がpDC表面にある主要なレセプターに結合すると、再び免疫システムとして正常に機能するようになり、骨髄腫細胞の増殖促進をしなくなることを明らかにした。

CpG ODNのなかにはすでに別の種類の癌での臨床試験が行われているものがあり、Chauhan博士らは間もなく骨髄腫患者での試験を開始したいと考えている。

「多発性骨髄腫の治療としては、癌細胞自体を破壊する薬剤に加え、この病気で免疫システムが果たす役割を標的とした薬剤も考えられます」とChauhan博士は述べている。「われわれの研究結果はこのような治療法への期待が持てるものです。」

本研究の統括著者である、ダナファーバーのKenneth Anderson医師は「これは、骨髄腫患者の免疫機能を強化することで感染症を減少させることになり、現在の治療では治癒が困難な骨髄腫の治療法として可能性があります」と付け加えている。

共著者は以下の通りである。
Mohan Brahmandam, Ruben Carrasco, Madhavi Bandi, Teru Hideshima, MD, PhD, Giada Bianchi, Klaus Podar, MD, PhD, Yu-Tzu Tai, PhD, Constantine Mitsiades, MD, Noopur Raje, MD, and Paul Richardson, MD, of Dana-Farber; David Jaye, MD, of Emory University; Shaji Kumar, MD, of the Mayo Clinic; and Nikhil Munshi, MD, of the Veterans Administration Healthcare System in Boston.
本研究は、米国国立衛生研究所およびMyeloma Research Foundationから助成金を受けた。

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河原 恭子訳
林 正樹(血液・腫瘍内科)監修
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原文


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