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2010/05/04号◆特別リポート「S状結腸鏡検査は大腸癌の罹患率、死亡率を顕著に低下させる」

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2010/05/04号◆特別リポート「S状結腸鏡検査は大腸癌の罹患率、死亡率を顕著に低下させる」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年5月4日号(Volume 7 / Number 9)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇
S状結腸鏡検査は大腸癌の罹患率、死亡率を顕著に低下させる

55〜64歳の間に行われるただ1回のS状結腸鏡検査が、大腸癌の罹患率と死亡率を低下させる有用なスクリーニング方法であると英国で17万人以上の患者が参加した研究(現在までに公表されたこの種類では最大のランダム化臨床試験である)の長期結果により明らかにされた。4月27日にLancet誌電子版に公表された上記の試験結果は、S状結腸鏡検査が大腸癌の罹患率、死亡率双方を低下させることを初めて実証した。

以前のランダム化試験によると、便潜血検査による定期検診は、大腸癌の罹患率と死亡率をわずかに改善させるとされている。しかしこれらの新しい試験結果によると、この年齢群でのたった1回のS状結腸鏡検査は 「非常に大きな効果があり」、全体的な大腸癌の罹患率と死亡率をそれぞれ31%、43%低下させる、と臨床試験責任医師であるインペリアル・カレッジ・ロンドンのDr. Wendy Atkin氏は述べた。

本研究へ参加するために参加者はアンケートに答える必要があった。このアンケートは約37万人に送付され、検診の案内を希望するか否かが尋ねられた。この案内を希望した群から、約3分の2(約13万人)が対照群へと無作為に割り付けられた(すなわち彼らは検診のための実際の案内を受け取っていない)。そして残り(約57,000人)の人々には検診の案内状が送付された。この後者の群の71%、約41,000人、に対しS状結腸鏡検査が行われた。

検査が施行された参加者に小さなポリープが見つかったときには、それらは切除された。腺腫のようにハイリスクのポリープがあった参加者は大腸内視鏡検査を勧められた。先週公表された結果によると、参加者の経過観察期間は中央値11年であり、英国国営医療制度(NHS:National Health Service)による集中データベースを通じてこの経過観察は行われた。

下部結腸(あるいは遠位結腸)に限定して分析すると、大腸癌の罹患率はおよそ50%、コントロール群に比較すると低下した。しかしこの部位の癌に関する死亡率については解析されていない。

検査を受けた後のこの部位の癌の罹患率は「非常に低く、今までのところ検診による予防効果が減少することはほとんどないと思われる」と研究著者は記している。また、時間が経過するとともに癌罹患率と死亡率に与える影響が大きくなるだろうと期待される、とAtkin氏は述べた。

「あらゆる癌検診に比較して、この便益が大きいということは良いニュースである。とりわけ乳癌のマンモグラフィーや前立腺癌のPSA抗原(前立腺特異抗原)と比較して」とノースカロライナ大学チャペルヒル校内科、疫学部のDr. David Ransohoff氏は本研究結果に対する解説をLancet誌へ記載している。しかし「この低下は大腸内視鏡に期待される基準には達していないし、ランダム化データに基づいたものでもない」としている。

本試験において、このS状結腸鏡検査と大腸内視鏡検査(米国では一般的だが英国ではそうではない)との比較はしていない。大腸内視鏡検査は結腸の全範囲を観察することができる一方、S状結腸鏡検査は 結腸の下部4分の1から2分の1までしか観察できない、とカイザーパーマネンテ病院北カリフォルニア研究部門の胃腸科専門医・研究員のDr. Theodore R. Levin氏は説明した。

大腸癌の60〜70%はS状結腸鏡で到達可能な結腸の範囲で生じる、と過去の研究から示唆されるので、この事実は必ずしも本研究の価値を下げるものではないと同氏は述べた。最大の影響を得るために最も有効な方法を探したため、本試験のデザインは「非常に目新しく革新的」であったとLevin氏は続けた。

さらに向上させるためには?

「より頻繁に内視鏡検査を行うことが大腸癌のさらに大きな減少に結びつくかどうかという問題がある」とRansohoff氏は記した。NCIが主導した前立腺癌、肺癌、大腸癌、および卵巣癌(PLCO)スクリーニング試験によってこの問題に対する回答が得られるだろうと同氏は述べた。PLCOでは2回のS状結腸鏡検査を行う、すなわち試験開始時の1回目および5年後の2回目である。したがって、患者はより多くの大腸内視鏡検査を受けることになる。

熱心に検診をすればするほど、受診者をより多くのリスクに晒すことになってしまうため、より頻回な検診を正当化するに十分な便益の大きさがあるかどうかが重要な問題である、とLevin氏は述べた。

米国では50歳以上の人々(ほとんどの集団が検診を始めるように勧められる年齢)にいかなる方法でも大腸癌検診を受診してもらうことさえ依然として困難な状況であり臨床的に大きな問題となっている。試算によると、この集団の検診受診率は約55%である。2月、大腸癌の最先端科学会議に参加した専門家パネルは、米国における大腸癌の検診受診率を改善するための戦略を確認した。検診受診率は、主に大腸内視鏡検査の使用増加により改善した。しかしアクセシビリティとスタッフ配置の問題から、本パネルでは大腸内視鏡検査のみで達成できる受診率には限界があると認識した。

また、大腸内視鏡検査が検診として最適な方法かどうかは不明確である。大腸内視鏡検査を行うことが大腸の上部から発生する癌の罹患または死亡のリスクを減らすかどうかは疑問であることが最近の研究によって提起されてきたことをRansohoff氏は説明した。同時に、大腸癌の検診方法に関する現行のガイドラインは混乱している。例えば、米国予防医療作業部会(U.S. Preventive Services Task Force)による直近の勧告では単一のいかなる検診方法(便潜血検査または注腸造影を含む)も特に優れているとはしていない。しかし米国大腸癌関連学会専門委員会(U.S. Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer)および米国がん協会(American Cancer Society)のガイドラインでは、現在提供されるどの方法よりも大腸内視鏡検査を推奨している。

PLCOに加え、S状結腸鏡検査を用いた大腸癌のスクリー二ング検査について現在2件の大規模ランダム化試験が欧州で進行中である。大腸内視鏡検査とS状結腸鏡検査を一対一で比較した試験の成功は非常に難しいだろう、とLevin氏は述べた。S状結腸鏡検査の有効性のために、両方の検査における統計的有意差を示すためには膨大な数の試験参加者が要求されるからである。

— Carmen Phillips

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佐々木 了子 訳
鵜川 邦夫(消化器内科医/鵜川医院)監修

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