2009/02/24号◆特別レポート「脳腫瘍に高頻度に見つかった新たな変異」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/02/24号◆特別レポート「脳腫瘍に高頻度に見つかった新たな変異」

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2009/02/24号◆特別レポート「脳腫瘍に高頻度に見つかった新たな変異」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年2月24日号(Volume 6 / Number 4)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇特別レポート◇◆◇

脳腫瘍に高頻度に見つかった新たな変異

脳腫瘍の遺伝子上の変化に関する最近の研究から、IDH1とよばれる遺伝子が、分析した神経膠芽腫の10%を超える割合で変異しているのが発見された。この変異は、若年患者に起きる傾向があり、変異のない患者と比べると若干長い生存期間と関連していた。

デューク大学医療センターおよびジョンズホプキンスキンメルがんセンターの研究者らが行った追跡調査から、現在、IDH1およびその関連遺伝子であるIDH2が、最も頻度の高い脳腫瘍である神経膠腫の3つのタイプで高頻度に変化していることが示されている。これらは、低グレードの星細胞腫乏突起膠腫および二次性膠芽腫である。

この変異は、中枢神経系以外の500近い腫瘍ではみられないものであった。さらに、神経膠芽腫の中で、IDH変異は、低グレードの腫瘍に高頻度にみられており、この変化がこのような腫瘍の始まりと進行を進めている可能性があることが示唆されると、この研究者等はNew England Journal of Medicine (NEJM)誌2月19日号に報告した。

昨年まで、IDH1は細胞のエネルギー産生に関与しており、脳腫瘍とは関連していないと考えられていた。IDH変異がどのように遺伝子または細胞に影響するかはまだ明らかではないが、445の脳腫瘍を分析したところ、変異が遺伝子の特定の領域に局在することが示された。

「これらは非常に特異的な変異です」と主席研究者であるデューク大学のDr. Hai Yan氏は述べた。この変異は米国で毎年脳腫瘍になる約6,000人の子供と大人に影響している可能性があると、研究者らは見積もっている。

この研究から、IDH1変異のある神経膠芽腫の患者は、変異のない患者よりも治療結果がよいという初期の知見が確認され、IDH2変異も同様に考えられることが確認された。両方の遺伝子に変異を持つ神経膠芽腫の患者は平均31カ月生存していたのに対して、両方の遺伝子に変異を持たない患者は平均15カ月であった。

さらに、検査から変異陽性とされた退形成性乏突起星細胞腫患者では生存期間中央値が65カ月であり、変異陽性でない患者の20カ月より長かった(乏突起膠腫患者については、変異を持たない腫瘍患者数が十分でなかったため、生存期間のデータを比較できなかった)。

研究者らは、これらの結果および培養細胞を用いた変異に関する研究に基づき、IDH変異のある神経膠腫は、腫瘍に関して臨床的にも遺伝学的にも性質を異にするグループであることを確信している。これが確認された場合、この変異は、これらの腫瘍の大元となる変化を標的とした治療法の開発をリードすると共に、疾患および予後が類似した患者を分類するマーカーとなりうる。

「次のステップでは、この変異がどのように癌に寄与しているかをさらに理解する必要がある」と共著者であるジョンズホプキンス大学の客員教授でベイラー医科大学の准教授でもあるDr. Williams Parsons氏は述べた。

「臨床的な観点からは、このような変異をもつ患者を追跡調査して、特定の治療法による治療効果や奏効率が高いか低いかを調べることは重要であろう」と氏は続けた。

IDH遺伝子は代謝酵素をコードしているため、その変異を研究することは、代謝と癌との関連性について新たな洞察につながる可能性があると、Dr.Yan氏は述べた。これは研究者にとっては興味が増す分野であり、ペンシルバニア医科大学のDr. Craig Thompson氏によるNEJM誌の付随論説の主題でもある。

「特定の癌において発病因子となる代謝酵素の変異を特定することで得られる可能性のあるベネフィットは、そのような癌が、従来の治療法よりも効果的で毒性の少ない薬理学的処置に対して感受性が高い可能性があるという点である。」とThompson氏は結論づけた。

— Edward R. Winstead

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関屋 昇 訳

大藪 友利子(生物工学)監修

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