2009/02/24号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/02/24号◆癌研究ハイライト

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2009/02/24号◆癌研究ハイライト

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2009年2月24日号(Volume 6 / Number 4)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf

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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

・前立腺癌の腫瘍マーカーとなりうる物質が見つかった
・不妊治療による卵巣癌リスクの上昇はほとんどない
・急増し続ける肝癌の発症率
・緑茶中の化合物はボルテゾミブ(ベルケイド)を阻害する
・甲状腺癌治療の標的となる遺伝子
「前立腺癌予防に関するASCO/AUA新ガイドライン」

前立腺癌の腫瘍マーカーとなりうる物質が見つかった

前立腺癌患者の腫瘍組織、血液、尿から検出される化合物の濃度が上昇していることが癌の悪性度を表すかもしれないとの新しい研究結果が示された。限局性前立腺癌患者のサルコシンという代謝産物の濃度が、癌の付近の良性組織と比較して高く、そして、転移組織ではさらに高値であった。それに加えて培養細胞を用いた実験は、サルコシンが実際に前立腺癌の悪性度に関与している可能性を示し、そして、サルコシンに関連する生化学的機構が治療ターゲットになりうると、研究者らはNature誌2月12日号に発表した。

これが確認されれば、この発見は悪性の高い前立腺癌を特定するために、おそらく一連の代謝産物を他のバイオマーカーと組み合わせることによって非侵襲的に検査できる可能性に繋げられるかもしれない。現在、医師はどの前立腺癌が生命を脅かすものであるかを予想することが出来ない。

サルコシンは、前立腺癌に罹患していない男性と様々な病期の前立腺癌患者から採取した組織、尿、血漿などの臨床サンプル262検体から1,100以上の代謝産物の系統的解析から特定された。ミシガン大学医学部のDr. Christopher Beecher氏らは、前立腺癌と良性前立腺組織を識別することができるかもしれない87種類の代謝産物を特定した。そしてサルコシンをふくむ6種類の代謝産物は、転移病巣でより高濃度であった。

NCIの早期発見研究ネットワークの研究者であるミシガン大学の Dr. Arul Chinnaiyan氏主導で追加の実験が行われ、サルコシンが前立腺癌の進展に関係していることが示された。良性の前立腺細胞にサルコシンを加えると細胞はより侵襲的となるが、癌細胞のサルコシンを減らすと細胞の浸潤能力が低下し、正常細胞のように振る舞うようになった。

Beecher氏は記者会見で、この研究が偏りのない性質であること、その重要性を強調し、そしてサルコシンはこれまで前立腺癌と関連付けられていなかったことを指摘した。Chinnaiyan氏は、メタボロームと総称される細胞の代謝産物の網羅的解析が、遺伝子やタンパク質の大規模な研究を補足できると付け加えた。「これは癌で起こる分子変化のより全体的な図を描くはずです」と述べた。

不妊治療による卵巣癌リスクの上昇はほとんどない

ここ数十年間、妊娠を望むために排卵誘発剤の投与を受けている女性は、その治療により卵巣癌の発症リスクが高まることはないとの決定的な確証はなかった。この疑問に答えるためにこれまでで最大規模のコホート研究を行ったデンマークの研究者らは、排卵誘発剤により卵巣癌の発症リスクが高まることはないと発表した。コペンハーゲンにある癌疫学研究所のDr. Allan Jensen氏主導のこの研究結果はBritish Medical Journal誌2月5日号に掲載された。

この研究は、1963年~1998年の間に不妊治療クリニックで治療を受け、中央値15年の追跡調査を行ったデンマーク人女性54,362人を対象としたもので、そのうちの156人に最終的に、浸潤性上皮性卵巣癌が発症していた。

4種類の異なる排卵誘発剤を使用した患者と排卵誘発剤を使用しなかった患者の卵巣癌発症リスクは同程度であった。このコホート研究で発症が確認された卵巣癌症例のうち58%は卵巣の外膜に発生する漿液性腫瘍であり、そして、このタイプの腫瘍の発生率は、排卵誘発剤としては最も一般的に使用されるクロミフェンの投与を受けていた女性群のみで有意に高かった。著者らは、この関連は「事実であり重要とみられる」としたが、それを確認するためには長期間の追跡調査研究が必要であると指摘した。また、卵巣癌診断のピーク年齢は通常63歳であり、この研究終了時点における卵巣癌発症患者の平均年齢が47歳であるため、研究者らは今後も追跡調査を継続する予定である。

しかしながら、「排卵誘発剤の投与を受けた女性にも、まったくの偶然から卵巣癌が発症することは否めませんが、現在のエビデンスでは、これらの排卵誘発剤を使用した女性の卵巣癌発症リスクが高まるということはありません」と、Dr. Penelope Webb氏は付随論文で解説している。

急増し続ける肝癌の発症率

NCIの研究者らが行った新しい試験は、肝癌で最も一般的な肝細胞癌(HCC)について残念なニュースと朗報の両面をもたらした。同研究者らは、1975年~2005年の間にHCCの年齢調整発症率が3倍になったとする結果を述べた一方、1992年~2005年の間にほぼ2倍となった1年生存率を含めHCCの1~5年のいずれの生存率も改善したことを報告した。この研究報告は電子版Journal of Clinical Oncology誌2月17日号に掲載された。

「今回の研究では肝癌の発症率増加の原因は特定できませんでしたが、これらの傾向はB型肝炎ウイルスと共に肝癌の主要な危険因子とされるC型肝炎ウイルスによる慢性的な感染症の増加に一因があると考えられます」と同研究の主著者でありNCI癌制御・人口学部門(Division of Cancer Control and Population Sciences)所属のDr. Sean Altekruse氏は述べた。

同研究チームは、研究を実施するにあたってNCIのSEERのデータを解析し、 1900年に遡って1950年代まで10年の出生コホートを調べた。HCCの発症率は、1975年の10万人につき1.6例から2005年には10万人につき4.9例まで総じて増加した。今回の調査期間では、HCCは女性よりも男性にきわめて多くみられ、男性の発症率は女性よりも3倍高率で、これは過去の研究結果と一致するものであった。

1992年~2005年の間にHCCの発症率が最も著しく増加した集団は、アメリカインディアン、アラスカ先住民、続いてアフリカ系米国人、白人およびヒスパニックの順であった。HCCの全発症率はアジア・太平洋諸島系米国人で最も高かったが、この民族集団における発症率の増加傾向は比較的軽微にとどまった。

生存期間の改善は早期のステージで腫瘍の診断が確定したことによると考えられるが、1年の全生存率はいまだに50%未満であり、改善の余地は大いにあると研究報告書の著者は強調した。

「この報告書は高リスク群のHCCスクリーニングを積極的に実施し、早期のステージで肝癌の治療を開始すればHCCの負担は軽減可能であると、楽観的に考える根拠となります」と研究者らは記した。

緑茶中の化合物はボルテゾミブ(ベルケイド)を阻害する

多発性骨髄腫の治療薬として承認され、その他複数の癌種に対する治療薬として臨床試験中のボルテゾミブ(ベルケイド)は、細胞構成体の一種で不要なタンパク質を分解するプロテアソームの活性を阻害する働きをする。実験室でのデータに基づき、研究者らはエピガロカテキンガレート(EGCG)を含め緑茶中の化合物を併用すると、ボルテゾミブの奏効が高まる可能性があると提唱した。

ところが、電子版Blood 誌2月3日号に発表された報告では、南カリフォルニア大学Dr. Axel Schönthal氏らは正反対の結果を得た。多発性骨髄腫患者由来の組織培養および多発性骨髄腫細胞を移植したマウスでは、多発性骨髄腫および膠芽腫の両細胞株においてEGCGはボルテゾミブの活性を完全に阻害した。実験では、薬局で販売中の栄養サプリメントの一種によって提供されているEGCGも使用された。その次に用いたサプリメントには全緑茶抽出物(GTE)および緑茶中に存在するその他数種の異なった物質が含まれていたが、これもボルテゾミブによって誘発される細胞死を妨げた。

研究者らは、EGCGがボルテゾミブの化学基(ボロン酸)と直接的に結合することを確認した。その結果、プロテアソームに結合し活性を阻害するボルテゾミブの作用(これは通常の場合、細胞ストレスと細胞死を引き起こす)が妨げられる。

「われわれは・・・[ボルテゾミブ]治療を受けている患者の方々に緑茶製品の摂取を控えるよう強く要請します。とりわけ、至る所で販売されている液状やカプセル状の高濃縮GTEについては、使用を控えてください」と著者らは述べた。

甲状腺癌治療の標的となる遺伝子

大半の標的型抗癌剤は、変異遺伝子の活性を低下させる、もしくは当該遺伝子が産生する細胞シグナル伝達タンパク質の量を減少させて効力を発揮する。フロリダ州ジャクソンビルにあるメイヨークリニックの研究者らは、現在未分化甲状腺癌(ATC)の臨床試験で試されている被検薬が、RhoBと呼ばれる腫瘍抑制遺伝子を活性化するという、通常とは正反対の機序で作用することを発見した。RhoBは新たな癌細胞の産生を阻害する遺伝子である。研究成果は電子版Cancer Research 誌2月10日号に掲載された。

また、RS5444 (別名CS7017) という被検薬を数種類の甲状腺癌の細胞株を用いて調べた。この被検薬が多数の遺伝子の発現を増強するタンパク質と結合することにより作用を発揮することは先行研究から既知であった。

彼らの実験では、RS5444処置後に上記のタンパク質がRhoBと結合し、RhoBの発現が増強されることで、タンパク質p21の増加が誘起され、これによって癌細胞の増殖阻害が起こることを示した。この増殖阻害作用はRhoBに依存する。

すべてのATC細胞がRS5444の属す薬剤群に感受性があるわけではない。感受性のないATC細胞においてもRhoBが標的となりうるか調べるため、研究者らは、染色体の構造を変更することで特定の遺伝子の発現を変化させるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を用いて感受性のないATC細胞を処置した。この方法で遺伝子構造を変えるとRhoBの発現が増強され、結果的にp21の量が増すことで癌細胞の増殖抑制が起こることが分かった。

「RhoBは重要なシグナルの節(ノード)として考えられ、ATC治療の標的となり得ます。RhoBが多種の薬剤によって増強されうる標的であることが重要なのです」と著者は結論した

前立腺癌予防に関するASCO/AUA新ガイドライン前立腺特異抗原の値が3.0以下で、前立腺癌の症状が無く、定期的に検査を予定している健康な男性は、前立腺癌発症リスクを減らすために5αリダクターゼ阻害剤(5-ARI)を服用する必要があるかどうかを主治医に相談すべきである。これは米国臨床腫瘍学会(ASCO)と米国泌尿器科学会からの勧告であり、本日公表された。

「私たちは、全ての男性に5-ARIを服用するよう勧告しているのではありません」と、米国国立衛生研究所の疾病予防の上席研究員であり、このガイドライン作成委員会の共同議長であるDr. Barry Kramer氏はASCOの報道発表の中で述べた。「しかし、5-ARIを服用することで前立腺癌発症リスクを低減させる恩恵が得られるかを判断するために主治医と相談を始めることは勧めたいと思います。」

この委員会の勧告は、フィナステリドなどのこの種の薬剤を1年~7年間服用している男性は前立腺癌発症リスクが25%低下した臨床試験の結果を基にしている。しかしながら、これらの薬剤によって前立腺癌による死亡率が低下するかどうかは明らかとなっていない。

5-ARIに関して主治医や家族と話し合う患者を手助けするために、ASCOはこれらの薬剤を服用するリスクと利益について図表などを用いて説明した意志決定ツールを発行した。このツールはASCOの患者用サイトで入手可能である。ガイドラインの全容は3月に発行されるJournal of Clinical Oncology誌とThe Journal of Urology誌に掲載される予定である。

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Nogawa、福田素子 訳

榎本 裕(泌尿器科)、村中 健一郎(生物物理学)監修

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