2009/02/24号◆特集記事「骨髄腫発症の何年も前から血液に変化が現われる」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/02/24号◆特集記事「骨髄腫発症の何年も前から血液に変化が現われる」

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2009/02/24号◆特集記事「骨髄腫発症の何年も前から血液に変化が現われる」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年2月24日号(Volume 6 / Number 4)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇特集記事◇◆◇

骨髄腫発症の何年も前から血液に変化が現われる

ほとんどの多発性骨髄腫患者において、血液に特徴的な変化が現われ、それは時に診断の何年も前から認められうることが、新たな研究によって明らかにされた。この前兆段階に現れる変化は、意義未確定の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)といい、最も早い場合、癌の症状が現れる10年前には検出可能である。

Blood誌電子版で1日29日に報告されたこの試験は、MGUS患者のうち多発性骨髄腫を発症するのがごくわずかであるため、すぐに患者に影響を及ぼすとは思われない。しかし、この研究結果は研究者にとって、多発性骨髄腫の自然史を理解し、いずれはどのようなMGUS患者でがんが進行するのかを予測するマーカーを同定する手がかりとなりうるものである。

「このことにより、研究の観点からは多発性骨髄腫の発症と進行を研究する時間枠が得られたことになる。大きな前進である」と、主任研究者であるNCIのDr. Ola Landgren氏は言う。

多発性骨髄腫は、白血球の一種である形質細胞の癌である。MGUSの診断を受けた人の一部に多発性骨髄腫が発現することは、数十年前から知られていた。

しかし、多発性骨髄腫の前に常にMGUSが現われるどうかについては、この分野では見解が分かれている。従来は、この問題を探るための良い方法が存在しなかった。何しろ、ほとんどの骨髄腫患者には、診断前に血液を採取する理由がなかったであろうことから解析に用いる診断前血液検体がなかったのである。

希少な検体

NCI癌疫学・遺伝学部門(Division of Cancer Epidemiology and Genetics、DECG)のLandgren氏らがそのような検体を見出したのは、前立腺癌・肺癌・大腸癌・卵巣癌(PLCO)スクリーニング試験である。NCIが後援するこの試験では、1992年以降77,000人を超える人々から連続して血液検体を集めており、癌の初期マーカーを研究するための貴重な資料となっている。

この中から、試験期間中に多発性骨髄腫が発現した71人が特定された。研究チームが診断前血液検体を検討したところ―つまり時間を遡って調べる―ほとんどの患者でMGUSの所見が認められ、一部症例では多発性骨髄腫の診断を受ける10年も前に所見が現われていた。

「このことから、事実上どの多発性骨髄腫患者でも、その前には前兆段階が存在することがはっきりと示された」と、首席著者であるメイヨークリニック(ミネソタ州ロチェスター)のDr. S. Vincent Rajkumar氏は語った。同氏は、MGUSを大腸癌に先立って出現するポリープと比較し、「この研究が弾みとなって前兆段階を特定する方法が見つかれば、いずれはこの情報を利用して患者を助けることができる」と言う。

アーカンソー大学医学部で多発性骨髄腫を研究するDr. John Shaughnessy氏は、今回の研究にはかかわっていないが、研究結果を「きわめて刺激的」と評した。同氏は研究の範囲と規模の大きさに感心し、医学界にとって、これらの前兆段階を今後さらに精査するきっかけになると評価している。

「最終的な問題は、結局、この研究結果がより先手をとった治療法に結びつくかどうかである」とShaughnessy氏は付言した。

実体の追跡

理論的には、基本的にMGUSを「治療する」ことによって多発性骨髄腫を封じることができると思われるが、その方法はまだ誰にもわかっていないと、共著者であるメイヨークリニックのDr. Robert A. Kyle氏は述べる。現在、そのための薬剤はなく、MGUS患者のうちの多発性骨髄腫に進行する人の少なさを考えると、発症しない多くの人にとって、スクリーニングは不必要な費用負担と不安を与えることになる。

Kyle氏が初めてMGUSと呼ばれる「疾患概念」について記載したのは30年前である。通常、偶然に発見されるこの疾患には50歳以上の米国人の3%が罹患する。毎年、このうち約1%の人が多発性骨髄腫に進行する。ガーナのDCEG試験をはじめとする報告数件から、アフリカ系の人たちの方が白人よりMGUSの割合が高いことが示されている。

Kyle氏は、「MGUSは多発性骨髄腫の前癌状態であり、多発性骨髄腫患者では必ずMGUSかくすぶり型骨髄腫が先に出現すると感じていた」と、通常は症状がみられないもう一つの前癌状態に言及している。「今回得られた新たな研究結果により、われわれがそうではないかと感じていたことが裏づけられた。」

また、「比較的短期間のうちに、知見が著しく向上した」とも語っている。

すばやい確認

Blood誌電子版に先週発表された別の新たな試験によって、今回の試験結果が裏づけられている。軍人集団の診断前血液検体のレトロスペクティブ解析により、特定された多発性骨髄腫患者30人のうち27人以上でMGUSが先に出現していたことが確認された。PLCO癌スクリーニング試験と同じく、2年ごと(今回の場合)に採取された診断前血液検体を貯蔵し、検討が行われた。

「(PLCO試験と)きわめてよく似た解答にたどり着いたことから、試験結果の妥当性が確認された」と、NCI癌研究センター(Center for Cancer Research, CCR)のDr. Michael Kuehl氏は言う。同氏は、ウォルター・リード陸軍医療センター(Walter Reed Army Medical Center)のDr. Brendan Weiss氏と共同で試験を指導した。

軍隊やPLCO試験などから得られる希少な診断前検体が、多発性骨髄腫におけるMGUSの頻度を研究する唯一の方法であるとKuehl氏は強調した。「MGUS患者を募集してプロスペクティブに経過観察することもできるが、『新規発症の』多発性骨髄腫患者が仮にいた場合には、その人を見つけることはこの方法ではできない。」

入手された検体は、癌に進行する患者を予測するマーカーを探索するため利用される。このほか、最近CCRに加わったDr. Landgren氏やKuehl氏らは、MGUS患者とくすぶり型骨髄腫患者に関する縦断的研究を立案しているところである。目標は、進行マーカーを発見し、最終的には早期治療戦略を立てることである。

白血病との類似

Landgren氏らは、PLCOの検体を用いて慢性リンパ性白血病(CLL)の前兆段階を探り、New England Journal of Medicine誌2月12日号に報告している。CLLは、欧米諸国では成人の間で最も頻度が高い白血病であるが、その原因と自然史の大部分は謎に包まれている。

この研究では、PLCO試験からCLL患者45人を特定したところ、一人を除く全員にモノクローナルB細胞リンパ球増加症(MBL)が既に存在していた。最も早い場合でCLL診断の6.4年前には、CLL患者らの家族などで従来から報告されているMBLの所見が存在していた。

「驚いたのは、診断前血液検体の試験ではCLL患者のほとんど全員に変化がみられたことである」と、首席著者であるDCEGのDr. Neil Caporaso氏は言う。同氏は、「不明な点がこれほど多い疾患では、今回の結果が研究者らにとって新たな指針となり、研究課題に劇的な影響を及ぼすだろう」と予測した。

MBLは、50歳以上の白人の約5%が罹患している可能性がある。このうち、1%の人においてCLLに進行し、治療が必要になる。CLLが診断される前のMBL頻度の評価をしたいと望んでいた研究者は多く、最近の技術の進歩とPLCOの検体によって、ついにその研究が実現可能になった。

「PLCO試験は驚異的な資料である。この血液は過去への開かれた扉だ」とCaporaso氏は語っている。

— Edward R. Winstead

2月25日から3月1日までワシントン市で開催される第12回国際骨髄腫ワークショップ(XII International Myeloma Workshop)には、多発性骨髄腫とその関連疾患に関心を寄せる1400人以上の研究者と臨床医の参加が予想されている。

画像原文参照
【上段画像下キャプション訳】多発性骨髄腫患者から採取した形質細胞の異常染色体(アーカンソー医科大学の骨髄腫研究治療協会(画像提供:Myeloma Institute for Research and Therapy)のDr. Bart Barlogie氏およびDr. Jeffrey Sawyer氏による)

【中段画像下キャプション訳】メリーランド州フレデリックの前立腺癌・肺癌・大腸癌・卵巣癌(PLCO)生体試料貯蔵庫には、多発性骨髄腫患者の診断前検体を含む300万近くの検体が貯蔵されている。

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nobara 訳

林 正樹(血液・腫瘍医)監修

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