2009/03/10号◆クローズアップ「大腸関連の補完代替医療は十分な検証が必要と警告」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/03/10号◆クローズアップ「大腸関連の補完代替医療は十分な検証が必要と警告」

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2009/03/10号◆クローズアップ「大腸関連の補完代替医療は十分な検証が必要と警告」

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2009年3月10日号(Volume 6 / Number 5)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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クローズアップ

大腸関連の補完代替医療は十分な検証が必要と警告

より清潔で、より「自然な」ライフスタイルを求める時流に乗り、多くの米国人が大腸の健康を増進する補完代替医療(CAM)に傾倒している。

考え方はこうだ。食物連鎖における人間の位置づけを考慮すると、大腸は大気中や水中の汚染物質から人工着色料、保存料に至るまで環境中の有毒物質にさらされている可能性がある。

大腸関連CAM手法の利用を支持する体験談が広まっているが、癌を予防できるという確信を証明できるだけの十分な科学的証拠があるのだろうか。答えはノー。だが、このような時流が存在するからには、なぜこの手の話がしぶとく存続するのか、当然詳しく調査すべきである。

「衛生的」アプローチか?

これらのCAMで人気上昇中なのが通称腸内洗浄と呼ばれる結腸洗浄療法だ。直腸に特別なノズルを挿入し、大腸全体に濾過した温水を優しく吹きつけて内容物を廃棄物容器に排出させ、新しい溶液で同じことを繰り返す。この手順は約1時間続けられ、水の使用量は約76リットルに達する。腸内容物はすべて除去される。

Integrative Healing Center & Spaの医長で統合医療を実践するDr. Kamau Kokayi氏によると、同センターで提供されているホリスティック療法のうち、腸内洗浄がもっとも人気が高いという。ニューヨーク州マンハッタンにある同氏の事業所では、年間約2,000件実施されている。「体内の主要なパイプラインである大腸が汚物で詰まり、適切に動かなければ、自家中毒の状態になります。腸内洗浄は体内浄化に実際に有用なのです」と同氏は説明した。

Kokayi氏とともに従事する正看護師のBarbara Chivvis氏によると、腸内洗浄を受けに来た人の約半数が大腸癌のリスク低減に関心があると話すという。また腸内洗浄を受けに来た人の中にはすでに癌治療を経験した人もおり、化学療法や放射線療法により残留した有毒物質の排除を希望しているとChivvis氏は話した。

効果は確かか?それとも 単なるプラセボか?

メリーランド州ベセスダの国立海軍医療センターの消化器科部長、Dr. Brooks Cash氏の認識では「腸内洗浄を受けた後は、100%違いを実感します。腸内洗浄にどのような意味があるにせよ、気持ちが軽くなったりすっきりしたりするでしょう。しかし、人間の腸が古い金属パイプのように詰まるという証拠はありません。便は、壁穴の補修剤のように腸管に接着するものではありません。排出しようと絶えず押し出されているのです」という。

Cash氏はまた、「何百年と続けられている手法にもかかわらず腸内洗浄を支持するデータがないということは、健康上の利益を引き出すという観点からすれば中止すべきだということです」と付け加えた。

学術誌に掲載された腸内洗浄に関する記事のほとんどは水以外の液体(たとえばコーヒーや過酸化水素水など)を洗浄に用いた事例で、処置後に重大な損傷を与えた症例の報告だ。その他重大な副作用としては電解質平衡異常、細菌感染、体液過剰、腸管穿孔などがある。

全体的に腸内洗浄に否定的な証拠が多く、肯定的な証拠を示す調査も不足していることから、アメリカ癌協会は2007年に、腸内洗浄が癌およびその他の疾病に対する治療効果があるとする主張を信じるべきではないという声明を発表した。

NCIの癌の補完代替医療室室長、Dr. Jeffrey White氏は次のように述べた。腸内洗浄がどのようにして効果を発揮するか(腸内細菌叢に特定の効果があるなど)、および前癌状態の結腸ポリープの増大、進行にどのような効果をもたらすかを示す予備的なデータを、資金援助してくれそうな政府系基金か民間企業に提供できるならば、将来的には癌研究団体、医学団体、あるいは「代替ヘルスケア」団体からでも腸内洗浄の効果を確かめるランダム化前向き臨床試験が出てくるだろう、と。しかしそのようなデータはまだ集まっていない。

「臨床研究を実施すれば、どの患者が腸内洗浄のようなCAMで利益を得られるかを判断したり、利益が得られない患者の特徴を特定する一助となるでしょう」とWhite氏は述べた。

腸内細菌を強化する

主流となってきている他のCAMで、初期臨床試験の対象ともなっているものにプロバイオティクスとプレバイオティクス利用がある。プロバイオティクスは生きた微生物(主として細菌)で、サプリメントとして商業ベースに乗っており、ヨーグルト、ケフィア(さらに発酵が進んだヨーグルト)などの食品が入手可能である。国立補完代替医療センターによると、米国人のプロバイオティクスサプリメントの消費量は1994年から2003年の間に3倍に増加したという。

プレバイオティクスはプロバイオティクスに関連するサプリメントで、腸内細菌の栄養源となるものだ。いずれも最終目標は消化を助け、周辺組織の環境を健康的なものにする「善玉」細菌を増やすことだ。プロバイオティクスの流行は腸内洗浄とも関連しており、処置後に洗浄で洗い流された細菌叢を元に戻すためにサプリメントを摂取する人が多い。

プロバイオティクスおよびプレバイオティクスがどれほど癌を予防しうるかという調査研究記事が増えてきている。

例として、大腸癌もしくは疑わしいポリープの治療を受けた80人の患者を対象に、プレバイオティクスの一種であるイヌリンというチコリの根由来の長鎖多糖類と、細菌株Bifidobacterium lactisおよびLactobacillus rhamnosusを投与する12週間のランダム化前向き試験を実施した。本レジメンにより、免疫機構が感染防御のために出すサイトカインであるインターロイキン-2やインターフェロンγなど、細胞の生存に関する結腸のバイオマーカーに若干の変化が見られた。しかし、これらの変化は癌患者とポリープの既往歴のある患者とでは異なっていた。

これを詳細に調査するため、異常腺窩巣という前癌病変のリスクに対するイヌリンの効果と、コレステロール抑制薬アトルバスタチン(リピトール)+非ステロイド系抗炎症薬スリンダクの効果を比較する第2相臨床試験をNCIが現在支援している。

NCI癌予防部門で消化器・その他の癌研究グループ長のDr. Asad Umar氏は、これらの臨床試験は癌発生を見るように設計されていないため、よく見ても将来にわたり継続すべき研究の方向性を示すのがやっとである、と指摘した。

他の前臨床的な動物実験では、腸内細菌が発酵の過程で産生する一部の短鎖脂肪酸が周辺の粘膜組織の免疫応答を刺激するということが示されている。しかし、ヒトと動物の腸内細菌叢はかなり異なっている、とUmar氏は指摘した。「バイオマーカーの変化をみる初期研究が肯定的結果であれば、これら知見の延長線上にあるものすべてをランダム化臨床試験で答えを出す必要があるでしょう」とUmar氏は述べた。

大腸癌のリスクを下げるために最大限できることとは、今もなおスクリーニング検査のガイドラインに沿うことだ、とUmar氏は強調した。スクリーニング検査により医師は癌の徴候または初期の癌を発見することができ、この時期ならば容易に治療は成功する。

Umar氏は腸内洗浄の流行は憂慮すべきことだと述べた。消化の過程で腸内容物に含まれる「毒」成分に長期的に曝露されることを気にする人は、ポリープ予防臨床試験(PPT)などの研究を知ってほしいという。同試験では果物や野菜類などを含む低脂肪で高繊維質の食事によって結腸ポリープのリスクが減少するという事実は示されなかった。

「多くの癌で環境が因子の一つであることは事実ですが、現時点で最大の予測因子の一つは家族歴であることに変わりはありません」とUmar氏は話した。

画像原文参照
【中段画像下キャプション訳】下部消化器系の構造。結腸およびその他の器官(© 2009 Terese Winslow)

—Brittany Moya del Pino

3月は大腸癌月間です。NCIがん情報(PDQ)要約を引用:•年齢、肥満、運動不足、喫煙、飲酒は大腸癌のリスクを高める可能性があります。
•ホルモン置換療法およびポリープの切除は大腸癌のリスクを下げる可能性があります。
•非ステロイド系抗炎症薬、ビタミン、食事、コレステロール低下薬が大腸癌のリスクに与える影響はまだ明らかになっていません。大腸癌(結腸癌および直腸癌)について、新しい診断法や治療法を調査する臨床試験や、癌の予防法などNCIの詳しい情報はオンラインで入手可能です。(先端医療振興財団「がん情報サイト」日本語訳

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橋本 仁 訳

鵜川 邦夫(消化器内科)監修

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