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2009/03/10号◆癌研究ハイライト

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2009/03/10号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年3月10日号(Volume 6 / Number 5)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・脳腫瘍に対するレジメンで生存期間が延長
・少量から中程度の飲酒で癌リスクが増大することが示唆
・ホジキンリンパ腫の化学療法による中皮腫リスクの上昇
・遺伝子と喫煙の関連性が確認される

脳腫瘍に対するレジメンで生存期間が延長

Lancet Oncology誌3月9日号の電子版に掲載された大規模臨床試験の最新結果によると、テモゾロマイド(テモダール)と放射線療法の併用治療を受けた脳腫瘍患者は放射線療法単独治療の患者よりも長く生存し、5年経っても、患者によっては延命効果があることが示された。一方、研究者らは、併用療法による治療効果は良好であったが、患者の大半は最終的に再発し死亡したということも警告した。

2004年、欧州およびカナダの研究者らにより、EORTC-NCIC試験において放射線療法単独治療の患者と比較した併用療法の患者の生存期間の延長が初めて報告された。その期間はわずか(数カ月)であったが、この致死的な病に対する数十年ぶりの治療上の進歩であった。その結果、テモゾロマイドと放射線の併用レジメンが膠芽腫の標準的治療となった。

今回更新された結果によると、3年の時点で、放射線単独群のわずか4%に対し、テモゾロマイド併用群の16%が生存していた。放射線治療単独群とテモゾロマイド併用群の4年および5年の時点での生存率は、それぞれ、3%と12%、1.9%と9.8%であった。

高齢患者および腫瘍摘出手術ができなかった患者を含め、予後を変える可能性のある因子別に解析しても、すべての患者で生存期間の延長が認められた。予後が良好な患者では、2年時点で41%、5年時点で28%が生存していた。テモゾロマイドの効果には、MGMTと呼ばれる遺伝子の不活性化が大きく関与していた。

脳腫瘍に対する新たな治療が必要であり、複数の試験においてテモゾロマイドと放射線療法に他の治療を追加することを試験中である、と研究者らは言及している。「より良い治療が利用できるようになるまで、放射線療法と併用ないしは補助療法としての化学療法が現時点での治療標準である」と記した。

少量から中程度の飲酒で癌リスクが増大することが示唆

英国の研究者らによる新たな研究によると、女性では、少量から中程度の量のアルコール摂取は数多くの癌のリスクを高め、いくつかの癌のリスクを軽減しうるとみられる。今回の研究はJournal of the National Cancer Institute誌2月24日号電子版に掲載された。

リスクの増大を伴う癌(例えば乳がんのような他の研究でも示されているもの)に関しては、女性がどのような種類のアルコールを最も多く摂取したか、もしくはホルモン補充療法を受けていたかどうかによる違いはなかったことが判明した。しかしながら、上気道消化管(口腔、食道、喉頭、および咽頭)の癌に関しては、アルコール摂取に伴うリスクの増大は喫煙習慣もある女性にのみ認められた。直腸癌および肝臓癌の発生率も飲酒量とともに増加したが、甲状腺癌、腎細胞癌、および非ホジキンリンパ腫では減少した。

「1日に1杯追加することに伴う絶対リスクの上昇は、癌の部位によっては取るに足りないくらい小さいように思えるかもしれないが、多くの女性の間で中程度の量の飲酒者率が高いということは、アルコールに起因する癌の比率が重大な健康問題であることを意味している」と、筆頭著者であるオックスフォード大学のDr. Naomi Allen氏らは結論づけた。

この研究は、1996年から2001年にかけて英国の乳癌スクリーニングクリニックで募集した女性を対象とした、Million Women Studyのほぼ130万人の参加者から得たデータを解析したもので、飲酒を報告した女性は平均で1日1杯飲酒しており、参加者の約25%が非飲酒者であった。

現時点で明らかになっていないことは、特定の女性にとって、数多くの疫学的研究が示唆している心血管疾患のリスク低下など、アルコール摂取の効果においてはトレードオフが成り立つかどうかという点である、とNCI(米国国立癌研究所)癌疫学・遺伝学部門栄養疫学主任であるDr. Arthur Schatzkin氏は説明した。しかしながら、特定の癌、特に乳癌にとって、「度を過ごさない程度であっても、アルコール摂取は修正可能なリスク因子である」ことはあきらかだ、と述べた。

NCIでは、NIH-AARP Diet and Health Study(国立衛生研究所-AARP食生活と健康試験)のデータを用いて、少量から中程度の量のアルコール摂取の全体的な疾病リスクと効果を解析する予定であるとSchatzkin氏は言及した。

ホジキンリンパ腫の化学療法による中皮腫リスクの上昇

悪性中皮腫の主なリスク因子は、アスベストへの暴露である。しかしながら、Blood誌2月20日号電子版に掲載された新たな結果では、放射線療法、とりわけ胸部照射もリスクを高めるというエビデンスが付け加えられている。ホジキンリンパ腫(HL)の長期生存者を対象とした今回の研究で、化学療法を受けたこともある放射線療法の患者においてリスクが最大となることが明らかにされた。

1965年から1995年にかけてオランダでHLの治療を受けた2,567人の患者群に対して、中央値18.1年間の追跡調査が行われた。男性8人および女性5人のみに中皮腫が発生したが、この比率は一般母集団の25.7倍であった。女性のリスク(一般母集団の85倍)は、男性(一般母集団の18倍)よりも著しく高かった。

患者が最初に受けたHLの治療の種類毎にもリスク分析が実施された。中皮腫は、放射線単独治療の730人では1人のみに発症し(一般母集団の5.8倍増)、化学療法単独治療の232人においては発症が認められなかった。残りの12人は両方の治療を受けており、本疾患が発生する可能性は一般母集団の44.8倍であった。1例を除く全症例において、中皮腫腫瘍はHL治療中に照射を受けた領域で発生した。

アスベスト暴露歴が確認されたのは患者の中で7人のみであった。歴史的にみると、オランダでは、アスベスト暴露歴がない悪性中皮腫患者は、約7人に1人のみである。従って、「以前照射を受けたことがある患者に新たな症状が現れた場合は常に中皮腫の診断を思い浮かべるべきである」とオランダ癌研究所のDr. Marie L. De Bruin氏は述べた。

遺伝子と喫煙の関連性が確認される

遺伝子は喫煙に影響を及ぼす可能性があるという初期のエビデンスは、何年も前に双生児の研究から生まれた。最近では、ゲノムワイド相関解析(GWAS)によって、遺伝子と、喫煙開始年齢や1日の喫煙本数などの、喫煙行動の特徴との関連性を検討してきた。

今回、この調査作業を踏まえて、喫煙の開始から依存性への進行、および健康への影響までの喫煙行動全般における7つの重要事象と遺伝子との相関を検証した。ゲノムワイドおよび候補遺伝子アプローチを用いて、喫煙者2,600人を含む4,600人のDNAが解析された。候補遺伝子に関しては、影響を及ぼしていると考えられる数百の既知遺伝子が特別に評価された。

今回の結果は、ニコチン受容体遺伝子と脳のドーパミン系に関わる遺伝子が関係しているとするこれまでの報告を裏付けるものである。特に、ドーパミンの機能低下を促進するMAOAと呼ばれる遺伝子は、1日の喫煙本数と強い相関があった。

ゲノムワイドな統計で有意性が示された特定の染色体領域はなかったが、今回の研究では今後の調査に向けた優先遺伝子のリストが示された。NCI癌疫学・遺伝学部門のDr. Neil Caporaso氏らは、PLoS One誌2月27日号電子版に研究結果を発表し、ゲノムワイドで有意な結果が得られないということは、一般的な変異が個々に喫煙行動に及ぼす影響はわずかであることを示唆するものである、と述べた。

「様々な喫煙行動を調べるこのような研究は今回が初めてであった」とCaporaso氏は述べた。「喫煙に関わる遺伝子を同定することによって、より効果的な予防および治療法を開発したい。ブプロピオンバレニクリン2種類の禁煙補助薬は、喫煙行動と相関がある遺伝子に関係している標的と相互作用して効果を現す可能性が高い」と同氏は言及した。

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豊 訳

後藤 悌(国立がんセンター中央病院 内科)監修

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