低用量エストロゲンが転移性乳癌に安全性と効果を示す/ワシントン大学 | 海外がん医療情報リファレンス

低用量エストロゲンが転移性乳癌に安全性と効果を示す/ワシントン大学

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

低用量エストロゲンが転移性乳癌に安全性と効果を示す/ワシントン大学


ワシントン大学セントルイス校
2009年8月18日

エストロゲン低下剤がもはや転移性乳癌を抑制しない場合、これと反対の方法が効果を示す可能性がある。セントルイスのワシントン大学医学部と共同研究機関が実施した研究によれば、標準的抗エストロゲン治療がもはや奏効しない転移性乳癌患者のエストロゲン値を上昇させると、患者の30%にベネフィットがみられた。[pagebreak]この結果についてはJournal of the American Medical Association誌2009年8月19日号に報告された。エストロゲン治療により乳癌進行の停止が多くみられただけでなく、患者によっては抗エストロゲン治療に対し、転移性腫瘍がまた感受性をもつようになり再び奏効した。

「エストロゲン低下剤投与の間、本試験の患者全員に再発がみられ乳癌が進行していました」と、ワシントン大学SitemanがんセンターおよびBarnes Jewish Hospitalの腫瘍学専門家である主任著者のMatthew J Ellis医学博士は述べている。「そのため患者らは化学療法を受けるという難しい状況にに直面していました。われわれが明らかにしたのは、エストロゲン治療は多くの患者の乳癌進行を停止させ、その忍容性は化学療法を受ける場合よりもはるかに良好であったということです。」

転移性乳癌による死亡は毎年約40,000人にのぼり、エストロゲン治療によって何千人もの患者が救われる見込みがある、とEllis医師はいう。さらにエストロゲン治療は1日当り1ドル以下と廉価である点も指摘している。

乳房外へ転移がある閉経後乳癌患者66人が本試験に参加した。参加者全員は、エストロゲンが腫瘍の成長を促進するエストロゲン受容体陽性(ER)乳癌と当初に診断されていた。ERは乳癌症例の75%にあたる。参加者全員はエストロゲン値を著しく低下させるアロマターゼ阻害剤治療を受けていた。しかしその後、転移腫瘍が再度現れるかまたは腫瘍の成長が再開した。

本研究ではエストロゲン30mg/日の高用量投与と6mg/日の低用量投与を比較し、この2つの治療がどの程度転移性乳癌を制御し、どのように生活の質に影響するかについて評価した。血中エストロゲン値は、高用量では妊婦のエストロゲン値に相当するようになり、低用量では排卵期エストロゲン値と同程度になった、とEllis医師は説明する。

高用量群と低用量群で、いずれも参加者の30%に腫瘍の縮小や成長の停止といった臨床上のベネフィットがみられた。興味深いのは、研究者らは陽性反応を示す患者をかなり正確に予想できることを実証したことである。標準的なポジトロン断層撮影法(PET)によるスキャンがエストロゲン治療前と治療24時間後に実施され、エストロゲン療法開始後にPETスキャンで発光し、または輝きの明るい転移性腫瘍ほど、エストロゲン療法により強く反応する傾向がみられた。PETで発光反応がみられた患者の80%でエストロゲン療法が腫瘍に奏効し、PET発光反応のない患者の87%ではエストロゲン療法は腫瘍に奏効しなかった。

試験参加者は、試験期間中のエストロゲンへの副作用の有無をアンケートに記入した。副作用は、頭痛、膨満、乳房圧痛、体液貯留、悪心、嘔吐などとみられる。高用量エストロゲン投与患者では、副作用はより重度であった。

「本試験では高齢の患者ほど、エストロゲン関与の症状は少なかったのです」と、腫瘍学部教授でもあるEllis医師は述べている。「しかし全体としては、低用量は高用量よりも忍容性が良好で、転移性乳癌の制御にまさに有効であることが明らかに実証されたのです。」

エストロゲンが奏効した患者の30%は、数ヵ月後あるいは数年後に腫瘍が再び成長していた。しかしこの再発症例の1/3で、抗エストロゲン療法が腫瘍に再び奏効するようになったことが本研究者らにより明らかになった。以前に使用されていたアロマターゼ阻害剤を再び用いることで患者の腫瘍は,縮小あるいは増殖停止した.

参加施設は、Sitemanがんセンターの他に以下の通り。the University of Chicago, Case Western Reserve University, Memorial Sloan-Kettering Cancer Center, the University of North Carolina at Chapel Hill and Duke University Medical Center.
Ellis MJ, Gao F, Dehdashti F, Jeffe DB, Marcom PK, Carey LA, Dickler MN, Silverman P, Fleming GF, Kommareddy A, Jamalabadi-Majidi S, Crowder R, Siegel BA. ホルモン受容体陽性の経口エストラディオールの低用量 vs 高用量療法, アロマターゼ阻害剤進行性乳癌 JAMA. Aug. 19, 2009.

本研究は、Avon基金と米国国立がん研究所から資金援助を受けている。

Washington University School of Medicine’s 2,100 employed and volunteer faculty physicians also are the medical staff of Barnes-Jewish and St. Louis Children’s hospitals. The School of Medicine is one of the leading medical research, teaching and patient care institutions in the nation, currently ranked third in the nation by U.S. News & World Report. Through its affiliations with Barnes-Jewish and St. Louis Children’s hospitals, the School of Medicine is linked to BJC HealthCare.
Siteman Cancer Center is the only federally designated Comprehensive Cancer Center within a 240-mile radius of St. Louis. Siteman Cancer Center is composed of the combined cancer research and treatment programs of Barnes-Jewish Hospital and Washington University School of Medicine. Siteman has satellite locations in West County and St. Peters, in addition to its full-service facility at Washington University Medical Center on South Kingshighway.

******
柴田慶子 訳
原 文堅(乳腺科)監修
******


原文


printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  3. 3コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  4. 4リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  5. 5BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  6. 6若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新...
  9. 9手術後に放射線治療を受けない非浸潤性乳管がん患者の長...
  10. 10免疫療法薬の併用はタイミングと順序が重要

お勧め出版物

一覧

arrow_upward