2009/03/10号◆特集記事「黒色腫(メラノーマ)治療の新たなターゲットが同定か」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/03/10号◆特集記事「黒色腫(メラノーマ)治療の新たなターゲットが同定か」

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2009/03/10号◆特集記事「黒色腫(メラノーマ)治療の新たなターゲットが同定か」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年3月10日号(Volume 6 / Number 5)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特集記事

黒色腫(メラノーマ)治療の新たなターゲットが同定か

通常、皮膚のメラノサイト(色素細胞)において発生する癌の一種であるメラノーマ(黒色腫)は、化学療法及び放射線療法に対して極めて抵抗性が強く、転移した場合、治療の選択肢はほとんど残されていない。

NCI癌研究センターの細胞生物学研究所では、SOX9と呼ばれるタンパク質が黒色腫細胞の増殖を阻害し、化学療法剤であるレチノイン酸に対する感受性を回復させることを発見した。Journal of Clinical Investigation誌3月9日号に掲載されるこれらの結果によって、黒色腫治療において期待できる新たなターゲットとしてSOX9にスポットがあてられると研究チームは確信しており、早期の臨床試験用にSOX9をコントロールする物質を見つけるため既に研究が進行中である。

研究者らは紫外線B波への露出に対するメラノサイトの反応にSOX9がどのように影響するのかをすでに調査しており、このタンパク質が皮膚の色素沈着増加の一端を担っていることを発見した。「既知の事実から正確な結論を引き出し、仮にSOX9が色素沈着とメラノサイトの正常な成長を調節するのに役立っているとすると、恐らくわれわれは黒色腫細胞を調べてSOX9の機能が減少したか否かを観察しなければならない。また、もしその通りであるならば、われわれがSOX9の機能を増加させ、黒色腫細胞の成長を遅らせることができるかを観察しなければならない」とDr. Vincent Hearing氏は述べた。

研究では、正常なヒト皮膚細胞、母斑(ある種のほくろは、黒色腫を発症するおそれがある)、原発の黒色腫サンプルおよび転移性腫瘍のサンプルにおけるSOX9の発現を比較した。SOX9は正常な皮膚サンプルの全てに発見されたが、ほとんどの母斑、原発の黒色腫のうち90%、および全ての転移性腫瘍においては、このタンパク質の発現量が少ない、または認められなかった。

培養した黒色腫細胞でSOX9の発現を回復させるために遺伝子導入を行うと、SOX9タンパク質によって細胞周期が阻害され、癌細胞の分割は停止した。正常なメラノサイトが癌細胞に変化した黒色腫を持つ皮膚細胞の生体外モデルでは、黒色腫細胞へのSOX9導入によって黒色腫細胞の腫瘍形成を阻害した。同じ皮膚細胞モデルで、SOX9をもたない黒色腫細胞は浸潤性腫瘍を形成することが可能であった。黒色腫細胞をマウスの皮下に注入した場合、同様の結果が見られた。未処置の黒色腫細胞はマウスの中で大きな腫瘍を形成した一方、SOX9が形質移入された黒色腫細胞は、成長が不十分かまたは全く成長しなかった。

次に、遺伝子導入は現在のところ癌治療として用いるには極めて困難な技術であるため、これを用いずに黒色腫細胞においてSOX9の機能を回復させる方法を探した。そして、プロスタグランジンD2(PGD2)と呼ばれる、通常体内に存在している物質で黒色腫細胞を処置することによって、細胞内のSOX9の発現が増加することを発見した。

PGD2またはPGD2にレチノイン酸を併用する処置方法によって、黒色腫細胞の増殖を50パーセントおよび75パーセント阻害することができた。BW245Cと呼ばれる薬剤(診断目的で臨床試験が行われた)は体内のPGD2レベルを増加させることが知られている。BW245Cおよびレチノイン酸を皮下に黒色腫があるマウスに投与した場合、「これらの薬剤を投与されていないマウスの腫瘍と比較すると、この薬剤の組み合わせによって・・・腫瘍サイズは著しく縮小した」と、著者らは説明している。

本研究の第一著者であり、フランスのニース大学病院の皮膚科医および研究者であるPasseron 氏は現在、その他の化合物の使用について調査している。これらの化合物のほとんどはすでに人に使用されているものであり、SOX9の発現を上昇させる可能性がある。「われわれは増殖を減少させ、レチノイン酸誘導体の効果を発揮させるために最適な薬剤の組み合わせを発見したい」とPasseron 氏は述べた。また同氏はその組み合わせを選択したうえで第1相臨床試験を2011年に開始することを期待している。

— Sharon Reynolds

画像原文参照
【画像下キャプション訳】生体外モデルとして再構成されたメラノーマの皮膚モデル。上の皮膚サンプルでは浸潤性腫瘍を形成した、SOX9を持たない黒色腫細胞が含まれている。下の皮膚サンプルには浸潤性腫瘍を形成しなかった、SOX9が形質移入された同じタイプの黒色腫細胞が含まれている。これらの写真は細胞移植の10日後に撮影された。 (画像提供:Dr. Thierry Passeron氏およびDr. Vincent Hearing氏らによる)

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佐々木 了子 訳

大藪 友利子(生物工学)監修

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