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進行性前立腺癌に新薬が効果を示す/スローンケタリング記念がんセンター

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進行性前立腺癌に新薬が効果を示す/スローンケタリング記念がんセンター

スローンケタリング記念がんセンター
2009年4月9日

従来の治療オプションでは効果が出ない進行性前立腺癌に対し、実験段階の薬剤が腫瘍増殖マーカーである前立腺特異抗原(PSA)値を下げることが、新規の多施設臨床試験により示された。スローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)の研究者らが主導するこの試験は、Science誌の電子版であるScience Express2009年4月9日号に掲載された。[pagebreak]転移性前立腺癌患者は、ほとんどの場合最終的に男性ホルモン抑制剤・阻害剤に対する抵抗性を生じ、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)またはホルモン抵抗性と呼ばれる、より急速に進行する型の前立腺癌に進行する。本試験の所見によれば、2つの新規化合物RD162とMDV3100について研究した結果、新たな作用機序が判明しただけでなく、この薬剤が培養CRPC細胞とマウスのCRPC細胞の両方で活性を示すことが明らかになった。

また、本研究では進行性CRPC患者30人を対象としたMDV3100の第1/2相臨床試験についても報告され、30人中22人でPSA値が低下し、13人(43%)は半分以下に下がった。

数年前、本研究の筆頭著者であるCharles Sawyers医師ら(カリフォルニア大ロサンゼルス校[UCLA]))は、転移性前立腺癌患者がなぜ最終的にCRPCに至るのか、考えられる原因を明らかにした。この見識にもとづきRD162とMDV3100が発見された。

「現在の治療法に抵抗性が生じる理由についてわれわれの仮説が立証されたことがわかり、満足しています。そして非常に重要なことは、われわれの研究からすでにベネフィットを受けている患者がいるということです」と、Sawyers医師(MSKCC腫瘍学・病因論担当教授、ハワード・ヒューズ医学研究所研究員)は述べている。

進行性前立腺癌は現在、腫瘍の成長を助ける男性ホルモンの活性を阻害して治療する。その薬剤の多くは細胞増殖を調節するアンドロゲン(男性ホルモン)受容体を阻害するが、やがて受容体の発現量が上昇し腫瘍はこうした薬剤に抵抗性を持つようになる。Sawyer医師らは臨床前研究を行い、CRPC細胞がアンドロゲン受容体の発現を上昇させ、その過剰発現が前立腺癌進行の一因となる可能性を実証した。

こうした情報をもとに、Sawyers医師はMichael Jung博士(UCLAの化学教授)と共同研究を開始し、MDV3100などを含む非ステロイド系小分子抗アンドロゲン化合物を数多く開発した。MDV3100は、受容体発現上昇時でも抗癌活性を維持していることが明らかにされている。

「MDV3100は、医薬品開発推進の中心である医薬品業界の力に頼ることなく、すべて大学施設内での協同により発見され初期の開発がされたのです」と、Sawyers医師は述べた。Jung医師チームがこの化合物を合成した後、Sawyer医師が前立腺癌のマウスモデルを用いてこの化合物を評価した。このマウスはアンドロゲン受容体の過剰発現により去勢抵抗性前立腺癌進行が再現され、臨床薬に対する抵抗性についての生態を示すよう設計されたものである。

この新規研究では、CRPC細胞中のアンドロゲン受容体を阻害する様々な化合物がテストされた。研究者らはRD162およびこれと密接に関連する化合物MDV3100についてさらに評価することとした。その所見によれば、両剤とも、受容体がCRPCの細胞核に進入する(核移行と呼ぶ)能力を障害し、標的遺伝子のDNAと結合するのを妨げ、細胞の成長を阻害することにより、アンドロゲン受容体の機能を阻害する。両化合物とも培養細胞中で良好に作用し、マウスの腫瘍を縮小させ、数ヵ月間縮小は維持された。また、アンドロゲン受容体がその後の過程、いわゆる“下流”で他の遺伝子により活性化されることも阻害した。このようにしてアンドロゲン受容体を阻害する承認薬は現在のところ他にはない。

バイオ医薬品企業であるMedivation社は、2006年にRD162およびMDV3100のライセンスをUCLAより取得し、経口薬MDV3100で初めてとなる臨床試験の登録をすでに完了している。これはMSKCC研究者らが主導し、the Prostate Cancer Clinical Trials Consortium(米国防総省および前立腺癌基金が資金援助)が実施する第1/2相臨床試験である。本試験には転移性去勢抵抗性前立腺癌で従来のホルモン療法の治療後に再発した患者が登録され、MDV3100の最低量の投与を受けた最初の患者から抗前立腺癌効果が示された。これよりも高用量を投与された別の患者110人からはさらに良好な結果が得られたことが、2009年2月にASCO泌尿生殖器癌シンポジウムで報告されたばかりである。

「これまでのところPSA値は低下し、本治療の忍容性も全体的によく、心強く思っています」とHoward Scher医師(本研究共同著者、MSKCC泌尿生殖器腫瘍科部長)は述べている。「MDV3100を引き続き研究したいと思っています。最も致命的な型の前立腺癌への治療法は限られているなかで、本剤は強力な手段になると見込まれます」。2009年内には第3相臨床試験が開始予定である。

MSKCC、UCLA、オレゴン健康科学大学、ワシントン大学(シアトル)、Medivation社の研究者らが本研究に貢献した。Sawyer医師と本研究著者のうち数名は共同開発者として、RD162、MDV3100および関連化合物の特許出願に名を連ねている。

本研究は、前立腺癌基金、米国立癌研究所、Prostate Cancer Research Program Clinical Consortium Awardより一部支援を受けている。

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柴田 慶子 訳
橋本 仁(獣医学)監修
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原文


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