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2010/05/18号臨床試験登録特別号◆「臨床試験について話し合う:臨床におけるコミュニケーションの障壁を乗り越える」

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2010/05/18号臨床試験登録特別号◆「臨床試験について話し合う:臨床におけるコミュニケーションの障壁を乗り越える」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年5月18日臨床試験登録特別号(Volume 7 / Number 10)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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臨床試験について話し合う:臨床におけるコミュニケーションの障壁を乗り越える

成人癌患者のわずか3〜5%しか臨床試験に参加していないことはしばしば引用されるが、この統計の背景には、実際にはどのくらいの患者が臨床試験に参加する機会が与えられているのかを誰も把握していないという事実がある。適格基準は考慮すべき要素である。いずれの臨床試験においても、成人癌患者のごく一部しか適格規準を満たさない。

「しかし、適格者のうちのどれくらいの人が試験の参加を打診されているでしょうか」と、NCIの癌抑制人口学部門のOutcomes Research BranchのプログラムディレクターであるDr. Neeraj Arora氏は尋ねた。「提供者に提案されることは多くの場合、サービスを利用する際の一番の判断材料のひとつです。もし主治医に何かを勧められたら、患者はきっとそれを行うでしょう。しかし、私たち提供者側は、臨床試験がどこまで提示されているのか全くわかりません」と同氏は付け加えた。

Arora氏は、現在、患者1万人を対象としたCancer Care Outcomes Research and Surveillance Consortium (CanCORS:癌医療アウトカムリサーチ・サーベイランス研究)の一環として臨床試験に参加した患者(CanCORSのおよそ5%)と参加しなかった患者での医療体験の違いの調査を計画している。

臨床試験で治療を受けた患者と受けなかった患者の間でケアに対する満足度を比較することに加え、どのようにして患者は臨床試験のことを知ったか、提供者側と選択肢について話し合ったか、臨床試験に参加する決定に働いたと考えられる要因、そして登録を勧められた試験に参加したかどうかを、CanCORSの研究者らは調査する予定である。

提案されることはまれ

CanCORS研究で予測された結果への手掛かりは、バーバラ・アン・カルマノス癌研究所(デトロイト)のDr. Teerrance Albrecht氏らによる最近の研究によってもたらされたものである。

2008年、研究者らは、臨床試験参加への打診を明確に提示された患者では75%が登録に同意したことを示す研究結果を公表した。しかし、この試験期間中に患者と主治医のコミュニケーションを記録した235人を再検討したところ、明確に提示されたのはわずか20%であった。「患者の拒否率は、患者に対する試験の提示率の低さに比べて大きな問題ではないだろう」と著者は記している。

主治医が協力関係を築くようなやりとりをしたり、サポートをしたり、わかりやすい表現で試験の説明をしたと感じた患者は、いったん提示されたら試験参加を選択する傾向が強かった。

「この調査で分わかったことは、医師が試験への参加を明確に提示し、患者が臨床試験の提案を受けていることをはっきりと理解した場合、また医師が患者を中心に話をし、必要な情報を提供した場合、患者は何度も考え直したり大きな懸念を抱くことなく試験に参加しました」とAlbrecht氏は詳しく述べた。「現在私たちが行おうとしていることは、一段前に戻って、なぜわれわれがもっと臨床試験を提示しないかを調べることです」。

フォックス・チェイスがんセンター(フィラデルフィア)が2007年に行った研究では、ほとんどの腫瘍科医は臨床試験の重要性を認識しているが、一部の医師は患者に臨床試験を紹介することに自ら心理社会的な障壁を抱えていることが明らかになった。つまり、治療が無作為に割り付けられることに対して患者の意向を気遣って勧めにくい、または病期の進んだ患者や標準治療に反応を示さなくなり、試験的治療による利益が実際にはあまり見込まれない患者に対して臨床試験を勧めやすいという医師の傾向がみられた。

しかし患者に臨床試験を提案したいと思っている腫瘍科医でさえ、「たぶん現行のシステムは、医師にとってこのようなコミュニケーションを行うのに効果的に整備されてはいない」とAlbrecht氏は考えている。どの患者にどの臨床試験が適応になるかを迅速かつ効果的に識別するシステムに医師がしばしばアクセスできないという、組織段階における大きな障害が見つかった。

Albrecht氏の説明によると、現在、同氏らは、「制度の見直しを行い、早い過程で適格患者を特定することで臨床試験の対象人数を増やす」研究の助成をNCIから得ている。これには、医師が患者と会う前に癌専門看護師が患者と臨床試験をマッチングさせる臨床チーム会議にタブレット・コンピューターを提供することや、情報の追加源としての役割を果たすために医師・患者のあいだに看護チームを上手く組み入れることが含まれている。

しかし医師と治療センターはこの方程式の一面でしかない。もし患者が臨床試験の概念に対して不慣れあるいは困惑しているなら、インフォームド・コンセント(説明を受けたうえでの同意)もインフォームド・リフューザル(説明を受けたうえでの治療拒否)も妨げられる場合もある。

規範の変化

「臨床試験についての話し合いは医師から始められるべきだと思います。しかし、もしそうでない場合は(医師側から始まることをいつも期待できるわけではありません)、この話は患者から切り出すべきだと思います。つまり、私に適合する臨床試験はありませんか。なぜですか。なぜ駄目なのですか。」と、Education Network to Advance Cancer Clinical Trials(ENACCT:先進的癌臨床試験のための啓発ネットワーク)の創設者であり事務局長のMargo Michaels氏は述べた。

ENACCTは、教育とグループ間の連携を通じて癌の臨床試験のアクセス向上を目的とした、地域社会、医療従事者、研究者のための訓練プログラムを開発した。このプログラムのひとつは地域社会のリーダーをトレーニングし、「地域社会に臨床試験の言葉と臨床試験の概念の標準化を広く伝えることです。これは2つのことができます」とMichaels氏は説明した。「患者が初めて臨床試験のことを聞くのは診断時ではないので、家族らが患者に臨床試験について尋ねるよう促すなど手助けすることができます」。

2010年前半時点で、ENACCTは全米の6地域で85人の地域指導者に研修を行った。そして、これらの指導者は、1500人の仲間に次々と癌の臨床試験の重要性について広く伝える方法を教育した。これら1500人の地域リーダーは、7000人を超える地域住民に対し、公式あるいは非公式に、なぜ臨床試験が重要であるかについてのプレゼンテーションを行った。

この考え方を取り入れた彼らの試験的教育プログラム(PEP: Pilot Education Program)の試みによると、地域リーダーのプレゼンテーションに出席した人のうち、臨床試験に関してさらに詳細な情報にアクセスしたか人がどれだけいたかを調査するため、ENACCTは有料の臨床試験マッチングサービスであるEmerging Medを用いた。これにより、地域教育集会出席後に3000人以上が臨床試験についてさらに学ぼうとEmerging Medにアクセスしたことが明らかになった。さらにPEP参加者によって、地域のEmerging Medデータベースの新たな閲覧者層として患者の利用率がおよそ10%増加した。

「私たちの研修プログラムによって促された仲間同士の話し合いは対等であり、そして臨床試験に対して親しみや興味を培うことができます」とMichaels氏は述べた。「臨床試験に関する知識の欠如や誤解は、試験参加に対する大きな障壁となっています。そして、もし知識や姿勢の問題に取り組むことができれば、臨床試験の重要性についての社会規範を変える手伝いができます」。

— Sharon Reynolds

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Nogawa 訳
後藤 悌(呼吸器内科医/東京大学大学院医学系研究科)監修

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