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血液型の研究により膵臓癌生物学に新たな解/ダナファーバー癌研究所

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血液型の研究により膵臓癌生物学に新たな解/ダナファーバー癌研究所

ダナファーバー癌研究所
2009年3月20日

ダナファーバーがん研究所の研究者らは、膵臓癌の基礎的な生態に関し新たな手がかりを提供するとともに、数十年前に発見された血液型と膵臓癌発症のリスクの関連性について確認した。

Journal of the National Cancer Institute誌3月10日号電子版に掲載された本所見は、Nurses’ Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Studyという2つの大規模健康追跡研究の参加者における、血液型と膵臓癌発症についての分析に基づくものである。

膵臓癌は新規の年間診断数が全米で40,000例弱(大腸癌では150,000例弱)と、公衆全体のリスクは比較的低いものであるが、今回の新たな研究により血液型A、B、AB型の人はO型の人よりも膵臓癌を発症するおそれが高いことが実証された。

「数種のまれな家族性の症候群を除き、膵臓癌のリスクを増減する遺伝的要因はその大部分が不明です。」と本試験の主任著者であるBrian Wolpin医師(公衆衛生学修士)は述べている。「数十年前に実施された複数の研究では、膵臓癌を含む様々な悪性腫瘍リスクと血液型の関連が示唆されましたが、それはすでに発症した癌を‘再評価した’のであって、症例数も比較的わずかでした。こうしたリスクと血液型との関連が、現在の患者コホートと調査研究技術を用いて確認したいと考えました。」

本所見によれば、膵臓癌発症率はO型と比較してA型では32%、AB型で51%、B型で72%高かった。全グループの膵臓癌のうち17%はO型以外の血液型を遺伝的に受け継ぐことに原因があるとみられた。しかし、膵臓癌発症の生涯リスクは比較的低く(推定1.3%)、血液型に関連するリスク増大は比較的小さいため、膵臓癌リスクのスクリーニングテストが血液型のみに基づいて行われることはないであろう。本所見の真の価値は、膵臓癌の仕組みについて何を示唆しているかにある、と著者は述べている。

4つの血液型は、糖タンパク質の種類により定義される。糖タンパク質は糖とタンパク質が結合したもので、赤血球のほか膵臓などの細胞の表面上にみられる。いわゆるABO遺伝子は、H抗原と呼ばれるタンパク質の“主鎖”に結合する糖分子の配列を決定することにより糖タンパク質の形成を助ける。このような糖の形成するパターンにより血液型がA,B,AB,O型に決定される。(O型では糖はH抗原に結合していない)

他の研究者による実験では、正常な膵臓細胞では膵臓癌細胞と異なるパターンの血液型抗原を持つことが示されており、このことはABO遺伝子の活性が変化すると細胞の癌化を引き起こす可能性を示唆している。研究者らは、抗原の変化により細胞がシグナルを発して相互に接着する能力や免疫システムの異常な細胞を検知する能力が阻害され、ひいては癌の発端となるおそれがあるのではないかと推測している。

また、血液型の抗原は炎症性タンパク質の血中濃度に影響を与える可能性もある。慢性的な炎症は膵臓癌リスクとの関連が示されている。

これらの知見は興味深いが、血液型の抗原と膵臓癌の直接的な関連を必ずしも示すものではないと著者らは強調する。ABO遺伝子は、より直接的に癌発症に関わる他の近隣遺伝子の単なるマーカーに過ぎない可能性がある。

「明らかとなった血液型と膵臓癌リスクの関連は、膵臓癌の根本的な生物学的機序を明らかにする路を切り開くものです」とWolpin氏は述べている。「こうした癌の生態を理解することで、膵臓癌が発症や進行を抑止するための介入がしやすくなるでしょう。」

本研究の主任著者はCharles Fuchs MD, MPH(ダナファーバーおよびブリガム・アンド・ウィメンズ病院(BWH))。共同執筆者は以下のとおりである。David Hunter, ScD, and Edward Giovannucci, MD, ScD, of BWH and the Harvard School of Public Health(HSPH); Andrew Chan, MD, MPH, of BWH and Massachusetts General Hospital; Patricia Hartge, ScD, and Stephen Chanock, MD, of the National Cancer Institute; and Peter Kraft, PhD, of the HSPH.

本研究は、米国立癌研究所とラストガーテン膵臓癌研究財団から資金援助を受けている。

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柴田慶子 訳
橋本 仁(獣医学)監修
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原文

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