血管新生阻害剤の弱点と、解決策の必要性が研究で示唆される/カリフォルニア大学 | 海外がん医療情報リファレンス

血管新生阻害剤の弱点と、解決策の必要性が研究で示唆される/カリフォルニア大学

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血管新生阻害剤の弱点と、解決策の必要性が研究で示唆される/カリフォルニア大学


カリフォルニア大学サンフランシスコ校
2009年4月

動物における新たな研究によると、腫瘍への血液供給を断つことによって腫瘍を餓死させる血管新生阻害剤とよばれる新世代の抗癌剤は当初奏効するが、その後はより侵襲的な癌増殖を促進し、場合によっては転移発生率が高くなる。この研究は他の動物実験と同様の結果であることが示され、癌患者を対象とした数少ない臨床試験での初期のエビデンスとも合致している。[pagebreak]「血管新生阻害剤は癌の転移を阻害すると考えられているが、これらの研究によると必ずしもそうではないことがわかる」と、2009年3月3日号のCancer Cell誌に掲載された論文の共著者Gabriele Bergers博士は述べる。Berger氏はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の神経外科学・解剖学准教授である。

血管新生阻害剤がヒト腫瘍マウスモデル同様の作用を患者の癌細胞に対してもたらすかどうかを究明する新たな研究の必要性を研究者らは訴える。血管新生阻害剤に、浸潤および転移を標的とする薬剤を組み合わせた前臨床試験および臨床試験の実施も研究者らは要請している。たとえば既に臨床試験に入っている血管新生阻害剤と化学療法併用のいくつかの治療法は、その後の浸潤や転移を誘発せずに同薬剤の初期のベネフィットを得られるかもしれないと研究者らは言及する。

「癌細胞を毒殺するのではなく餓死させる血管新生阻害剤の効力はまさしく飛躍的進歩だが、ワンストップ(一度で完了させる)治療となる見込みはない。ヒトのどのタイプの癌をも治療する抗がん剤は、まだ発見されていない。治療により癌は撃退されるが、必ずといっていいほど癌は何らかのかたちで耐性を発現する」とUCSF生化学・生物物理学教授で本論文の統括著者であるDouglas Hanahan博士は述べる。

Hanahans氏およびBergers氏両名はUCSF Helen Diller Family 総合がんセンターの研究者である。

本論文におけるもう一人の統括著者はスペインのCatalan Institute of Oncology-IDIBELLでグループリーダーを務めるOriol Casanovas博士である。

血管新生阻害剤の効果についての研究に加えて、研究者らは血管新生阻害剤の初期奏効の後に癌が再燃する仕組みを特定するためのさらなる研究を奨励する。進行と転移の増加は、薬剤によって誘発された飢餓状態に対する腫瘍の反応であると彼らは推測する。

「血管がしっかりと形成された腫瘍では養分の供給に満足した状態であり、より侵襲的な腫瘍となる原動力はない。腫瘍への血液供給が断たれることによって酸素や養分を求めて腫瘍はより悪性度を増し、転移を引き起こすことにならざるをえなくなるという仮説がマウスモデルから成立する」とHanahan氏は語る。

Cancer Cell誌に掲載された論文は、Casanaovas氏、Hanahan氏およびBergers氏による2005年と2008年の先行報告(Casanovas O. et al. Cancer Cell 2005; Du R. et al. Cancer Cell 2008)をさらに追究したもので、血管新生阻害剤を投与したマウスにおける転移の増加を示すエビデンスを報告したトロント大学のRobert Kerbelおよび同研究チームによる論文と共に同誌に掲載されている。2008年8月のNature Reviews Cancer誌でBergers氏およびHanahan氏は血管新生阻害療法における耐性について最近の研究をレビューした。

最も一般的な原発性脳腫瘍の膵神経内分泌腫瘍および神経膠芽腫のマウスモデルを用いて、抗血管新生薬スニチニブ〔sunitinib〕(商品名スーテント)の効果を研究者らは調べた。治療開始から当初の数週間に、治療された腫瘍は縮小し安定はしたものの消滅しなかったことが確認された。ところが、この初期奏効後に腫瘍細胞の適応反応が検知された。神経膠芽腫は隣接する正常組織への浸潤を増大させたのである。膵腫瘍はさらに浸潤し、肝臓にも転移した。

「ヒトの神経膠芽腫は血管新生阻害剤に適合するとした臨床結果はわれわれの動物での研究結果と一致している。また、血管新生阻害剤ベバシズマブ(商品名アバスチン)の投与中に多部位で腫瘍の再発がみられた癌患者集団が認められたという臨床試験結果も報告されている。再発はMRI画像で計測された」とBergers氏は述べる。

「抗血管新生薬は概して持続的成功をもたらなさいが、だからといって価値がない治療ということではない」とBergers氏は付け加え、「抗血管新生薬が生活の質を向上させるエビデンスがそろってきており、かつ神経膠芽腫患者については一般的に数カ月の生存期間の向上をもたらしている。また、この種の薬剤は脳腫瘍に伴う脳浮腫を軽減し、ある症例では記憶および発話の回復が確認されている」とも語った。

「化学療法に対する耐性と血管新生阻害剤に対する腫瘍耐性は異なる」とBergers氏は説明する。抗血管新生療法の標的は、内皮細胞として知られている血管を形成する正常な細胞である。薬剤がこれらの細胞に対して依然として効果的であるにもかかわらず、腫瘍が当該薬剤の作用に対する抜け道として追加経路をみつけることで薬剤耐性が発現してしまう。この問題を回避する戦略の1つは、血管新生のために必要なVEGF(血管内皮細胞増殖因子)以外の体内増殖因子をたたくことである。腫瘍は血管形成を十分なレベルにまで再生できないと、転移や浸潤など別の手段をとるようになる。

これとは対照的に、腫瘍の化学療法への耐性は、薬剤の標的となった遺伝子を変異させたり、腫瘍への薬剤の取り込みとその放出の方法を変えるなど細胞に内在する機序による。

ある種の抗血管新生薬は、VEGFとよばれる血管の新生を活性化する必須タンパク質の作用を阻止する。血中の栄養や酸素を奪うことで腫瘍を餓死させる方法は1970年代初期にハーバード大学医学部の故ジューダ・フォークマン医師によって初めて提案された。この考え方が基礎研究や臨床腫瘍学の分野でけん引力を獲得するには20年を超える歳月を要したが、この新しい研究は展望を裏付けたことで認知を得た。臨床試験は現在では大きな関心と期待の的となっている。

抗VEGF剤の臨床試験の結果はさまざまである。抗VEGF剤であるベバシズマブを転移性乳癌に使用したある臨床試験では効果はなかった。また最近の同じく乳癌を対象とした臨床試験でも生存率は向上しなかったと、Hanahan氏およびBergers氏は述べる。これについては、動物での研究の結果が説明するかもしれない。

本論文の筆頭著者は以下のとおりである。
Marta Paez-Ribes, a graduate student at the Catalan Institute of Oncology-IDIBELL; and Elizabeth Allen, PhD, a UCSF staff scientist in the Hanahan laboratory at UCSF.

他の共著者は以下のとおりである。
James Hudock in neurosurgery at UCSF; Takaaki Takeda, Hiroaki Okuyama and Masahiro Inoue, all of Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Disease(大阪府立病院機構大阪府立成人病センター); and Francesc Viñals at the Catalan Institute of Oncology-IBIDELL and the University of Barcelona.

研究はアメリカでは国立癌研究所、スペインではMICINNおよびAGAURなどの支援による。

*PubMed原文
[url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19249680]http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19249680[/url]

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下和田篤子 訳
村中健一郎(生物物理学)監修
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href=”http://news.ucsf.edu/releases/study-sheds-light-on-angiogenesis-inhibitors-points-to-limitations-solution/”>原文


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