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最も多い脳腫瘍と関連する2つの遺伝子変異/ジョンズホプキンス大学

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最も多い脳腫瘍と関連する2つの遺伝子変異/ジョンズホプキンス大学


ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター
2009年2月18日

ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターとデューク大学医療センターの研究者らは、2つの遺伝子IDH1とIDH2の変異が、神経膠腫という最も一般的な脳腫瘍に属する数種のうち約4分の3の腫瘍と関連性があることを明らかにした。研究成果の一つは、これらの遺伝子変異をもつ特定の腫瘍の患者において、生存期間は遺伝子変異を持たない患者の2倍以上とみられることである。[pagebreak]これらの遺伝子についてさらに研究を進めれば、より的確な診断や治療にもつながるだろうと研究者らは述べた。

New England Journal of Medicine誌2月19日号の報告によると、500件の脳腫瘍と中枢神経系以外の500件の癌から採取した検体から、IDH1およびIDH2遺伝子における変化が調べられた。その結果、悪性度の低い星細胞腫、乏突起膠腫、二次性膠芽腫という3種類の神経膠腫の70%以上でIDH1遺伝子の変異が認められた。これらの変異は、遺伝情報をコードしている何千もの文字列の1ヵ所で起こっていた。IDH1が変異していない脳腫瘍の中には、IDH1と密接な関連がある別の遺伝子、IDH2、に同様の変異が認められるものがあった。

「最も一般的なこれらの脳腫瘍の場合、IDH1、IDH2のいずれかの変異は、これまでに同定された最も頻度の高い遺伝的変化である」とジョンズ・ホプキンスの小児癌研究部門の客員教授でベイラー医科大学の助教授であるD. Williams Parsons医学博士は述べている。

これらのデータの詳しい解析により、変異がある膠芽腫と未分化星細胞腫の患者は、変異を持たない患者より生存期間は長いことが示された。遺伝子の働きについてのさらなる研究により、この発生原因が明らかになるかもしれない。膠芽腫患者でIDH1またはIDH2のいずれかに変異を有する場合、生存期間の中央値は31ヵ月であり、変異のない場合は15ヵ月であった。未分化星細胞腫患者で変異を有する場合の生存期間の中央値は、変異のない場合の20ヵ月と比較して65ヵ月であることが示された。乏突起膠腫の場合は、変異がない腫瘍の個数が少なすぎたため生存期間データの比較はできなかったと研究者らは述べている。

「IDH1、IDH2のいずれかに変異がある神経膠腫は、臨床的かつ生物学的に明確な脳腫瘍のサブグループを構成していることは明らかであり、将来的には標的療法により利益を得られることも考えられる」とParsons医学博士は語っている。

IDH1(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1型)は、ジョンズホプキンスの研究者主導で行われた脳腫瘍変異に関するゲノムワイドスキャンの結果、昨年初めて検出された。このとき科学者らは、最も致死性の高い神経膠腫である膠芽腫(または多形性膠芽腫)の約12%とIDH1遺伝子変異の関連を明らかにした。

これに加え、この新たに発見された変異は、より悪性度の低い星細胞腫と乏突起膠腫でも起きており、米国では1年あたり6,000人の脳腫瘍患者および患児に影響を及ぼしているとParsons医学博士は推定している。

「IDH1やIDH2の変異を明らかにすることは、これらの癌を同定しそして分類するのに役立つということを病理学者は認識するでしょう」とParsons医学博士は述べている。さらに、神経膠腫に分類されるものだけでなく他の脳腫瘍においても治療はそれぞれ異なるため、的確な診断は不可欠であると付け加えた。

「これらの変異によって変化する酵素活性を標的に、新しい治療法が計画されるでしょう」とジョンズ・ホプキンスのLudwigセンター腫瘍遺伝学のディレクターであり准教授のVictor Velculescu医学博士は述べている。

「この変異は、これら脳腫瘍の癌化の非常に早い段階、おそらく幹細胞レベルで生じるようです」とBert Vogelstein医師、ジョンズ・ホプキンスLudwigセンターの共同ディレクターのClayton教授、ハワード・ヒューズ医学研究所の試験責任医師は補足している。

変異の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってIDH1とIDH2遺伝子の断片を増幅する標準的な手法を用いて行われた。PCRとは、わずかなDNAを高性能コンピュータ装置で検出可能なレベルまで複製する方法である。

この研究に対する資金提供は以下により行われた。
Pediatric Brain Tumor Foundation Institute、Damon Runyon Foundation、Southeastern Brain Tumor Foundation、Alex’s Lemonade Stand Foundation、V Foundation for Cancer Research、Virginia and D.K. Ludwig Fund for Cancer Research、Pew Charitable Trusts、American Brain Tumor Association、Brain Tumor Research Fund at Johns Hopkins、Beckman Coulter, Inc.、Accelerate Brain Cancer Cure Foundation.

共同で研究活動を行った主な研究者は以下の通りである。
Hai Yan, M.D., Ph.D., Genglin Jin, Ph.D., Roger McLendon, M.D., B. Ahmed Rasheed, Ph.D., Ivan Kos, Ph.D., Ines Batinic-Haberle, Ph.D., Henry Friedman, M.D., Allan Friedman, M.D., David Reardon, M.D., James Herndon, Ph.D., and Darell D. Bigner, M.D., Ph.D., at Duke University Medical Center; Sian Jones, Ph.D., Gregory Riggins, M.D., Ph.D., and Kenneth Kinzler, Ph.D., from Johns Hopkins; and Weishi Yuan, Ph.D., from the Food and Drug Administration.

Yan, Parsons, Jones, Kinzler, Velculescu, Vogelstein, and Bigner are eligible for royalties received by Johns Hopkins University on sales of products related to research described in this article, under licensing agreements between the university and Beckman Coulter. These agreements are being managed in accordance with policies at The Johns Hopkins University.

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河野裕子 訳
大藪友利子(生物工学)監修
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原文

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