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臨床試験のグローバル化における倫理および品質の問題/デューク大学

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臨床試験のグローバル化における倫理および品質の問題/デューク大学


デューク大学
2009年2月18日

一流の米国系製薬会社は臨床試験の場を急速に海外へ移しており、倫理や品質管理のほか、現地で得られた知見の科学的有用性を米国人に反映させることに疑問の声が上がっている。[pagebreak]デューク大学臨床研究所(DCRI)の研究者らによると、多くの臨床試験が東欧およびアジアの発展途上国で実施されているが、これらの国は米国の試験参加者よりも貧しく、教育水準も低いことが多い。

「FDAはそのような試験を監視することになっているが、その機構は現在のような状況に対応できるように形づくられてはいない。米国国外を拠点とするFDA調査員の数は2002年以降、毎年15%増加している。一方、米国で活動する調査員の数は同じ時期にちょうど5%を超える程度で減少している」と、New England Journal of Medicine誌に掲載された報告書の筆頭著者であるKevin Schulman医師は述べている。

Schulman医師とデューク大学フュークアスクールオブビジネスのSeth Glickman医師が率いる研究チームは、clinicaltrials.gov registry(治験・臨床研究登録機関)を利用して、2007年に行われた企業主導の第3相臨床試験の募集動向を調べた。一般に第3相試験はもっとも大規模で、なおかつもっとも意味のある試験であり、数千人規模の患者が参加する場合が多い。同研究チームによると、試験の3分の1(509件中157件)が完全に米国国外で実施されていた。また、試験実施機関の半数を超える施設(24,206施設中13,521施設)が米国国外にあることも明らかになった。

研究者らはさらに、1995年および2005年のNew England Journal of Medicine誌、Journal of the American Medical Association誌、およびLancet誌上で臨床試験結果を報告している論文300報を調べ、この10年間に海外の臨床試験実施施設数が倍増し、米国および西欧の施設数が減少していることを確認した。

「事業コストが低いことを含め大量の試験参加者が得られるなど、海外での臨床試験へと誘う力は強い。例えば、インドにおける臨床試験の参加者1人あたりのコストは米国のわずか10分の1である」とGlickman医師は述べている。
「しかし、この流れを後押しする力も同じく強い。いくつかの善意の政策が相まって、実際には米国での時宜にかなった臨床試験の実施を妨げる壁がつくられている」と、Schulman医師は語る。

著者らによると、海外における臨床試験の一部の試験では、研究を試験対象集団の健康上のニーズに合わせることについての懸念が強まっている。「企業が上市・販売する気のない国で医薬品の試験を行っていることはほぼ明らかである。これは、倫理的に大きな問題である」と、Glickman医師は言う。研究者らは、新興市場において企業が現地で流行しているマラリアや結核などの治療薬ではなく、アレルギー性鼻炎、線維筋痛症、および過活動膀胱などの治療薬を試験していた例を多数みつけた。

試験結果には社会生態系や遺伝も何らかの役割を果たすため、そのような特徴を共有していない患者へ結果を適用することには限界があると考えられる。例えば、ヘルスケアが充実している経済は共通した特徴をもつ患者を生み出すが、ヘルスケアを十分受けられない参加者の病態はこれとはかなり異なると考えられる。両集団に同じ薬剤を使用しても、結果が著しく違ってくる可能性がある。同様に、一部の集団にみられる遺伝的多型や「サイン・署名」が特定の薬剤に対する反応に影響を及ぼすため、このような集団で得られた試験結果を異なる特徴をもつ患者に適用することは不適切」と、Glickman医師は述べている。

「海外での臨床試験に関わった人すべてがなんらかの利益を得ることは明らかである。一般に、そのような試験は地域の経済を潤し、教育水準を高め、優れたヘルスケアを受けられるようになる。また、多様な集団で新薬や新しい医療機器の試験を行うことは重要である。しかし、そのためにも、試験を適切に続けるには試験参加者を保護し、試験の依頼者に最高レベルの倫理基準を遵守させる健全な研究体制が必要である」と、Glickman医師は述べている。

著者らは、米国医学研究所や世界保健機関のような組織であれば産業界、学界、規制当局、患者啓発団体を交えた国際的な委員会を作ることは可能で、「医薬品・医療機器産業の将来は、これらの問題への対応にかかっている」と述べている。

本試験に寄与したDCRIの同僚研究者以下の通りである。
Drs. John McHutchison, Eric Peterson, Charles Cairns, Robert Harrington and Rob Califf

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北本 明子 訳
村中健一郎(生物物理学)監修
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[url=http://www.dukehealth.org/HealthLibrary/News/questions_of_ethics_and_quality_cloud_globalization_of_clinical_trials]原文[/url]

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