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薬剤によって大腸癌の発生を抑制できることをマウスで確認/メイヨークリニック

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薬剤によって大腸癌の発生を抑制できることをマウスで確認/メイヨークリニック


メイヨークリニック
2009年2月11日

フロリダ州ジャクソンヴィル発-メイヨークリニックのフロリダ校の研究者らは、現在さまざまなヒト癌に対し臨床試験中である薬剤が、マウスでの大腸癌の発症を有意に抑制したと報告した。本薬剤は副作用が非常に少なく、大腸癌のリスクの高い人々にとって効果的な化学予防薬になるかもしれないと試験責任医師らは述べた。[pagebreak]Cancer Research誌2月15日号に掲載された研究によると、エンザスタウリン〔enzastaurin〕と呼ばれる薬剤は、薬剤を投与されたマウスの大腸癌の発症を有意に抑制した。その上、マウスに発生した 腫瘍は低悪性度、つまり、エンザスタウリンを投与していないマウスの腫瘍と比べ、進行が遅く、また悪性度も低かった。「大腸癌のリスクを低減させることができる薬剤が求められていますが、この試験結果はエンザスタウリンが大腸癌リスクの低下に特異的に有効である可能性を示唆しています」と本試験の主任責任医師である癌生物学部門のNicole Murray博士は述べる。

大腸癌リスクの高い人たちにはしばしば多数の前癌性ポリープが大腸に発生し、大腸内視鏡検査の際、定期的に切除されなくてはならないとMurray医師は言う。

Murray医師および同医師の共同研究者であり共著者である癌生物学部門の主任教授Alan Fields博士の研究室では、大腸癌発生の異なる段階に関与しているそれぞれの遺伝子の特性を明らかにすることに焦点を当て研究を進めている。特に、癌の発生と進行において重要な役割を担っている酵素、プロテインキナーゼC(PKC)ファミリーの研究を重点的に行ってきているが、各種PKC分子、すなわち「アイソザイム」の役割を理解するのに何年も費やした。

「どのPKCアイソザイムも基本的には同様の働きをします。タンパク質にリン酸基を付加することでタンパク質の機能を変化させます。しかし、細胞内では各PKCアイソザイムは異なった役割を担っているようです。」とMurray医師は語る。

それぞれ異なるPKC遺伝子を選択的に欠損または抑制するよう遺伝子を操作したマウスを用いて、研究者らは、2つの主要アイソザイムの極めて重要な役割を特定した。発癌物質に暴露されたマウスに大腸癌のイニシエーション(発癌の初期段階)が生じるためにはPKCβ(PKCベータ)が必要であると、研究者らはCancer Research誌1月15日号において発表した。「これらのマウスはヒト癌でみられるのと同様の大腸癌を発症しますが、PKCβ遺伝子を持たないマウスは大腸癌を発症しません」とMurray医師は言う。

この試験ではまた、PKCi/l(PKC iota-lambda)として知られている別のPKCアイソザイムが大腸癌の進行に関与していることも明らかになった。遺伝性大腸癌患者にみられるタイプの癌に類似したモデルマウスのPKCi/l遺伝子を欠損させると、癌はそれほど急速に進行しないとMurray医師は述べる。「しかし、これらのマウスのPKCβ遺伝子をノックアウトしても、なんの効果も得られません」と同医師は言う。

「つまり、PKCβおよびPKCi/l遺伝子が過剰発現すると、それぞれの遺伝子が独自の特異的役割を担い、大腸癌を発症させたり進行させたりするということです。」とMurray医師は言う。

これらの研究結果は、異なったPKCアイソザイムを標的にすることで、それぞれ特有の癌治療効果が得られる可能性を示唆する。たとえば、大腸細胞内のPKCβを標的にし、癌の発生を抑制することや、PKCi/lを阻害し、既に発症した癌の進行をくい止めることが可能になるかもしれないとMurray医師は言う。

最新の研究では、PKCβ経路を介するシグナル伝達を抑制するために特異的にデザインされた経口薬であるエンザスタウリンの試験が研究チームにより行われた。現在、本剤はB細胞リンパ腫および高悪性度の脳神経膠腫の治療に対して臨床試験中である。

研究者らはある一群のマウスに本剤を毎日投与し、この投与群のマウスを対照群のマウスと共に大腸癌を誘発する発癌物質に暴露した。22週間後、対象群のマウスの80%が大腸に腫瘍を発生したのに対し、投与群で腫瘍が発生したのは50%のマウスのみであり、発症した癌も対照群ほど進行していなかった。

本剤の大腸癌の化学予防薬としての効果は比較的簡単な方法で検証することができるとMurray医師は言う。前癌病変である大腸ポリープは大腸内視鏡検査時に発見することができるため、PKCβを標的とする薬剤を摂取している患者において、時間経過と共にポリープの形成を抑制するかどうかを知ることは可能であるとMurray医師は言う。

本研究は、米国国立衛生研究所およびメイヨークリニック基金の研究助成金により資金援助を受けた。試験用のエンザスタウリンはEli Lilly社の提供によるものである。本試験の著者からは利害の対立(金銭の授受)は報告されていない。

本試験の共著者は次の通りである。
Shelly Calcagno, Murli Krishna M.D., and Sofija Rak, All of Mayo Clinic in Jacksonville. Another co-author is Michael Leitges, Ph.D., of University of Oslo in Norway.

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Yuko Watanabe 訳
鵜川邦夫(消化器内科)監修
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[url=http://www.mdanderson.org/departments/newsroom/display.cfm?id=317598A4-BDEA-41B6-AF4F629BB0D104C3&method=displayFull&pn=00c8a30f-c468-11d4-80fb00508b603a14]原文[/url]

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