標的治療薬の組み合わせによりK-Ras変異の抵抗性腫瘍を治療できる可能性/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

標的治療薬の組み合わせによりK-Ras変異の抵抗性腫瘍を治療できる可能性/ダナファーバー癌研究所

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標的治療薬の組み合わせによりK-Ras変異の抵抗性腫瘍を治療できる可能性/ダナファーバー癌研究所


2つの細胞シグナル伝達経路の遮断により、動物モデルのK-Ras変異腫瘍が大幅に縮小
2008年12月4日

ボストンの複数の学術医療センターの癌研究者らによるチームは、以前は標的治療に抵抗性であった腫瘍に対して実現する可能性のある治療法を発見した。

オンラインでいち早く発表されたNature Medicine誌のレポートの中で、ダナファーバー癌研究所、マサチューセッツ総合病院(MGH)がんセンター、ベス・イスラエルDeaconess医療センター(BIDMC)がんセンターの医師らは、2つの異なるキナーゼ阻害剤(特定の細胞増殖経路を阻害する薬剤)を組み合わせると、K-Ras遺伝子変異により発現した肺癌を持つマウスで、顕著な腫瘍縮小につながったと報告した。[pagebreak]K-Ras変異は、米国における癌による死亡原因のトップである非小細胞肺癌の30%近くに関連があることに加え、特に大腸癌の多くと、膵臓癌のほぼ全症例の両方に関連性があり、この変異があると治療に対して強い抵抗性を示す。

「K-Ras変異癌を効果的に治療できる方法が発見できれば、固形腫瘍学において大きな進展です。K-Ras変異は、複数の治癒不可能な癌に、よくみられます」と、本報告の筆頭著者の一人である、MGHがんセンターのJeffrey Engelman医師は言う。

「K-Ras変異のある癌は、現在まであらゆる標的治療に対して抵抗性でした。現在、臨床開発中である薬剤のPI3KとMEK阻害剤の組み合わせが、これらの癌で非常に有効であるかもしれないということに興奮を覚えます」

本試験は、細胞の生存のために重要で、細胞運動性および細胞接着をコントロールすることで知られているPI3K細胞伝達経路に焦点を当てて、開始された。PI3K変異は、実験室での研究では腫瘍発生を引き起こしたが、動物モデルではまだその役割は研究されていなかった。研究チームは、薬剤ドキシサイクリンの投与により癌関連PI3K変異の発現を誘発し、肺腫瘍を発生させた遺伝子組み換えマウスを開発した。

試験用のPI3K阻害剤でそれらの動物モデルを治療することにより、急速な腫瘍退縮がみられた。以前の試験において、PI3K阻害がK-Rasに誘発された腫瘍の発生も阻害する可能性を示唆していたため、医師らは、マウスのK-Rasにより刺激を与えた腫瘍にも、PI3K阻害剤を試した。

治療の効果はなかったが、K-RasがMEK/ERKシグナル伝達経路も活性化したことを踏まえ、研究者らは試験用のMEK阻害剤および両薬剤の組み合わせにより動物モデルの治療を行った。MEK阻害剤のみによる単剤療法では、腫瘍サイズが若干縮小しただけであったが、両薬剤の組み合わせによる治療では、K-Rasに刺激を受けた肺腫瘍が実際に消滅した。

「ここ数年の間に、私たちはK-Rasが2つの主要な伝達経路、PI3KおよびMEK/MARK伝達経路を活性化させ、それらの伝達経路が、腫瘍の成長と生存に関して、多くの重複する機能を持っていることを知りました」と、本試験の連絡先著者の一人であるBIDMCがんセンターのLewis Cantley医師は述べた。

「両伝達経路の阻害剤は、すでに臨床試験に入っているところです。この論文の中で私たちは、どちらかの薬剤単独では、マウスのK-Ras誘発腫瘍に対して弱い効果しかないですが、両伝達経路の阻害剤を組み合わせることで、それらの腫瘍を最小の毒性で全滅させられることを示しました」

また別の連絡先著者であるダナファーバーのKwok-Kin Wong医師は、「私たちの試験結果は本当に素晴らしく、この組み合わせ治療を、ヒトの第1相および第2相試験に向けて強力かつ説得力もある科学的根拠を提供しています。このような試験は、マサチューセッツ総合病院、ベス・イスラエル医療センターおよびダナ・ファーバーの実験室間の非常に生産的な協力がなければ実現しなかったでしょう」と付け加えた。

Wong医師およびEngelman医師はハーバード大学医学部の助教であり、Cantley医師は医学のCastle寄付講座教授である。

研究者らはK-Ras変異に加えて、これ以外の腫瘍関連遺伝子変異を持つ癌も含めたK-Ras変異癌の他モデルに対する組み合わせ療法の臨床試験へと進むこと、ならびに他の癌標的療法においても悩みの種であったK-Ras関連腫瘍が組み合わせ療法に対して抵抗性を示すか、といった問題を調べることに期待を寄せている。

Nature Medicine誌での報告のその他の共著者は下記のとおりである。
Liang Chen, PhD, of Dana-Farber, Xiaohong Tan, MD, PhD, Kate McNamara and Samanthi Perera, PhD, Dana-Farber; Youngchul Song, and Ramneet Kaur, MGH Cancer Center; Alexander Guimaraes, MD, Rabi Upadhyay, Ralph Weissleder, MD, PhD, and Umar Mahmood, MD, PhD, MGH Center for Molecular Imaging Research; Timothy Li, BIDMC; Katherine Crosby, Angela Lightbown and Jessica Simendinger, Cell Signaling Technology; Michel Maira and Carlos Garcia-Echeverria, PhD, Novartis Institutes for Biomedical Research; Lucian Chirieac, MD, and Robert Padera, MD, PhD, Brigham and Women’s Hospital.

本試験は、the National Institutes of Health, the American Association for Cancer Research, the International Association for the Study of Lung Cancer, the Joan Scarangello Foundation to Conquer Lung Cancer, the Cecily and Robert Harris Foundation, the Flight Attendant Medical Research Instituteによる助成金、および複数のDana-Farber/Harvard Cancer Center Specialized Program of Research Excellence助成金を受けた。

ダナ・ファーバーがん研究所(www.dana-farber.org)は、ハーバード大学医学部の主要教育加盟施設であり、米国における癌研究および治療センターではトップ施設の1つに数えられる。また、米国立癌研究所(NCI)による包括的がんセンターに指定されたダナ・ファーバー/ハーバードがんセンター(DF/HCC)の創立メンバーでもある。

マサチューセッツ総合病院(www.massgeneral.org)は、ハーバード大学医学部の最初で最大の教育病院であり、米国における最大の病院主体の研究プログラム(5億ドル以上の年間研究予算)を実施している。

ベス・イスラエルDeaconess医療センター(www.bidmc.harvard.edu)は、ハーバード大学医学部の患者ケア、教育、研究における加盟施設であり、米国国立衛生研究所(NIH)が財政援助した米国の独立系病院の中で、常にトップ4以内にランクインしている。

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椎名千尋 訳
村中健一郎(生物物理学)監修
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[url=http://www.dana-farber.org/abo/news/press/2008/combining-targeted-therapy-drugs-may-treat-previously-resistant-tumors.html]原文[/url]

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