2009/03/24号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/03/24号◆癌研究ハイライト

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2009/03/24号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年3月24日号(Volume 6 / Number 6)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・喉頭癌、3剤併用療法により喉頭が温存される可能性
・肥満は膵臓癌手術後の生存率を悪化させる
・前立腺癌について話す際、医学用語に混乱する患者もいる
・稀な遺伝性疾患によりUV曝露がメラノーマを引き起こす機序が明らかに

喉頭癌、3剤併用療法により喉頭が温存される可能性

3剤併用の導入化学療法は、一般的に用いられている2剤併用療法と比べて、喉頭癌および下咽頭癌患者の咽頭温存率を改善したとフランスの研究者が報告した。喉頭は、声を生じる器官であることから一般的に「発声器」と呼ばれている。咽頭が除去されると、発声および嚥下が大きく障害される。この知見は、3月24日にJournal of the National Cancer Institute誌で発表された。

この試験結果は、手術可能な局所進行喉頭癌または下咽頭癌患者200人超を対象に「導入化学療法」を投与した第3相ランダム化試験から得たものである。「導入化学療法」とは、放射線療法または化学療法と放射線療法を併用する「根治」療法の前に行う治療である。導入療法として、患者をドセタキセルシスプラチン、および5-フルオロウラシルによる3剤併用療法(TPF)群またはシスプラチンと5-フルオロウラシルのみの療法(PF)群のいずれかに割り付けた。試験では、いずれかの導入化学療法に反応した患者に対し、放射線療法あるいは化学療法と放射線療法の併用を施行した。非反応患者には手術を施行した。

フォローアップ期間(中央値3年間)中の喉頭の保存率はTPF群で70.3%、PF群で57.5%であった。TPF群の全奏効率はPF群より優れていた(80.0%対59.2%)が、全生存率および無病生存期間に統計的有意差は認められなかった。好中球減少症および発熱性好中球減少症等の副作用は、TPF群のほうが不良であった。

本試験には弱点はあるが、導入化学療法として3剤併用療法のほうが2剤併用療法より有効であることを示すエビデンスが得られた。制限の1つに、試験で喉頭癌患者と下咽頭癌患者を区別できなかったという問題がある。「これは重要なことである。なぜなら、この2つの癌は解剖学的には近接しているが、生物学的に、および自然経過は大きく異なるからである」と、シドニー・キンメル総合がんセンターのDr. Arlene Forastiere氏は述べている。

導入化学療法と、「同時併用化学放射線療法」と呼ばれる化学療法および放射線療法による同時療法は、手術に代わる治療法として有効であることが実証されている。このような結果は出ているものの、喉頭を温存するための導入化学療法の効果が化学療法同時併用放射線療法と同等なのか、劣るのか、あるいは優れているかは依然として不明である、とForastiere氏は続けた。

肥満は、膵臓癌手術後の生存率を悪化させる

重度の肥満患者は、膵臓癌手術後のリンパ節転移や再発、全生存率低下の可能性が高いことがテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究チームにより報告された。Archives of Surgery誌2009年3月号で発表された単一施設試験によると、体格指数(BMI)が35を超える患者の再発リスクおよび死亡リスクは、BMI低値の患者より2倍高かった。

同様のBMI値と膵臓癌による死亡リスクとの間の関係を実証したその他の試験に言及し、「肥満患者に対する腫瘍学的治療の困難さ(患者および治療に関連した)とは関係なく、肥満は腫瘍の生物学的特徴に影響を及ぼす宿主因子である」と、Dr. Jason B. Fleming氏らは新しい試験の結果について話した。

1999年~2006年に、MDアンダーソンがんセンターで膵腺癌手術を受けた連続した患者285人のデータを調べた。BMIが35を超える患者の生存率の中央値は13.2カ月、BMIが23未満の患者では27.4カ月であった。最終フォローアップ時に再発が認められたのは、BMIが35を超える患者では20人中19人、残りの患者では264人中161人であった(95%対61%)。

BMIが35を超える患者は、BMI低値の患者に比べ、手術前に放射線療法を受ける可能性が低く、リンパ節転移リスクを評価するための要因が複雑であることを治療チームは確認した。それでも、その差を調節しても、BMIが35を超える患者のリンパ節転移の発現率は、BMI低値の患者より12倍高くなった。

「われわれの知る限りでは、現在までの文献報告のうち、本試験で確認された肥満とリンパ節転移との間の関係はもっとも強く、この関係の強さは肥満と癌進行との間の関係を示す臨床試験および検査所見によって裏付けられている」。

前立腺癌について話をする際、医学用語に混乱する患者もいる

医師が前立腺癌について患者と話し合うときに通常使用する医学用語および患者教育資料や調査研究で用いられる医学用語は、多くの教育レベルの低い男性にとってなじみがない。Journal of Clinical Oncology誌3月23日号で報告されたこの知見は、バージニア州の2つの低所得者向け診療所で100人以上の主にアフリカ系米国人を対象として行った面接から得たものである。平均的な患者は年齢58歳、教育レベルは5年生レベルであった。

「勃起」や「性交不能」などの用語を理解した男性は半数未満であり、「失禁」を理解したのはわずか5%であった。これらはいずれも患者に対して前立腺癌治療のリスクの可能性について話し合う際に通常使用する言葉である。これらの男性の多くは、人間の基本的な解剖学的構造について詳しくない。

マサチューセッツ総合病院のDr. Kerry Kilbridge氏が主導する研究者らは、前立腺癌用語に対する理解が低いことや教育レベルが低いことは治療に関するインフォームドコンセントの障害となり得ると述べている。さらに、参加者が質問内容を理解できていない場合、QOLを評価する試験等の研究試験結果が不正確なものとなる可能性がある。

この新たな知見を用いて、前立腺癌について患者との話し合いを改善することができるであろう。研究者らは、前立腺癌に関して使用される一般的な医学用語とその俗称を併記した一覧表を作成した。また、医療提供者に対し、患者は人体の解剖学や器官系の実用的知識を持っていないと考えるのがよいと主張している。「前立腺癌に関する患者教育は、患者の理解レベルに合わせることから始めるのが無難である」。

「われわれは、臨床診療において患者と話し合う際に使用する言葉に注意する必要があるだけでなく、試験の評価項目に含まれる用語が、教育レベルの低い人に本当に理解されているかどうかしっかりと確認しなければならない」という付随論評が加えられている。

稀な遺伝性疾患によりUV曝露がメラノーマを引き起こす機序が明らかに

紫外線(UV)と皮膚癌との関連について知られていることは、ほとんどが基底細胞癌および扁平上皮細胞癌と関連するということのみである。発生頻度は低いが、皮膚癌の中では悪性度がかなり高い黒色腫(メラノーマ)に関するエビデンスは少ない。昨日全米科学アカデミー会報誌で発表された知見によると、新たな研究により、UVによってPTENと呼ばれる通常腫瘍を抑制する遺伝子に変異が生じることが、黒色腫形成に重要な役割を果たすとことが示唆されている。

NCIがん研究センターの研究者らおよびブラウン大学の共同研究者らは、1971年~2008年にNIH臨床センターで受診した色素性乾皮症(XP)患者8人から採取した59個の黒色腫検体を分析した。XPは、皮膚のDNA損傷を修復する細胞の能力を損なう稀に生じる遺伝性疾患であり、これに罹患した患者は黒色腫リスクが約1000倍高くなり、急激に進行する。

研究者らは、分析したXP黒色腫の56%で、PTEN遺伝子が突然変異していたことを確認した。これらの突然変異のうち91%は、一般的にUVによる損傷から生じるタイプのDNAの塩基置換であり、腫瘍1個あたり1~4つの変化が認められた。これらの突然変異は、非常に初期の段階である上皮内黒色腫でも確認されている。同一患者のものでも、黒色腫にさまざまなPTEN突然変異が認められることがときどきあり、独立して発生することが示された。

これらの知見により「黒色腫を誘発するにあたってUVが果たす役割に関する機構的枠組みおよび黒色腫を予防するためのUV防御措置に対する堅固な根拠が得られた」と、Dr. Kenneth Kraemer氏らは述べている。

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北本 明子 訳

林 正樹(血液、腫瘍医)監修

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