2009/04/07号◆スポットライト「膨大な数の女性で大規模な乳癌リスクマッピング」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/04/07号◆スポットライト「膨大な数の女性で大規模な乳癌リスクマッピング」

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2009/04/07号◆スポットライト「膨大な数の女性で大規模な乳癌リスクマッピング」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年4月07日号(Volume 6 / Number 7)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf

____________________

スポットライト

膨大な数の女性で大規模な乳癌リスクマッピング

一部の女性では、乳癌感受性遺伝子BRCA1およびBRCA2の比較的稀な変異を引き継いでおり、この変異は乳癌発症リスクを顕著に引き上げる。しかし、ほとんどの女性にとって、乳癌の素因は、ありふれたものと稀なものを含んだ膨大な数の遺伝的変動から決定されるとみられ、そのひとつひとつは発癌リスクに対してわずかな影響しか及ぼさない。

このような見解はゲノムワイド関連研究等の大規模ゲノム研究から生まれた。この研究から、乳癌リスクと関連する染色体領域が明確に特定され始めていた。さらにここ数年、数千人の女性を対象とした第一世代の研究では、6カ所の染色体領域が乳癌リスクと決定的に結びつけられ、現在ではさらに4カ所の領域が特定されている。

「これらの試験から、数百まではいかないとしても数十の領域が、それぞれ少しずつ女性の乳癌リスク全体に寄与していることが明らかとなった」とハーバード大学公衆衛生学部に所属し、NCIの癌感受性遺伝子マーカープロジェクト(CGEMS)のリーダーであるDr.David Hunter氏は述べた。このプロジェクトでは乳癌と前立腺癌に関するゲノムワイド関連研究を実施している。「このような考えは3、4年前に仮説となり、現在われわれはその証明作業を開始した」と続けた。

早期乳癌のゲノムワイド関連研究で計画されたフォローアップでは、CGEMSチームが、第1染色体および第14染色体上の関連領域を特定して検証した。英国癌研究所(Cancer Research UK)のDr.Douglas Easton氏が率いた2番目の試験では、CGEMSイニシアティブと緊密に協力して、同様に、第3染色体と第17染色体上の領域を特定した。両研究から得た知見はNature Genetics誌電子版に3月29日に発表された。

「これらの2つの試験は、極めて多数の女性を対象としたゲノムワイド関連試験の第2の波を示している」とNCIの癌疫学・遺伝学部門に所属し、CGEMSのリーダーであるDr.Stephen Chanock氏は述べ、「現在ではこの研究戦略から新たな見通しを獲得し続けることができそうであることがわかっており、抱えているリスクの土台となっている基本的なメカニズムを理解するためにフォローアップ研究をさらに続ける必要がある」と続けた。

さらにCGEMSチームは乳癌のリスク要因が第2、5、8、10、16染色体上の他の6領域にあるとする以前の報告を確認した。

目印の特定

このようなすべての研究における第1ステップは、SNPs(一塩基変異多型)をマーカーとして用いて、乳癌の女性と健康な女性のDNAを比較することであった。これらは、効率よく検出できるだけの高い頻度でDNAの一単位が人によって異なっているようなゲノム中の場所である。癌の女性および癌ではない女性でSNPs分布を追跡することによって、疾患リスクが増加または減少した人に顕著により多くみられる遺伝子変異を明らかにすることができる。

先入観のない方法を用いるため、ゲノムワイド関連試験からはしばしば、癌リスク要因を探索しようとはそれまで誰も考えなかったようなゲノム上の場所が指摘されている。これが新たな導線となる一方で、全領域を対象とするチャレンジであるとも強調した。研究者らはゲノム上の役割がまだ明確になっていない領域におけるリスクシグナルをどのようにして説明するのだろうか?

「ある領域のゲノム構造が探索された場合でも、リスクの源をマッピングして理解することは難しい可能性がある」と、先月、ゲノムワイド関連研究における専門家のための本テーマに関する科学会議を主催したChanock氏は述べた。

さらに、「これらの領域の1つ1つが複雑であることがわかっている。リスクシグナルは、ゲノム上の変異または構造変化の特定のセットを示すマーカーである可能性がある。各領域を充分検討し、その領域の変化がどのように乳癌リスクに寄与しているかを理解することはチャレンジである」と続けた。

「このようなタイプの研究は、ヒトゲノムにおける全ての変異を検出するようにデザインされているわけではなく、シグナルが発見されるとその源を発見するためにさらに多くの仕事が必要になる」と、このような方法で前立腺癌の遺伝学研究にカルフォルニア大学サンフランシスコ校のDr.John Witte氏は述べた。

過去数年の間だけで、新技術のおかげで、遺伝子コピー数におけるDNAの増減および変異といったゲノム上の正常変異及び異常変異が驚くべき量であることが明らかになった。「ヒトゲノムは極めて複雑であり、癌リスクの原因の根底にあると考えなければならない多くの変異源が存在する」とWitte氏は述べた。

これらの関連研究は、癌リスクの根底にある遺伝的メカニズムにむけた重要な新しい手がかりを提供した。研究者らは、前立腺癌の遺伝的要因は家系性パターンが原因で癌リスクに寄与していると疑ってきた。しかしゲノムワイド関連研究までの間は、遺伝したリスクに関するバイオマーカーは実際のところ存在していなかった。

将来における展望

最近の進歩は目覚ましいが、今はまだ初期段階である。たとえば乳癌の場合、これまでに同定された染色体領域は、この疾患の遺伝リスク全体のごくわずかにしかあたらない。しかし、新たな結果が示唆するように、数万のDNAサンプルを用いる共同研究と、その結果を注意深く検証することが癌リスクの源をさらに明らかにする。

「ゲノムワイド関連研究から学んだことは、各マーカーのシグナル強度が比較的弱いため、シグナル研究では、そこにある全領域から少数のものしか拾い上げることができず、そのため、より大きなサンプル数とデータの蓄積が必要となっていることである」とHunter氏は述べた。

さらに、「しかしNCI内およびその外部共同研究者らからの資源を集めることによって、個々のグループであれば到達するのにもっと長い年月がかかったであろう検討が可能になった」と続けた。

—Edward R. Winstead

【引用部分訳】「ヒトゲノムは極めて複雑であり、癌リスクの原因の根底にあるとみなさなければならない多くの変異源が存在する」— Dr.John Witte氏

******

関屋 昇(薬学) 訳

原 文堅(乳腺腫瘍医/四国がんセンター)監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward