2009/04/21号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/04/21号◆癌研究ハイライト

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2009/04/21号◆癌研究ハイライト

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2009年4月21日号(Volume 6 / Number 8)
「第100回米国癌学会(AACR)年次総会から」

 

 

 

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

 

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癌研究ハイライト[AACR報告]

・膵臓癌幹細胞を標的とする併用療法
・脳腫瘍治療薬の発見となるか
・血中の腫瘍細胞を捕らえるフィルター
・慢性リンパ性白血病のマーカー、血液中に見つかる

膵臓癌幹細胞を標的とする併用療法

マウスを対象として試験が行われた新しい薬剤併用療法は、ある種の膵臓腫瘍を促進する細胞を標的としている。「膵臓癌マウスモデルに対しゲムシタビンおよび試験薬tigatuzumab[ティガツズマブ]を併用投与したところ、癌幹細胞成分が消滅し、腫瘍増殖が抑制された」と、AACR(米国癌学会)年次会議においてジョンズホプキンス大学シドニーキンメル総合がんセンターの研究者らが報告した。

「試験結果より、この致命的な疾患を抱える患者を対象に、有望な併用療法について試験するための理論的根拠が得られた」と、Dr. Rajesh Kumar NV氏らは結論づけた。

癌幹細胞は自己再生し、腫瘍を発生すると考えられており、従来の治療に対し抵抗性を示す。研究者らは、ヒト膵臓癌幹細胞が細胞死(アポトーシス)のプログラムに関与する細胞死受容体‐5(DR-5)と呼ばれるタンパク質を過剰発現することを確認した。このタンパク質は、CS-1008として知られているヒトモノクローナル抗体tigatuzumabの標的でもある。

これらの重要な細胞に対する本剤の効果を評価するため、マウスに対しtigatuzumab単独投与、ゲムシタビン単独投与、または併用投与を行った。ゲムシタビンは腫瘍サイズを縮小させたが、膵臓癌幹細胞(タンパク質マーカーであるALDH、CD24、およびCD44に基づく)成分の比率を上昇させ、腫瘍はいずれも再発した。しかし、併用投与では、投与を受けたマウスの半数で長期寛解が得られた。

さらに、tigatuzumabおよびゲムシタビン(進行性膵臓癌患者における一次治療)の投与を受けたマウスでは、癌幹細胞が消滅した。「tigatuzumabは、癌幹細胞を標的とする初のモノクローナル抗体であると考えられる。本剤については、手術不能かつ未治療の膵臓癌を有する患者を対象として第2相臨床試験が行われている」と、 Kumar NV氏は述べている。

脳腫瘍治療薬の発見となるか

腫瘍に対する効力と、腫瘍に必要な栄養や酸素を供給する血管の成長(血管新生)に対する効力とを併せ持つとみられる脳腫瘍治療薬が発見された。このアプローチは、脳腫瘍である膠芽腫およびその他の癌の治療にとって重要なものであると示唆するエビデンスが多く発表されはじめている。前臨床試験において、化合物2.5-ジメチル-セレコキシブは血管脳関門を通過し、腫瘍と血管新生とを阻害したのである。

「腫瘍と腫瘍血管の両方を攻撃し、しかも長期に渡って投与可能な単一の薬剤が見つかった」と、南カリフォルニア大学ケック医科大学のDr. Florence Hofman氏は述べた。この薬剤は、重大な副作用と関連があったCOX-2阻害剤の類ではないため、数カ月から数年間の継続使用も可能とみられる。

脳腫瘍にジメチル-セレコキシブを用いて完治は期待できないとしても、同薬または類似薬によって、この致死的疾患を有する患者の生存期間を数年におよんで延長できるかもしれないと、研究者らは先週日曜、AACR年次総会で発表した。さらに、転移性脳腫瘍のうち、血管新生に依存している場合にも同薬が有効である可能性があると示唆している。

「血管は癌の治療に重要な標的であることがわかってきた。そして、その標的を狙い撃つわれわれの療法は他のアプローチより有利であると考えている」とHofman氏は語った。

血中の腫瘍細胞を捕らえるフィルター

『メンブレン(細胞膜)マイクロフィルター』を採用した新たな検査機器は血液を調べて循環腫瘍細胞(CTC)、すなわち腫瘍から血液に漏れ出た細胞を検知することができると南カリフォルニア大学ケック医科大学とカリフォルニア工科大学の研究者らはAACR年次総会で発表した。

循環腫瘍細胞は、転移性疾患を調べるための「生検に代わる方法」となる可能性があるとされる。昨今、癌の診断や経過観察のためにこうした細胞検査などの非侵襲的な方法のニーズが増加していると、記者会見で同機器の説明をしたケック医科大学大学院生のAnthony Williams氏は述べた。この技術はまだ商業利用されていないが、まもなく開始される複数の臨床試験において患者の経過観察に使用される予定であるとも伝えられた。この機器は正常細胞と癌細胞のサイズの違いを利用したものである。「循環腫瘍細胞は正常な細胞より大きい。フィルターの細孔サイズは通常サイズの血液細胞は通過するが、腫瘍細胞のような大きなものであれば捕らえることができる」と、Williams氏は言う。分析に何時間もかかる他の技術に比べ、マイクロフィルター検査では比較的速く、サンプルによっては数分で結果が出る。

米国食品医薬品局(FDA)に唯一承認されているCTC検査および計数法であるVeridex社のCellSearch(セルサーチ)システムについては、すでに癌患者のCTC値を直接治療法に用いることができるか調査中である。この研究で用いられたマイクロフィルター検査機器は60人近い進行癌患者の血液検体の約93%でCTC細胞を検知したのに対し、CellSearchシステムの同サンプルにおける検知率は46%であった。

研究チームはこの機器によって治療効果の初期指標としてCTC値を用いることが可能かどうかを突き止めるとともに、治療の標的を探すことを目的として、捕らえたCTCの分子学的特徴を明らかにするためにさらに複数の研究を計画している。

慢性リンパ性白血病の血中マーカーが見つかる

慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)患者の血液には、、この病気と診断される何年も前に検出できるタンパク質異常が含まれている可能性があると米国癌学会の年次総会で発表された。CLLと診断される10年前までに採血された血液サンプルの解析で、ある患者らからは免疫系の欠陥が見つかった。今回の知見によってこの疾患の生物学への手がかりが得られるのみならず、診断前の免疫機能の変化がCLLの予後に影響を与えるかどうか探求することの理論的根拠が与えられると研究者らは述べた。

この発見にあたり、NCI癌疫学・遺伝学部門(DCEG)のDr. Huei-Ting Tsai氏らは、前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌スクリーニング試験(PLCO)の過程でこの病気を発症した109人の診断前の血液サンプルを入手した。このNCI出資の試験は77,000人以上の連続血液サンプルを保有している。

最終的にCLLを発症した患者の約40%に、診断に先立つ免疫系欠陥の証拠があった。さらに31%に、免疫系欠陥の指標である遊離軽鎖(FLC)比率の偏りが見られた。ある患者の場合は、診断の9.8年前にこの偏りがあったことが明らかであった。

CLLの発症前にFLC比率が変化しているという結果は、さらに探求すべき分野として感染、またはそれ以外の免疫系の変化を示している、と共著者であるDCEGのDr. Neil Caporaso氏は言う。「CLLに関係している環境上、分子的、あるいは遺伝子的要因lを理解しようと集中的に取り組んでいるなかでこれは重要な手がかりである。」

CLLの原因については、家族歴や老化とは関係づけられているが、他にはほとんど知られていない。診断前血液サンプルを用いると、白血病を発症したために発現した変化であるか、発症以前から変化していたものであるかの切り分けができる。「PLCOの血液サンプルを利用して時間をさかのぼりこの不可解な疾患のタンパク質異常を検知できたことは幸運であった」とTsai氏は述べた。

この研究者らは、2月には、PLCO血液サンプルから、モノクローナルB細胞リンパ球増加症と呼ばれる前駆状態がCLL診断の何年も前から現れていることを発見している。今回の発見とあわせ、これらの発見は、癌の前駆状態を明らかにする上でのコホート研究の威力を示すものであると言う。

遺伝性網膜芽細胞腫の生存者が後年直面する2次癌リスク稀な目の癌である遺伝性網膜芽細胞腫を克服した子供は、後年、2次癌による死亡リスクが高くなる。遺伝性網膜芽細胞腫の生存者に関する過去最大の研究により、治療後50年までに、遺伝性の場合、生存者4人のうち1人が2次癌で死亡しているのに対し、非遺伝性の網膜芽細胞腫生存者の場合の2次癌による死亡者はわずか1%であることが明らかになった。癌腫としては、原発性骨肉腫、軟部肉腫、メラノーマ、脳および中枢神経系の癌、肺癌、子宮癌などがある。米国では毎年約300人のほぼ5歳以下の子供が網膜芽細胞腫と診断される。この癌は、腫瘍抑制遺伝子RB1の突然変異が関係している。西欧諸国では遺伝性でも非遺伝性の網膜芽細胞腫の場合でも大多数の小児は生存する。

前回の報告に続いて、NCI癌疫学・遺伝学部門(DCEG)のDr. Chu-Ling Yu氏らは、1914年から1996年の間に診断された遺伝性網膜芽細胞腫生存者1,092人と非遺伝性網膜芽細胞腫生存者762人の死因を確認した。一般集団に比べて、2次癌による死亡率は遺伝性網膜芽細胞腫生存者の場合35倍、非遺伝性網膜芽細胞腫生存者では2.5倍高かった。

遺伝性網膜芽細胞腫の場合、患者の癌に対する遺伝的素因と、放射線治療の両方がともに2次癌の発症に寄与しているとみられると、統括著者、DCEGのDr. Ruth Kleinerman氏は注目している。

「遺伝性網膜芽細胞腫の生存者を診る医師が、生存率が良好でも、新規の悪性腫瘍を後年発症するリスクが非常に高いことを認識していることが重要だ」とKleinerman医師は言う。

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北本 明子、野中 希、杉田 順吉 訳

後藤 悌(呼吸器内科医/東京大学大学院)
林 正樹(血液・腫瘍医/敬愛会中頭病院) 監修

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