2009/05/05バイオインフォマティクス特別号◆「癌ゲノム学-膨大なデータの山から必要な情報を探す」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/05/05バイオインフォマティクス特別号◆「癌ゲノム学-膨大なデータの山から必要な情報を探す」

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2009/05/05バイオインフォマティクス特別号◆「癌ゲノム学-膨大なデータの山から必要な情報を探す」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年5月5日バイオインフォマティクス特別号(Volume 6 / Number 9)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌ゲノム学-膨大なデータの山から必要な情報を探す

コンピュータ化および高度な解析技術を用いずに、これまでに蓄積された腫瘍に関する膨大なゲノム情報を処理して取捨選択しなければならなかったとしたら、癌の重要な手がかりは、遺伝暗号の寄せ集めとして依然として埋もれたままになっていたかもしれない。

もちろん、そのような事態はまぬがれた。それどころか、ここ10年にわたる効率化の向上とともに、生物学的情報は、収集された後、コンピュータのサーバー上に保存され、インターネットを介して共有できるようになった。情報科学の助けがあればこそ、これまで世界中の研究者らはデータベースを調査し、癌に関する相当数の新たな発見を続けてきたのである。

前立腺癌の融合遺伝子に関する最近の発見は、意外なものであった。2個の遺伝子が不適切に融合したDNA塩基配列による遺伝子融合は、血液癌の特徴とされており、バイオインフォマティクス(生命情報科学)のアプローチがこの検証に応用されるようになる2005年までは、”固形”腫瘍での検出をすり抜けていた。

ミシガン大学医学部の研究者らは、一部の前立腺腫瘍における特定のパターンを示す遺伝子活性を調べるため、Oncomine[オンコマイン]というオンラインデータベース検索のアルゴリズムを開発した。現在、融合遺伝子は、前立腺腫瘍によくみられることや癌化を引き起こす可能性があることで知られている。融合遺伝子は、肺腫瘍でも発見され、その他の一般的な癌においても今後見つかる可能性がある。

多くのオンラインデータベースと同様、Oncomineも癌生物学に関するさまざまな問題を調査するのに用いられる。これはバイオインフォマティクス以前には構築し得なかったものである。データベースには、2万件のマイクロアレイ実験の結果が含まれ、その大半には何千個もの遺伝子情報が集約されている。

他にもバイオインフォマティクスを供給源とするものとして相関マップ(Connectivity Map)がある。これは、米国のBroad Instituteで開発され、米国国立癌研究所(NCI)の癌生物学統合プログラム(Integrative Cancer Biology Program)の助成を受けて行われた。遺伝子サインのオンラインデータベースになっており、薬剤の新たな使用法を見つけ出すのに有用である。ユーザーは、患者の利益となるように癌細胞中の遺伝子プログラムを修正する薬剤を検索することができる。最近の研究では、白血病幹細胞を標的とした、稀な白血病の治療薬候補を獲得するにいたった。

どのコンピュータによる予測もそうであるように、ここから得た発見には検証が必要である。それでも、選択肢がほとんどないようなとき、バイオインフォマティクスが何らかの手がかりを与えてくれる。たとえば、コンピュータのアルゴリズムを介して、ヒトゲノムのデータの山から見つけ出すなど至難の業であるマイクロRNAが発見された。最初は他の生物種で特定された遺伝物質の断片(マイクロRNA)は、約22ヌクレオチドの長さしかないが、重要な調節遺伝子であり、癌の転移関連していた

バイオインフォマティクスは、癌ゲノムの大きな挑戦の助けとなり得る。すなわち、癌化の原因となり、それを引き起こす遺伝子変異(「ドライバー」と呼ばれる)と、ただ腫瘍の中に存在しているだけで癌化とは関係のない遺伝子変異(「パッセンジャー(乗客)」と呼ばれる)を分類するのに有用である。コンピュータ化したツールで、変異がどの程度高頻度でみられるかなど統計的な尺度に基づき、「ドライバー」を見つけ出すことが可能になる。

癌ゲノムの全研究から知識を取り出し、癌の予防・早期発見・治療などの改善に応用していくことが依然として目的である。癌ゲノム・アトラス(TCGA: The Cancer Genome Atlas)プロジェクトによる最近の研究結果から示唆されるように、この目的の達成は、非常に多くの臨床データやゲノムデータを収集し、比較することで可能となる。

脳腫瘍に関するゲノムデータおよびエピジェノミックデータを、患者の治療記録と比較することによって、抗癌剤抵抗性の作用機序とみられるメカニズムが解明された。それ自体、本質はさほど意外なものではないが、強力な解析ツールをもって、こういった比較を大規模に行えば、研究者らによる発見のペースが加速される可能性がある。その点でバイオインフォマティクスは有望なものといえる。

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遠藤 香利 訳

大藪 友利子(生物工学)監修

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