2010/06/01号◆論説「環境による発癌リスクについてDr. Deborah WinnとDr. Shelia Zahmとの座談会」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/06/01号◆論説「環境による発癌リスクについてDr. Deborah WinnとDr. Shelia Zahmとの座談会」

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2010/06/01号◆論説「環境による発癌リスクについてDr. Deborah WinnとDr. Shelia Zahmとの座談会」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年6月1日号(Volume 7 / Number 11)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 論説 ◇◆◇
環境による発癌リスクについてDr. Deborah Winn氏とDr. Shelia Zahm氏を交えた座談会

国家癌プログラムの諸活動の展開と遂行状況を監視し大統領に直接報告する独立諮問委員会である大統領府癌諮問委員会(President’s Cancer Panel)は、先月、環境による発癌リスクに関する報告書を発表した。 環境による発癌リスクの研究についてさらに詳しく知るために、NCIキャンサー・ブレティンは、NCIの癌制御・人口科学部門副部長のDr. Deborah Winn氏と、癌疫学・遺伝学部門(DCEG)副ディレクターのDr. Shelia Zahm氏に話を聴いた。
環境曝露とは何ですか。

Zahm氏:環境とは遺伝的性質以外のものであると広く定義することができますが、最近発表された大統領府癌諮問委員会報告は、化学物質と物理的因子に焦点を合わせています。たとえば、環境汚染や放射線などです。タバコ、食生活、ウイルスなども環境曝露とみなすことができますが、今年の報告書はそれらに焦点を合わせていません。 それらの曝露は、過去の大統領府癌諮問委員会報告で取り上げられています。

環境曝露と癌を結びつけるエビデンスは何ですか。

Zahm氏: 環境曝露が発癌リスクに関係することを支持するエビデンスはいろいろあります。 (補足記事参照) しかし、いくつかの環境曝露は癌の原因となることは疑いの余地がない一方で、わからないものも多々あります。 たとえば、低用量の環境曝露、複数の曝露間の相互作用、新たに提唱された類いの曝露などについては、学ぶべきことはまだまだあります。 一生のうちでもっとも環境曝露の影響を受けやすい時期についても、さらに研究しなければなりません。

これらの問題を研究するときの難題にはどんなものがありますか。

Winn氏: 難題の一つは、どのような環境曝露を受けてきたか必ずしも把握しているわけではないということです。 たとえば、喫煙習慣や病状に比べて、自宅におけるラドン濃度について説明できる可能性はかなり低いでしょう。 さらに、多くの場合癌が進行するには長い時間がかかるため、かなり以前の曝露に関する情報が必要です。

研究者はこの問題に取り組んでいますか。

Winn氏: はい。成果が出ている領域もいくつかあります。 NCIは、国立衛生研究所の「遺伝・健康・環境イニシアチブ」に参画しており、個人の環境曝露および家庭や職場での曝露を監視する新たな方法を開発するための研究も含んでいます。研究によって、襟につけられる新しいセンサーが開発されました。たとえば、日常生活における環境曝露を測定することができる。これを用いれば、リアル・タイムで、また長期間にわたって曝露を記録することができます。 一方では、地理情報システムを用いて、癌症例を示した地図上に曝露に関するデータを図示している研究グループもあります。これによって、危険度に関する手がかりが得られるかも知れません。

年齢は、環境曝露によるリスクに関係がありますか。

Zahm氏: 研究によって、影響を受けやすい時期があることが示されました。 たとえば、20歳以下で放射線被曝した女性は、それ以上の年齢で被曝した人に比べて、放射線に関連した乳癌にかかるリスクが高いのです。 これは、放射線被曝をともなうX線検査もしくは蛍光透視検査によって経過観察をした脊柱側湾症と結核の女性の研究から得られた成果です。

甲状腺癌の例もあります。 日本の原爆被爆者とチェルノブイリの原発事故周辺地域住民の研究から、子どもの頃に被曝した人は、大人になってから被曝した人に比べ、後年、甲状腺癌にかかるリスクが高いことが示されました。

環境曝露が高い地域の住民の研究によって学べることは何ですか。

Winn氏: 合衆国内および国際的な高曝露地域住民の研究から、癌の危険因子に関する重要な発見が得られました。 これらの高曝露地域は、環境における発がん物質を発見し、作用機序を理解する上で、きわめて重要でした。 NCIは長年、大気汚染がきわめて深刻な地域や、鉱工業に関連した大量の職業的曝露が発生する地域において、国際的共同研究を行ってきました。

Zahm氏: もう一つ例を挙げれば、DCEGは、中国疾病管理・予防センターと、ベンゼンへの職業的曝露の研究においても協力してきました。 この研究によってベンゼンの発癌リスクに関する理解が大いに深まり、米国内外においてベンゼンの曝露基準を定めるのに役立ちました。 中国における曝露レベルは数値範囲が広く、研究者らは、曝露の増加にともなってリスクが増加するかどうかを評価することができました。そのことは、因果関係を裏付けます。また、この国の規制基準に関係するレベルで影響を研究することができました。

この国の環境曝露についてどのように研究していますか。

Zahm氏: 米国癌死亡率アトラス(Atlas of Cancer Mortality in the U.S.)を用いれば、ある種の癌の発生率が高い地理上の地域を特定することができ、原因となるリスク因子を調査する疫学研究に的を絞ることができます。 たとえば、ニュー・イングランド地方における高い膀胱癌の罹患率に関して関心が寄せられているものにヒ素があります。それは、相対的に高い水準で天然に地下水に存在しています。他とは異なる癌の罹患パターンがみられる職業集団の研究もしています。たとえば、農業健康調査の農業従事者、ディーゼル排気に曝露された鉱山労働者、ホルムアルデヒドに曝露された労働者などがあります。 DCEGで現在進行中の研究でもうひとつ重要な分野は、医療用放射線の最近の劇的な増加と関連する長期リスクについて検討することです。

ある患者の癌の原因を明らかにすることはできますか。

Zahm氏: 組織学的ないしは分子遺伝学的マーカーに基づいて、特定の腫瘍が特定の環境曝露によって引き起こされたかどうかを個人レベルで明らかにすることは通常できません。肺に残留するアスベスト繊維に関連する中皮腫など少数の例外はありますが、一般には、集団レベルのリスク増大についてのみ議論することができます。

複合的な曝露はどのように研究するのですか。

Winn氏: ヒト集団を対象とする研究のための手法があり、それは人々が経験するさまざまな曝露の影響を解明するのに役立ちます。たとえば食行動や喫煙行動など、一人ひとりは、健康リスクが増大したり減少したりする行動をとる可能性があります。また、遺伝的素因や他の素因が発癌リスクに影響する場合もあります。 集団研究の目標は、すべての危険因子を把捉し理解して、一旦、他の既知の素因を説明した後、原因となる可能性がある環境曝露を特定することです。

癌の何割が環境曝露によるものですか。

Zahm氏: 正確な割合はわかっていません。もっと言えば、国によっても違いますし、環境曝露が時間とともに変化するにつれて違ってきます。 研究を重ねるにつれて、割合に関する知見も変わってきます。 タバコは明らかに癌の最大の原因ですが、同様に、他の環境曝露も重要で回避可能な癌の原因です。

環境と癌の研究の将来について、どうお考えですか。

Winn氏: 研究すればするほど、より多くのことがわかります。 調査研究もさることながら、環境曝露のデータを収集するための改良された方法の開発が非常に重要です。 また、次世代の環境科学者を育てることも重要です。

Zahm氏: 遺伝学の研究を取り巻く熱狂が高まり続けるなかで、環境曝露の役割に注目しつづけることは重要になるでしょう。発癌についてもっともよくわかる方法は、遺伝子と環境を一緒に研究し、両者がいかに相互作用するかを研究することだと思います。

環境曝露と癌を関連づけるエビデンス環境曝露は発癌リスクに関連するという考えを裏づけるエビデンスは、さまざまなタイプの研究によってもたらされる。 たとえば、しばしば移民先の国の発癌パターンを獲得する移民集団の研究、発癌率の経時的変化、双生児の研究、地理上の地域の各地における発癌リスクのばらつき、特定の職業集団における発癌リスクの増大、基礎研究および毒物学的研究のエビデンスなどが挙げられる。

— Edward R. Winstead

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 盛井 有美子 訳
千種 葉月(薬学)監修

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