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2009/05/19号◆特別リポート「数十年を経て、前立腺癌の補助放射線療法のベネフィットが明らかに」

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2009/05/19号◆特別リポート「数十年を経て、前立腺癌の補助放射線療法のベネフィットが明らかに」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年05月19日号(Volume 6 / Number 10)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特別リポート

数十年を経て、前立腺癌の補助放射線療法のベネフィットが明らかに

前立腺癌の多くはきわめて緩徐に進行するため、治療効果が明らかになるまで、文字通り何十年もかかることがある。このことに関して、テキサス大学保健科学センター・サンアントニオ校の泌尿器科部長のDr.Ian Thompson氏に尋ねてみよう。前立腺癌の手術後の放射線治療は実際に患者に役立っているのか、副作用を引き起こしているだけではないかどうかを確認するための試験を提案した1985 年、彼はまだ駆け出しの若手の研究者だった。 

前立腺を外科的に切除することを選択した前立腺癌患者の約3分の1 は、術後、癌が前立腺部を越えて広がっていることが判明する。Thompson氏と同僚らは、その当時に行われていた(術後補助)放射線療法の追加が転移性疾患の再発を遅延させ予防できるかどうかを確かめたかったのである。

それから20年後、彼らはようやくその解答を得た。臨床試験では、術後12週間以内に放射線療法を受けた患者において再発までの期間が延長し、放射線療法を受けなかった患者と比較して生存期間が長かった。SWOG臨床試験団体主導の前立腺癌患者425人を対象としたランダム化試験の結果がJournal of Urology誌3月号に掲載された。

このエビデンスは、ヨーロッパで実施された臨床試験での同様の結果により裏づけられている。これは、先週、ドイツの研究者らがJournal of Clinical Oncology誌において、補助放射線療法(術後放射線療法)を受けた患者は受けなかった患者と比較して前立腺癌進行のリスクが減少したと報告したもので、SWOG試験だけでも生存期間に関する十分なデータ報告を有しているが、他の結果もすべて同じ方向性を示している。

「ここまで来るのに20年かかりましたが、補助放射線療法を施行することで、癌が転移するリスクを減らし、また生存期間を約2年延長させることができるということがようやくわかりました。」とThompson氏は述べた。「前立腺癌のような一般的な疾患に関するこの新たな知見は、今後何年にもわたり何万もしくは何十万もの患者に利益をもたらすことになるでしょう。」

膨大な数の研究者の力を合わせた国際的協力と1800人以上の試験参加者の長期にわたる協力によりこの知見が得られたとThompson氏は述べた。SWOG試験は米国およびカナダの研究者らによる共同試験で、それ以外の試験はドイツ癌協会および欧州癌研究治療機関(EORTC)主導によるものであった。

放射線治療をいつ行うか

「現在、放射線治療の分野では、適切な患者に対する補助放射線療法は有益であると考えられています」とクリーブランドクリニックのグリックマン泌尿器腎臓研究所の所長 Dr. Eric A. Klein氏は述べた。しかし、これらの試験の成功により、より困難な問題が持ち上がっていると彼は話した。それは、放射線療法をいつ行えばいいのかということである。

具体的には、術直後の放射線療法と、のちに再発の徴候が現れた場合のみに行う放射線療法の有効性は同等かどうかということである。

研究に必要な時間や資金を考慮すると、この質問の答えを出すための臨床試験が実施されることはまずないだろうと研究者らは述べた。しかしRADICALSと呼ばれる英国とカナダの共同研究により、いずれその答えの手がかりが得られると思われる。RADICALSではその研究の一部として、手術後に放射線療法を実施する群と、病勢が進行した時点で実施する救済放射線療法群を比較する研究も行っている。

放射線治療が必要ないであろう患者に治療を行わないために、再発の徴候が現れるまで放射線治療を施行しないことを推奨する医師もいる。結局のところ、すべての治療対象者が致死的な疾患を発症させるわけではなく、また再発をきたした者も前立腺癌のタンパク質マーカーである前立腺特異抗原(PSA)の血中濃度の上昇により再発が確認できるだけなのである。

どちらを選択するかは「まさに価値観の問題である」とKlein氏は述べたが、一方、放射線療法には尿道狭窄などの副作用があり、これは治療が困難で、膀胱排尿障害または尿失禁と呼ばれる状態を招くこともあることを指摘した。

SWOG試験では放射線療法群においてより多くの副作用が報告されたが、最初の数年以降は両群のQOLは同等であることが示された。病理報告書やその他の要因を踏まえて、放射線療法が最も有益であるのは再発リスクが最も高い患者たちであった。

しかし救済放射線療法の施行と生存期間の延長との相関を示すエビデンスは今のところ存在しないとThompson氏は警告する。そして同氏はこの試験結果から、再発したときには既に癌を制御するには遅すぎるかもしれないことも懸念している。

それにもかかわらず、Thompson氏の担当する患者では補助放射線療法の適応患者の一部しか放射線療法を選択しない。術後の体調が良好で、副作用を回避することを望む患者は経過観察を選択することが多いが、癌を制御することを第一に望んでいる患者は、放射線治療を選択すると同氏は語った。どちらを選択するかは患者に委ねられている。

「医師として、われわれは患者のために尽力します。エビデンスにもとづいた医療の時代、前立腺癌患者に3つの臨床試験の結果を伝え、どの治療法が最も適しているのか彼らが決定できるようにすることがわれわれの責任です」とThompson氏は言った。

— Edward R. Winstead

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Yuko Watanabe 訳

平 栄(放射線腫瘍医/武蔵村山病院)監修

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