2009/05/19号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/05/19号◆癌研究ハイライト

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2009/05/19号◆癌研究ハイライト

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2009年05月19日号(Volume 6 / Number 10)

  日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

 

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癌研究ハイライト

・ショウガが化学療法による嘔気の軽減に役立つ
・陰茎癌の病期診断に適しているセンチネルリンパ節生検
・乳癌の脳転移に3つの遺伝子が関与
・DEAR1遺伝子が早期発症乳癌に関わっているかもしれない
・ホルムアルデヒドは一部の血液癌の原因となりうるが、リスクは時間の経過とともに低下

その他のニュース「肺癌研究への資金提供」

ショウガが化学療法による嘔気の軽減に役立つ

ショウガを従来の制吐剤と一緒に摂取することにより、癌患者の化学療法に伴う嘔気(吐き気)を予防、あるいは軽減するのに役立つと研究者らが報告した。この結果はランダム化二重盲験プラセボ対照試験によるもので、これは化学療法に関連した嘔気におけるショウガの効果に関する最大の試験である。5 月30 日にフロリダ州オーランドで開催されるASCO 年次ミーティングで発表される。

「(栄養補助食品としての)ショウガが、化学療法に関連する嘔気に効果があることが判明した」と、先週の記者会見でこの結果を発表したロチェスター大学医療センターのDr. Julie Ryan氏が語った。彼女は、あらゆる投与量において、ショウガはプラセボと比較して有意に吐気を緩和したと述べた。

米国国立癌研究所のCommunity Clinical Oncology Program(地域臨床癌研究計画)の資金援助を受けたこの試験は、644人の患者を対象におこなわれたもので、参加者のほとんどが女性で、乳癌、消化器癌、肺癌などの化学療法を受けていた。患者は、化学療法初日までの3日間と化学療法開始後の2日間を含む6日間、プラセボまたは3つの投与量(0.5g、1.0g、1.5g)のうちいずれかの量のショウガを摂取した。また試験期間中、従来の制吐剤も投与されていた。患者は嘔気の程度を1から7までのスケールで、1日4回評価した。

ショウガはいずれの投与量においてもプラセボよりも嘔気の緩和に効果があった。もっとも効果があったのは0.5gまたは1.0gの投与量で、化学療法初日に摂取された場合であった。効果は、24時間にわたって線形的に減少していった。もっとも多い投与量では生物活性に必要な最大吸収量を上回るため、それほどの効果がないのではと研究者らは推測している。

陰茎癌の病期診断に適したセンチネルリンパ節生検

5月4日のJournal of Clinical Oncology誌電子版で発表された、オランダ癌研究所による新たな試験では、センチネルリンパ節生検(SLNB)が初期の陰茎癌の男性において、有効な病期診断であることが確認された。

脚の付け根のリンパ節の除去(鼠径[そけい>リンパ節郭清[かくせい>と呼ばれる)は、しばしば明らかなリンパ節転移が認められない初期の陰茎癌患者に対し、検知されない転移の増殖を防ぐ目的で行われる。しかし、この手術は重大な長期的副作用をもたらし、また75~80%の患者では不必要である可能性もある。

2つの施設の研究者らは、先行研究で見られたような偽陰性の割合を減らすため、超音波画像診断その他の技術を用いて、改良された手術方法で323人の患者にSLNBを行った。原発腫瘍を除去するための術後のリンパ管のマッピングは596回(ほとんどの患者で身体の両側に対して)行われた。脚の付け根部分の79検体に腫瘍細胞陽性のセンチネルリンパ節が含まれており、これらの患者はただちに鼠径リンパ節郭清が行われた。SLNB陰性の患者はそれ以上の手術は受けなかった。

中央値17.9カ月のフォローアップの後、全体での偽陰性率は7%であったSLNB陰性の6人の患者で、脚の付け根に再発が見られた。また、改良された手法が1つ目の施設から次の施設に導入された際、学習曲線は見られなかったと研究者らは指摘した。2つ目の施設で行われていた最初の手法でも偽陰性結果がでやすいということはなかったのである。

フォローアップ期間が長くなれば、さらに偽陰性結果が明らかになるかもしれないと警告しながらも、著者らは「最新の手法を用いれば、陰茎癌に対するセンチネルリンパ節生検は、肉眼では発見できない転移があり、臨床的にはリンパ節転移陰性の患者を特定するのに適している……偽陰性のリスクと、選択的な鼠径リンパ節郭清の死亡率の両者を比較して検討すべきである」と結論づけている。

乳癌の脳転移に3つの遺伝子が関与

乳癌では腫瘍の外科的切除をして数年後に脳への転移が見つかることがある。このため乳癌細胞は脳へ転移するための特殊な能力を、おそらくはいくつかの遺伝子の活性化により獲得しているはずだ、と研究者らは示唆している。5月6日付けNature誌電子版に掲載された研究によると、マウスにおいて乳癌の特殊能力獲得のプロセスに関わる3 つの遺伝子がスローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)のDr. Joan Massagué 氏らにより同定された。

この研究はまだ初期の段階であるが、最終的には脳転移の予防および治療の新戦略につながることが期待されている。乳癌患者の生存期間が長くなり結果として乳癌の脳転移発生率が上昇していることから、これらの研究が必要とされている。

COX2とHBEGFの2種の遺伝子は乳癌細胞の脳への侵入を助けることが発見された。これらの遺伝子は以前から乳癌細胞の肺転移を助けることが明らかにされていた。乳癌の脳転移と肺転移に共通のメカニズムがあると考えれば、一部の患者で脳と肺の両方に転移することの説明がつくかもしれない、と研究者らは話した。

ただし、脳への有害物質到達を阻止している血液脳関門を癌細胞が通過するには、別のメディエーターによる助けが必要であると考えられる。第3の遺伝子として、ST6GALNAC5がその役割を果たしているかもしれない。これは本来脳組織内でのみ活性を有する遺伝子であるが、この遺伝子が乳癌細胞の「被覆(コーティング)」を促し、脳への侵入を可能にしているとみられると、研究者らは報告した。

本研究の筆頭著者でMSKCCのDr. Paula D. Bos氏は、「次のステップは、これら3つの遺伝子がどのようにして腫瘍細胞の脳転移を助長するかをさらに解明することです」と述べた。また、「これ以外の遺伝子が関係しているのもほぼ確実で、われわれのモデルを用いて新しい遺伝子の発見と評価をしていこうと考えています」と述べた。

DEAR1遺伝子が早期発症乳癌に関わっているかもしれない

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者主導の新しい研究で、乳房内で乳腺を構築する細胞の発生を調節する遺伝子が同定された。DEAR1と呼ばれるこの遺伝子は、早期発症乳癌症例の多くで変異しているか発現しておらず、局所再発のリスクが高い患者を識別するためのバイオマーカーとしても活用できるかもしれない。

Suppression subtractive hybridization(SSH)と呼ばれる技法を用いてDEAR1という注目すべき遺伝子を同定した研究者らは、乳癌における同遺伝子の役割を明らかにするため、細胞株および組織サンプルで試験を行った。試験した8つの乳癌細胞株のうち6つはDEAR1遺伝子が発現していないか減少していた。さらに、試験した原発性乳癌検体55件のうち13%はDEAR1に変異が生じていた。

研究者らは遺伝子導入技術を用いて乳癌細胞株に再びDEAR1を発現させた。DEAR1がない状態では60%以上の培養細胞系で大きく無秩序な組織が形成されていたが、DEAR1を導入すると80%以上の細胞が小さく正常な形状の組織を形成した。正常な乳腺細胞でも同遺伝子を不活性化させると正常な組織構造を形成できなくなり、乳癌細胞と似た形態となった。

閉経前の乳癌患者女性158 人から得た組織サンプルをスクリーニングしたところ、56%のサンプルでDEAR1発現が完全に欠失しており、このことは「今回調査した若齢集団における乳癌の家族歴と強く相関していた」という。DEAR1発現の欠失は、治療を成功させることがもっとも難しいトリプルネガティブ乳癌とも有意に相関していた。

DEAR1の発現は早期発症乳癌の局所再発に関する重要な予後マーカーでもあることから、著者らはDEAR1発現量の測定値が「早期発症の乳癌患者を層別化する重要なマーカーとなり、フォローアップおよび術後補助療法において考慮することが可能となるかもしれない」と示唆している。

ホルムアルデヒドは一部の血液癌の原因となりうるが、リスクは時間の経過とともに低下

ホルムアルデヒドの曝露を受ける米国の工場勤務者を対象とした研究が現在進行中であるが、この研究で得られた追跡調査データは、ホルムアルデヒド曝露と血液系/リンパ系の癌による死亡リスクとが関連している可能性があるとする過去の知見を裏づけるものであった。NCI 研究者による最新の報告が5月12日付のJournal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載されており、この報告では前回の観察期間を10年延長した2004年までのデータが含まれている。

NCIの癌疫学・遺伝学部門の研究者らは、1966年以前からホルムアルデヒドを使用もしくは生産している工場10か所に勤務する25,619人の集団について1980年代から研究を続けている。研究者らはモニタリングのデータ、個人の仕事に関する情報など、様々な情報から工場勤務者のホルムアルデヒド曝露量を推定した。死亡率および死因を記録するため死亡診断書とNational Death Indexを利用した。

分析の結果を全体的に見た場合、ホルムアルデヒド曝露を受けた人のあらゆる原因による死亡リスクは米国国民全体と同程度であった。しかし、ホルムアルデヒド曝露が最大ピークの工場勤務者と曝露が最小レベルの工場勤務者を比較したとき、血液またはリンパ系の癌による死亡に関する相対危険度(RR)は1.37と統計的に有意な値になった。この数値は化学物質曝露ともっとも関連の強いホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄性白血病など特定の癌による死亡のリスクが大きく高まったことが反映されたものである。骨髄性白血病による死亡リスク増加率は1.78、白血病全体では1.42 であった。本研究において骨髄性白血病による死亡リスク上昇は初期に最大となり、その後は徐々に低下した。このパターンは偶然の産物かもしれないが、研究者によると曝露後比較的短期間で白血病の原因となることが知られている物質で同じようなリスクのパターンがみられるという。

この関係は最大レベルのホルムアルデヒド曝露を受けた群と最低レベルの曝露を受けた集団とを比較したときにのみ観察された。曝露レベルを平均強度や累積量により類別した場合には有意な関連はみられなかった。

カナリア基金と米国国立癌研究所非営利のカナリア基金(Canary Foundation)と米国国立癌研究所の早期発見研究ネットワーク(EDRN)は、喫煙歴のない人の初期の肺癌を検知するバイオマーカーを見つけるために、資金提供での新たなパートナーシップを結ぶことを発表した。アメリカの5つの機関の研究者らはこの資金提供を受け、病気が進行した該当者らの細胞系や組織、血液サンプルなどの研究から開始する。EDRN とカナリア基金は、開始にあたって、それぞれ100 万ドルの資金を提供する。資金提供を受けたプロジェクトを含めたより詳しい情報はオンラインで入手可能。

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水向 絢子、橋本 仁 訳

後藤 悌(呼吸器内科医/東京大学大学院)
原 文堅(乳腺腫瘍医/四国がんセンター) 監修

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