2009/06/02号◆特別リポート「癌治療ワクチンが臨床試験で良好な結果」~米国臨床腫瘍学会(ASCO)報告~ | 海外がん医療情報リファレンス

2009/06/02号◆特別リポート「癌治療ワクチンが臨床試験で良好な結果」~米国臨床腫瘍学会(ASCO)報告~

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2009/06/02号◆特別リポート「癌治療ワクチンが臨床試験で良好な結果」~米国臨床腫瘍学会(ASCO)報告~

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年06月02日号(Volume 6 / Number 11)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特別リポート

癌治療ワクチンが臨床試験で良好な結果

さまざまなタイプの癌の患者に対して、腫瘍に対する免疫反応を高めるワクチン治療が有用である可能性を明らかにする数件の臨床試験結果が、オーランドで開催された2009年ASCO(米国臨床腫瘍学会)年次総会で発表された。

この分野に関わる多くの人々にとって、これらの研究結果は癌治療ワクチン時代の到来を表している。治療用ワクチンに関しては20年以上にわたって熱心に研究されてきたが、FDAに承認されるに足る癌治療薬としてはほとんど実を結ばなかった。しかし、最近の臨床試験結果をみると、こういった状況に変化が起こるかもしれない。

癌ワクチン分野はより注目されてきており、またこれらの試験結果から免疫療法への関心がさらに高まり、重大な毒性がなく生存期間を延長することの可能な、非常に必要とされる治療選択肢を生み出すことになるのではないかと考えていると、治療ワクチンを使った臨床試験を数多く指揮しているNCI(米国立癌研究所)癌研究センターのDr. James Gulley氏は述べた。

癌治療ワクチンが受け入れられるのに苦労した理由の一つはケアパラダイムが異なるという点にあった。「ワクチンが腫瘍に働きかけない唯一の治療法であること、つまり、患者の免疫系に働きかけて腫瘍の増殖を抑制するからである」とNCIの腫瘍免疫学・生物学研究室のDr. Jeffrey Schlom氏は述べた。

総会で強い関心がもたれた試験結果の中に、濾胞性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫で2番目に多い)患者に対してBiovaxIDというワクチンを用いた大規模第3相試験があった。イディオタイプワクチンと呼ばれるBiovaxIDは腫瘍生検によって得られた腫瘍細胞のたんぱく質からそれぞれの患者に合わせてカスタマイズされる。

BV301試験では標準的な化学療法で完全奏効が長期間(6カ月)持続した患者を対象にBiovaxID+2つの免疫刺激薬(GM- CSFおよびKLH)投与群あるいは2つの免疫刺激薬のみの投与群に無作為に割り付けた。ワクチンの投与を受けた患者は免疫刺激薬のみの投与を受けた患者と比較して、無増悪生存期間(腫瘍の増殖がない生存期間)が47%改善(44.2カ月対30.6カ月)したとペンシルバニア大学医学部の試験責任医師であるDr. Stephen J. Schuster氏は述べた。

以前に濾胞性リンパ腫患者に同様のワクチンを投与した2つの第3相試験では、ワクチンの有効性を示すことが出来なかった。その理由は完全奏効だけでなく、部分奏効および病勢安定の患者も組み入れたためである可能性があるとスタンフォード大学医学部のDr. Roland Levy氏は総会の本会議中に説明した。対照的に、BV301試験の解析では「最高の中の最高」である完全奏効が持続した患者のみを対象とした。

このワクチン(BiovaxID)が濾胞性リンパ腫の最新の標準治療のなかでどのような役割を持つかはまだはっきりしていないことをLevy氏とSchuster氏は認めている。その標準治療がBV301試験中に変わってしまい、現在はモノクローナル抗体であるリツキシマブ(リツキサン)が含まれる。その試験を「条件付の成功」と呼び、濾胞性リンパ腫における最善のワクチン投与法を確立するためにはさらに臨床試験が必要であるとLevy氏は述べた。

総会で関心が高かったもうひとつの第3相試験は、転移性悪性黒色腫(致死性の皮膚癌で治療法の進歩がほとんどなかった)の治療に以前より研究されてきたペプチドワクチン(ペプチドとはアミノ酸の小さな断片である)を使用したものであった。

転移性悪性黒色腫の標準治療薬であるIL-2との併用で、gp100:209~217(210M)ペプチドワクチンを投与すると、IL-2単独投与と比較して奏効率が2倍になった(22.1%対9.7%)と本試験の試験責任医師の一人である、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Patrick Hwu氏が報告した。奏効率は本試験の主要評価項目であった。無増悪生存期間においてもわずかに改善がみられ(2.9カ月対1.6カ月)、予備解析では、全生存期間の延長傾向を示唆した。

ペンシルバニア大学アブラムソンがんセンターのDr. Lynn Schuchter氏はその延長を「重要な知見」と呼び、その結果がワクチンに対して楽観視する根拠であると述べた。悪性黒色腫に対して治療ワクチンが10年以上にわたって試されてきたが、ほとんど効果はなかった。しかし現在では、有効性を示した第3相臨床試験がある。

「おそらく併用療法が有効だろうと思わせる結果です」と彼女は述べた。

「現在、他の多くの免疫刺激薬がペプチドワクチンと併用できるかどうかを試験中である。次のステップは、これらの知見が再現されるどうか別の大規模臨床試験を行ったり、いろいろな併用療法を検証していくことである」とHwu氏は述べた。

122人を対象とした小規模な第2相試験において、NCIで開発されたProstvacと呼ばれるワクチンを投与して無痛性転移性前立腺癌患者の全生存期間が8カ月以上延長した。これは2つのウイルスベースの「ベクター」から成るProstvacのほぼ同一の有用性を同じ患者集団で示した2つ目の第2相試験である。より大規模な第3相試験は2010年に始まる予定であるとSchlom氏は説明した。

本分野においては、すでにさまざまな治療ワクチンを併用する方向に向かっており、また、疾病のより初期の段階でワクチンを使うという考えもある。そうすることが最も効果的であると信じているとSchlom氏は述べた。

— Carmen Phillips

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舛田 理恵 訳

榎本 裕(泌尿器科医)監修

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